アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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「あの日、君がいなくなった日からずっと探していた。生きて戻って来てくれてありがとう」
「ずっと?」
「ああ。あの時、私の力が及ばず危険な目にあわせてしまった、突然消えた君が生きているかさえ分からず、国外にもお忍びで何度も行ったが見つからなかった。今回召喚が行われ、リリエナを見つけた時、私は奇跡だと思った。君が、・・・君にとっては良くなかったかもしれないが、今だけ許してくれ」
そう言い終わる頃には、リリエナはヴァイツェンの腕の中にいた。
語尾が弱気なのは昼間の件を聞いたからなのだろうか。
ずっと私を探してたって、そうか、だからか。
ヴァイツェンは優しい、私を大事にしてくれているのは態度で分かっていたけど、探し求めてやっと見つけたという執着からだったのかと、今知った。
自分を包む腕の力が強まり、耳元で囁かれる。
「月に兎がいるのか?」
「え、あ、私の世界では月に浮かぶ影が兎に見えるのでそう言ったりします、本当にいる訳ではないのですが」
「そうか」
兎が通じた、この世界にもいるのね。
さらにぎゅうぎゅう締まってくる。
「ちょっ、殿下」
細身に見えたが意外とがっしり筋肉があるようで、布越しに生々しい感触を感じ急に男性だと意識してしまう。
やば、恥ずかしくなってきた。
一気に顔が熱くなり、自分でも赤面しているのがわかる。
身体から圧迫感が無くなり耳たぶに柔らかい感触と吐息がかかったと思ったら、もうヴァイツェンは離れており、固まっているリリエナの手を取ると指先に口付けをし、おやすみと言って帰って行った。
「なっ、何なのあの王子様は」
バクバクと跳ねる心臓に戸惑い、熱を持つ耳に手をやる。
いっ、今耳にキスされた?え、たまたま偶然?というか勘違いっ?
でも、ふにって、ふにって感触が。また手にもして行ったし。
恥ずかしさと困惑で頭を抱えながら部屋に戻り、ベッドでもなかなか寝付けず悶々と過ごしたのだった。
リリエナが寝付けない時間を過ごしている同じ頃、ヴァイツェンもリリエナを想い眠れなくなっていた。
自業自得である。
翌朝、オーガストから講師は変更出来ず、ソニアスになると告げられた。
「申し訳ありません。上部の意見も伺ったのですが、この国一番の魔術師であるソニアス殿に学ぶのが妥当ということに。日常に関しては私からご説明致します」
申し訳なさが顔に出ているオーガストが気の毒になり、分かりましたと答えてあげると頭を下げられた。
悪い人ではないと思ったけど、気が重いわぁ。
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