上 下
35 / 87

19

しおりを挟む
マヌエリタさんはこの後どうなるんだろう、あれが闇の気配アームだとしたら祓えば正気に戻ったかもしれない。
私がちゃんと魔法を使えていたら、マヌエリタさんもあの黒いものから助けられたしオーガストさんも処分を受けることは無かったかもしれない。
たらればを言っても仕方ないけど、本当は防げていた、私はもっと本気でこの世界に向き合い魔法に取り組まなければいけなかった。
「ごめんなさい」
誰かにではなく、ただこの世界に組み込まれたことを初めて実感し、他人事のように考えていた事を恥じて呟いたものだった。
そんなリリエナを二人の美丈夫は痛ましげに見つめる。
「あの子は、マヌエリタさんはどうなりますか」
少し間がありヴァイツェンが答えてくれる。
「闇に取り憑かれた者は、浄化された後裁かれる。殆どが教会へ送られ出る事は無い」
「そんな、・・家に帰してあげる事は出来ないんでしょうか」
「それは難しい。貴女は・・いや、聖女が罰を求めていない事は伝えておこう」
「ありがとうございます」
気が重い、何だか疲れたな。
「今日もう休むといい、オーガスト頼んだ」
ヴァイツェンは部屋を出て行った。
「本日は私が一晩中扉の番を致します、何かあれば声をかけて下さい。今ご希望はありますか?」
「いえ、ありません。ありがとうございます」
「ではゆっくりお休み下さい」
オーガストさんも扉の向こうに消えた。
リリエナは寝室に入るとベッドへ重力に任せてうつ伏せに倒れ込むと、ふと自分の汗の臭いが気になった。
あ、お風呂をお願いすれば良かった。
ここは王族の住まう城だけに浴室には湯船が備えられていて、希望すればお湯を入れて貰えるのだが、今から運んで貰うのも気が引けて朝になってからお願いすることにした。
ため息と共に目を閉じ、余程疲れていたのだろう次に開けた時には朝になっていた。
一度オーガストが夕食をどうするか確認の為ノックをしたが応答が無かったそうで、いつもより少し多めの朝食が用意され、十分な睡眠のせいか空腹でぺろりと完食してしまった。
お風呂に入りたいと言うと、朝からでも頼めば用意してくれるらしく素直にお願いをした。
汗を流し、香油で保湿も完璧、良い香りで気分も良い。
よし、私が出来る事、やらなければいけない事をやっていこう!
気持ちを新たに魔導模擬室に入った。
「ん?おや、顔付きが変わったな。昨日の事件のせいか?襲われて魔物退治に本気になったのか」
ソニアスが揶揄い気味に言ってきた。
言葉遣いも講義を重ねるにつれ砕けてきている、こっちが素なのだろう。
この人の場合丁寧に話されると冷たく感じるのでリリエナとしては今の方が親近感が湧いて付き合いやすいと感じる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人間嫌いの熊獣人さんは意外と優しい 〜病院で一生を過ごした少女は健康に生まれ変わってもふもふに会いに行きます!

花野はる
恋愛
生まれつき病弱で、一生のほとんどを病院で過ごした舞は二十歳の誕生日を前に天に召された。 ......はずだったが、白いお髭のおじいさんが出て来て「お前の一生は可哀想だったから、次の生ではお前の望みを叶えてやろう」と言う。 そこで舞は「健康な身体になりたい」と、好きだったファンタジー小説の中の存在である「もふもふの獣人さんに会いたい」の二つを願った。 そして気づけば舞は異世界にいたのだが、望んでいた獣人たちは、人間の「奴隷」として存在していた。 そこで舞は、普通の獣人とは違うフルフェイスの熊の獣人と出会って、一緒に暮らすことになる。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。

ゆちば
恋愛
ビリビリッ! 「む……、胸がぁぁぁッ!!」 「陛下、声がでかいです!」 ◆ フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。 私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。 だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。 たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。 「【女体化の呪い】だ!」 勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?! 勢い強めの3万字ラブコメです。 全18話、5/5の昼には完結します。 他のサイトでも公開しています。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。 「あなたこそが聖女です」 「あなたは俺の領地で保護します」 「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」 こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。 やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...