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「リリエナ=ドゥーベです。よろしくお願いします」
軽いお辞儀で返すと、ソニアスはにっこりと胡散臭い笑顔を見せた。
何だろう、美形の笑顔なのに爽やかさを感じない上にアロマのような香を纏っているせいか、まるで占い師かペテン師のようなあやしさを醸し出しているわ。
「私に聞きたい事があると伺っております」
「はい、そうです」
ソニアスを促し、リリエナも応接用ソファに向かい合って座ると直ぐに侍女長のレスリさんがお茶を持って来てくれた。
ひと息ついてから気になっていた事を思い浮かべる。
「教えて下さい。私が元の世界に帰る方法はあるんでしょうか」
お茶を飲む手を止めたソニアスは眼だけでちらりとリリエナを見やると、また胡散臭い笑顔を作りティーカップを置いた。
「リリエナ様はご自分の世界に帰りたいのですか?」
「え、ええ。帰りたいと思ってます」
「どうしてですか?」
「どうして?どうしてって、あちらが私の生きてきた世界だからです。こちらへは自分の意思で来た訳ではありませんし、仕事も放り出して来てしまって職場の人もきっと困ってます。一度戻れてるのなら帰れるはずですよね?」
「それはこのアークツルス国の民を危険に晒してでもと?」
「え?」
「ソニアス殿!」
オーガストがソニアスの肩を掴む。
「そ・・れは、魔王が、と言う意味ですか?」
「そう思って貰ってかまいません」
「それは、それについては私に何が出来るか分かりませんが」
リリエナは握り込んでいた手をゆっくり広げ、視線をそこに落とす。
「その力があるのなら」
言いたくないけど。
「魔王討伐は行くつもりです。でも、それが終わったら、その後なら帰っても」
ソニアスはオーガストの手を払い除け、あっちへ行けとばかりに手であしらう。
「討伐の覚悟をお持ちのようでなによりです。しかし、魔王を倒しても魔物がいなくなる訳ではありません。古い文献全て読みましたが、魔王は一定周期で復活し、その都度討伐が行われております。次に魔王が復活までの間も数は減りますが魔物や魔獣は存在しているのです。魔王を倒した後も聖女様、貴女はこの世界に必要なのです」
「そんな・・・」
酷い言われようだ、命を引き合いに出されては言い返しようがなくなる。
「少し意地悪でしたね、申し訳ありません。ただ、現実を知って頂きたいのです。それに、先程の質問の返事ですが、今のところ帰る方法はございません」
「え、でも」
「ええ、5年前貴女は元の世界に帰られた。しかしそれは、我々が関与したものでは無かったのです。なぜ帰れたのかは解明出来ておりません、召喚はいにしえの魔法陣によって行われますが、送り返す為の魔法陣は存在しないのです」
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