アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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「に、庭が素敵で、あのっ」
良い庭だと伝えたかったのにと、焦って上手く言葉が紡げないリリエナの頬に、温かい手が触れてきた。
間を空けず、手で触れられてない方の頬に柔らかく湿った感触が訪れる。
「ひぇ」
驚きで宙を彷徨うリリエナの手をヴァイツェンが捕らえ、同じく柔らかいものが触れた。
「ここを好きだと言ってくれて嬉しい。また・・、来てくれるかい。あのアーチはいつでもリリエナを歓迎するよ」
ブルーグリーンの双眸が嬉しそうに揺らめき、リリエナをドキドキさせる。
ヴァイツェンは予定があると先に箱庭から出て行き、リリエナは気持ちが落ち着くのを待ってからアーチを抜けた。
その先の回廊にお約束かのようにいつぞやの令嬢が立っていた。
「リリエナ様でしたわね、瞳の色が違うようだけど。またお会い出来て光栄ですわ」
もう少し時間を潰せば良かったと思ったが後の祭りだ。
え~と、確か。
「こんにちは、え・・と、マヌエリタ様」
「今、王太子の箱庭から出ていらしたのかしら?」
あ、見られてた。もしかして面倒な事になりそう?
「ええ、そうですね」
「オーガスト様だけではなく、殿下にも色目を使ってらっしゃるの?」
「え?」
「王太子の箱庭に招かれた令嬢など今まで聞いた事がありませんわ。茶会にも参加出来ない田舎娘のくせに、どんな手を使ったか知らないけど身の程をわきまえなさい!」
キッと睨んでくる。
うっ、やっぱりそうきたわね。ここで殿下から誘って貰いました、ついでにいつでも出入りOKになってます。なんて言ったら殺されそうな勢いだわ。
私が聖女だって知らないみたいだし、下手な事言えない。
後ろにいるはずのオーガストをチラッと見ると、とてつもなく冷たい瞳を目の前の派手な令嬢に向けている。
リリエナの視線に気付き、その体躯でマヌエリタとの間を塞いだ。
「身の程をわきまえるのはマヌエリタ様でしょう、ドゥーベ辺境伯の御令嬢に対してその態度が正当であるか子爵のお父上に今一度お聞きなされよ」
「オーガスト様ッ!?この方は何なのですか!」
「貴女に知る権利は無い、リリエナ様行きましょう」
促されマヌエリタの脇を歩き始めた時、リリエナは違和感を感じ振り返る。
彼女の周りに黒い蜃気楼のようなものが揺れていた。
え、何アレ。闇の気配アームは見えないけど、大丈夫かな。
オーガストさんは何も感じなかったのかしら。
部屋に戻って早々に聞いてみたが、特に感じなかったらしい。
「私も気に掛けておきましょう、あの場所に何故いたのかも気になりますし。城外の者があそこを通る事は無いはずです、茶会の場所からも離れておりますしね」
なるほど、今日もお茶会だったのね。殿下の予定もそれって事よね。
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