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マヌエリタさんはこの後どうなるんだろう、あれが闇の気配だとしたら祓えば正気に戻ったかもしれない。
私がちゃんと魔法を使えていたら、マヌエリタさんもあの黒いものから助けられたしオーガストさんも処分を受けることは無かったかもしれない。
たらればを言っても仕方ないけど、本当は防げていた、私はもっと本気でこの世界に向き合い魔法に取り組まなければいけなかった。
「ごめんなさい」
誰かにではなく、ただこの世界に組み込まれたことを初めて実感し、他人事のように考えていた事を恥じて呟いたものだった。
そんなリリエナを二人の美丈夫は痛ましげに見つめる。
「あの子は、マヌエリタさんはどうなりますか」
少し間がありヴァイツェンが答えてくれる。
「闇に取り憑かれた者は、浄化された後裁かれる。殆どが教会へ送られ出る事は無い」
「そんな、・・家に帰してあげる事は出来ないんでしょうか」
「それは難しい。貴女は・・いや、聖女が罰を求めていない事は伝えておこう」
「ありがとうございます」
気が重い、何だか疲れたな。
「今日もう休むといい、オーガスト頼んだ」
ヴァイツェンは部屋を出て行った。
「本日は私が一晩中扉の番を致します、何かあれば声をかけて下さい。今ご希望はありますか?」
「いえ、ありません。ありがとうございます」
「ではゆっくりお休み下さい」
オーガストさんも扉の向こうに消えた。
リリエナは寝室に入るとベッドへ重力に任せてうつ伏せに倒れ込むと、ふと自分の汗の臭いが気になった。
あ、お風呂をお願いすれば良かった。
ここは王族の住まう城だけに浴室には湯船が備えられていて、希望すればお湯を入れて貰えるのだが、今から運んで貰うのも気が引けて朝になってからお願いすることにした。
ため息と共に目を閉じ、余程疲れていたのだろう次に開けた時には朝になっていた。
一度オーガストが夕食をどうするか確認の為ノックをしたが応答が無かったそうで、いつもより少し多めの朝食が用意され、十分な睡眠のせいか空腹でぺろりと完食してしまった。
お風呂に入りたいと言うと、朝からでも頼めば用意してくれるらしく素直にお願いをした。
汗を流し、香油で保湿も完璧、良い香りで気分も良い。
よし、私が出来る事、やらなければいけない事をやっていこう!
気持ちを新たに魔導模擬室に入った。
「ん?おや、顔付きが変わったな。昨日の事件のせいか?襲われて魔物退治に本気になったのか」
ソニアスが揶揄い気味に言ってきた。
言葉遣いも講義を重ねるにつれ砕けてきている、こっちが素なのだろう。
この人の場合丁寧に話されると冷たく感じるのでリリエナとしては今の方が親近感が湧いて付き合いやすいと感じる。
私がちゃんと魔法を使えていたら、マヌエリタさんもあの黒いものから助けられたしオーガストさんも処分を受けることは無かったかもしれない。
たらればを言っても仕方ないけど、本当は防げていた、私はもっと本気でこの世界に向き合い魔法に取り組まなければいけなかった。
「ごめんなさい」
誰かにではなく、ただこの世界に組み込まれたことを初めて実感し、他人事のように考えていた事を恥じて呟いたものだった。
そんなリリエナを二人の美丈夫は痛ましげに見つめる。
「あの子は、マヌエリタさんはどうなりますか」
少し間がありヴァイツェンが答えてくれる。
「闇に取り憑かれた者は、浄化された後裁かれる。殆どが教会へ送られ出る事は無い」
「そんな、・・家に帰してあげる事は出来ないんでしょうか」
「それは難しい。貴女は・・いや、聖女が罰を求めていない事は伝えておこう」
「ありがとうございます」
気が重い、何だか疲れたな。
「今日もう休むといい、オーガスト頼んだ」
ヴァイツェンは部屋を出て行った。
「本日は私が一晩中扉の番を致します、何かあれば声をかけて下さい。今ご希望はありますか?」
「いえ、ありません。ありがとうございます」
「ではゆっくりお休み下さい」
オーガストさんも扉の向こうに消えた。
リリエナは寝室に入るとベッドへ重力に任せてうつ伏せに倒れ込むと、ふと自分の汗の臭いが気になった。
あ、お風呂をお願いすれば良かった。
ここは王族の住まう城だけに浴室には湯船が備えられていて、希望すればお湯を入れて貰えるのだが、今から運んで貰うのも気が引けて朝になってからお願いすることにした。
ため息と共に目を閉じ、余程疲れていたのだろう次に開けた時には朝になっていた。
一度オーガストが夕食をどうするか確認の為ノックをしたが応答が無かったそうで、いつもより少し多めの朝食が用意され、十分な睡眠のせいか空腹でぺろりと完食してしまった。
お風呂に入りたいと言うと、朝からでも頼めば用意してくれるらしく素直にお願いをした。
汗を流し、香油で保湿も完璧、良い香りで気分も良い。
よし、私が出来る事、やらなければいけない事をやっていこう!
気持ちを新たに魔導模擬室に入った。
「ん?おや、顔付きが変わったな。昨日の事件のせいか?襲われて魔物退治に本気になったのか」
ソニアスが揶揄い気味に言ってきた。
言葉遣いも講義を重ねるにつれ砕けてきている、こっちが素なのだろう。
この人の場合丁寧に話されると冷たく感じるのでリリエナとしては今の方が親近感が湧いて付き合いやすいと感じる。
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