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「そう、ですね。私がぐずぐずしたせいで誰かが罰せられるのを見たくないんです。魔物退治がしたい訳ではないんですけど。防げる筈のものを見逃したく無い、自己満足かもしれませんが」
首を絞められて怖かった、あの子のした事は許せる事ではない。
でも、黒いのが見えたときに祓ってれば、まだまだ若いあの子の人生も違っていたと考えずにはいられない。
騎士団の人に連れて行かれる時、あの子はさほど抵抗もせずただ泣いていたのだ。
「ふぅん、ま、いいんじゃないそれで。何のために戦うかなんて人それぞれだし」
「はい」
「大義名分なんて俺にもないし」
「そうなんですか?以前は国の為にみたいな事を言ってたような」
「この国の平和を守る事が、大事な奴を守る事に繋がるってだけだ。守りたいのは国そのものじゃない。何だその顔は」
愛の告白を聞いた気がして頬を染めたリリエナを見て、ソニアスが首を傾げる。
「い、いえ、大事な方がいらっしゃるんですね」
「ああ、・・・悪いか」
「とんでもない、素敵だと思います」
「チッ、口が滑った。忘れてくれ」
プイと他所を向いてしまったソニアスを不覚にも可愛いと思うリリエナだった。
ソニアスさんのお相手ってどんな人なんだろう、魔女っ子とか・・ないか、ん~、この人貴族だっけ、だったらどこかの令嬢なのかな、興味あるわ。
不躾なリリエナの視線に不機嫌そうな顔をしたソニアスが向き直る。
「おい、訓練始めるぞ」
「は、はい」
訓練は擬似アームを祓う事から始まる。
床には何匹かの黒いモゾモゾしたものが蠢いていて気持ち悪い。
いつものように呪文を唱えようとして止められた。
「大事なのは想像力と思い込みだ、具体的に想像すればする程いい。俺達のように魔力が多い者は媒介がいらなかったりするからな」
「媒介?魔法陣とかですか?」
「そうだ、呪文や魔法陣は魔力を効率良く働かせる役割がある。魔力量が少ない者はそれらを使うのが基本だが、リナはそろそろ呪文なしでも使えるはずだ」
呪文なしでどうやったら発動するの?想像力?イマジネーションか。
英語教育番組の赤いモフモフを思い出すわね、自由に想像すればいいって事かしら。
床にいるアーム達は最初は固まっていたが、だんだんと方々に散らばろうと移動を始めていた。
「う、うぅッ」
駄目だ、気持ち悪い、あちこちに行かないでよ。
自宅であの黒い奴が出た時を思い出す、あの時は思わずゴミ箱をひっくり返して閉じ込めたっけ、でもその後どうにも出来ずしばらく放置してしまうという黒歴史だったが。
早くしないとアームはどんどん散乱してゆく。
ひぇ、いや、とりあえず閉じ込めたい!と強く念じた。
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