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職場については、まあいいか。組織なんて一人欠けたところで困らないように出来てる。
実際、急に辞めた人がいたけど、皆で協力してどうにかなったのだから。
それより家族だ、両親は私がいなくなったって知ったら悲しむだろうと思う。
会えなくなるならこの間の休みに実家に帰れば良かった。
関係は良好だが、べったりというわけでもなく、どちらかと言えば希薄だった。
それでも大切な人達だ、会えなくなるのは寂しい。
友達にももっと会えば良かった、数は少ないが定期的に会ったりしていたし、心配させてしまうだろうな。
と、止め処なく考えてはいるが、生活の基盤があちらの世界にあったというだけで絶対に帰りたいという理由にならないと自覚してしまう。
私って案外薄情なのかしら、思い返せばいつも居場所を探してたような気がする。
恋人にしてもそう、いつも誰かと比べて告白されても"この人じゃない"って感じてた。
もしかして、それはこちらの世界に来ていたというのが原因なのだろうか。
ふと、ヴァイツェンの顔を思い出す。
ち、違う違う!
あんなキラキラ王子様の隣なんて落ち着かないし、不釣り合いだわ。
深呼吸を繰り返して、慌ててかき消す。
そうすると、今度はソニアスの言葉を思い出して少しイライラしてくる。
勝手に召喚するなんて誘拐と同じなのに、何であんな言われ方しなくてはいけないのか。
いくら聖女が必要だからって乱暴すぎるわ。
命捧げますって言われても、捧げられた方はどうしていいかわからないし。
でも、乱暴だけど、ソニアスは感情的では無かったわね。
この国が聖女を必要としている、言い方は気に食わないが言いたい事は分かる気がする。
聖女として生きていく対価としてソニアスの命を差し出すということだろう。
その事を考えると、やはり元の世界に帰りたいと思う。
私が嫌なのは・・・聖女としての自分なのかもしれない。
「はぁ」
帰りたくても帰れない、そもそも選択肢などない。
なら、今出来る事をやるしかないのだ。
あの黒い物、アームがまたどこで出るかもしれないし、ちゃんと退治方法を知っておかなきゃね。
気持ち悪い毛虫のようなアレ。
ん?前にもどこかで見た気がするけど、どこで見たのかしら。
意外とどこにでもいるものなのかもしれないわ、気を付けなきゃ。
憂鬱な気分になり瞼を閉じると、じわじわと身体から力が抜けていく。
疲れからか、すぐに眠りに落ちていった。
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