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その翌日から講義が始まった。
実践的な指導もするというので案内されたのは、第三騎士隊隊舎にある魔導模擬室である。
魔導師達が訓練や実験をする際、周囲を壊したり怪我人が出ないように術が施されている体育館のような所だ、ちなみに研究室もあるらしい。
この国の騎士団は五つの隊に分かれており、その中の第三騎士隊は魔法特化の隊で魔術師や魔力量の多い者で構成されていると案内してくれた騎士より説明を受けた。
「さすがは聖女様です、魔力量は申し分ない」
銀髪の男がローブ無しのシャツにベストとズボンというシンプルな服装と、長い髪を三つ編みで横に流し、顔にかかっていた前髪を編み込みという格好でやって来た。
変わらないのは美形顔に張り付いた胡散臭い笑顔だけである。
と、今さらりと重要な事を言った?
「魔力量ですか?」
「ええ、この部屋には立ち入った者の魔力量を測る魔法陣を描いております。足を踏み入れた時点でその者の能力が分かるのです。聖女様の魔力量は国で一番の魔術師と同等かと」
「へぇ」
知らない間にスキャンされてたって事ね・・・適当な返事になってしまった。
国一番とか、そんなの知りたく無かったわ。
「属性は疑いようもなく聖属性と、おや、緋色が揺れている、火属性も有りか」
突然、視界いっぱいの美麗な顔にリリエナは一歩下がる。
ソニアスがリリエナの顔を覗き込んだのだ。それもとても近く。
ソニアスの瞳は濃いアメジスト色で、この世界で初めて見る色だが綺麗でつい見てしまう。
今日はおでこ全開でバランスの良い顔の全貌が見える、卵型のフェイスラインに真珠のような白肌で睫毛も長く、切れ長の目尻は薄っすら紅く、色気のある美人だ。
うわ、完全に負けてるわね。
その美人が意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「聖女様は私の顔に興味がおありで」
「い、いえ。違います」
「そうですか、ご所望あらばいつでも差し出しましょう」
「いえ、結構です」
いけない、隙を作ってしまったけど、いちいち突っ込まないで欲しいわ。
「それより、火属性も使えるのですか?」
「はい、訓練次第ですが恐らく可能でしょう。瞳の色については聞いておられますか?」
「えと、属性によって違うと」
「その通り、聖女様の」
最近同じやり取りをしたなと既視感を覚えたが、やはり言っておきたいと言葉を遮る。
「あ、あのすみません。聖女とかではなく名前で呼んで貰いたいのですが」
「仰せのままに。ではリリエナ様・・、いえ、お許し頂けるならリナ様とお呼びしても?」
愛称呼びの許可を求められ、逡巡したがこれから頻繁に会うしいいかと了承した。
「リナ様の瞳は聖属性の金色ですが、火属性の赤色が時折揺らめいています。私の瞳は紫ですが全属性の魔法が使えます、もちろん聖属性も。しかしリナ様程ではないでしょう、そのようにはっきりとした金色の瞳を待つ者はこの国にはおりません」
要するに私は顔面に聖女ですと看板を掲げているようなものか。
実践的な指導もするというので案内されたのは、第三騎士隊隊舎にある魔導模擬室である。
魔導師達が訓練や実験をする際、周囲を壊したり怪我人が出ないように術が施されている体育館のような所だ、ちなみに研究室もあるらしい。
この国の騎士団は五つの隊に分かれており、その中の第三騎士隊は魔法特化の隊で魔術師や魔力量の多い者で構成されていると案内してくれた騎士より説明を受けた。
「さすがは聖女様です、魔力量は申し分ない」
銀髪の男がローブ無しのシャツにベストとズボンというシンプルな服装と、長い髪を三つ編みで横に流し、顔にかかっていた前髪を編み込みという格好でやって来た。
変わらないのは美形顔に張り付いた胡散臭い笑顔だけである。
と、今さらりと重要な事を言った?
「魔力量ですか?」
「ええ、この部屋には立ち入った者の魔力量を測る魔法陣を描いております。足を踏み入れた時点でその者の能力が分かるのです。聖女様の魔力量は国で一番の魔術師と同等かと」
「へぇ」
知らない間にスキャンされてたって事ね・・・適当な返事になってしまった。
国一番とか、そんなの知りたく無かったわ。
「属性は疑いようもなく聖属性と、おや、緋色が揺れている、火属性も有りか」
突然、視界いっぱいの美麗な顔にリリエナは一歩下がる。
ソニアスがリリエナの顔を覗き込んだのだ。それもとても近く。
ソニアスの瞳は濃いアメジスト色で、この世界で初めて見る色だが綺麗でつい見てしまう。
今日はおでこ全開でバランスの良い顔の全貌が見える、卵型のフェイスラインに真珠のような白肌で睫毛も長く、切れ長の目尻は薄っすら紅く、色気のある美人だ。
うわ、完全に負けてるわね。
その美人が意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「聖女様は私の顔に興味がおありで」
「い、いえ。違います」
「そうですか、ご所望あらばいつでも差し出しましょう」
「いえ、結構です」
いけない、隙を作ってしまったけど、いちいち突っ込まないで欲しいわ。
「それより、火属性も使えるのですか?」
「はい、訓練次第ですが恐らく可能でしょう。瞳の色については聞いておられますか?」
「えと、属性によって違うと」
「その通り、聖女様の」
最近同じやり取りをしたなと既視感を覚えたが、やはり言っておきたいと言葉を遮る。
「あ、あのすみません。聖女とかではなく名前で呼んで貰いたいのですが」
「仰せのままに。ではリリエナ様・・、いえ、お許し頂けるならリナ様とお呼びしても?」
愛称呼びの許可を求められ、逡巡したがこれから頻繁に会うしいいかと了承した。
「リナ様の瞳は聖属性の金色ですが、火属性の赤色が時折揺らめいています。私の瞳は紫ですが全属性の魔法が使えます、もちろん聖属性も。しかしリナ様程ではないでしょう、そのようにはっきりとした金色の瞳を待つ者はこの国にはおりません」
要するに私は顔面に聖女ですと看板を掲げているようなものか。
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