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「あ、あり得ない」
リリエナは鏡から目が離せない、日本人の遺伝子的にもおかしい事象が起こっていた。
「オーガストさん、これは・・・魔法の鏡でしょうか」
「いいえ、普通の鏡です。リリエナ様の瞳の色は聖なる金色、聖女様の証です」
黒かった瞳が金色に変化しキラキラと揺れていた。
「なんで、どうして急に」
「先程祓いの力を放っておられました、恐らく聖女様の魔力が覚醒したと思われます」
「祓いの力って、ってオーガストさん?何を」
突然オーガストがリリエナの前で両膝をつき、右手の指先でドレスの裾を足が見えない程度に持ち上げ顔を近づけた。
「この命ある限り、貴女の剣となり盾となる事を誓う。私は騎士故に忠誠は王家にありますが、リリエナ様を全身全霊でお守りします」
そう言うと唇でドレスに触れた。
「あのっ、オーガストさん?」
「騎士の誓いです。今度こそリリエナ様を守らせて欲しいのです、許す、と」
オーガストの声は凛としていて、リリエナの耳に心地良く届いた。
今度こそって言ったわね、私が一度ここに来ていた時にこの人も近くにいたのかしら。
オーガストの縋るように懇願を無視する事が出来ず、守って貰えるのならと頷いてしまう。
「ゆ、許します。こちらこそお願いします。それと、教えて欲しい事があるんですが」
と、その時。
「リリエナッ!」
ドンと激しい扉の開く音でリリエナの言葉を遮り勢いよく現れたのは、昨日より上質の白の詰襟に金と銀の飾り刺繍が襟と袖に施された上衣に、肩より斜めに着けられた鮮血色のマントを翻しながら駆け込んで来たヴァイツェンだった。
闇の気配アームが出たと聞いたが、大丈夫か?ん、オーガスト何をしている」
報告を聞いて慌ててやって来たのだろう、髪を乱したヴァイツェンはリリエナの前に跪いたオーガストの距離が近い事に気付き、問いただす。
「鏡をお渡ししました」
「鏡?それがどう・・・、何があった」
リリエナの変化に気付いたヴァイツェンに、オーガストは事の次第を伝えた。
「城の中ならと油断致しました、申し訳ありません」
「これまで城の結界を超えて侵入して来るなど無かった事だ、何事か起こっているのかもしれない。調べてみよう、オーガストは引き続きリリエナの護衛を頼む」
「かしこまりました」
報告がひと段落したところで、ヴァイツェンが表情を和らげリリエナに近づいた。
「怪我が無くて良かった。色々と驚いたかい?安心して、と言うのも違うかもしれないが5年前も君の瞳はその美しい色だったよ」
「え?」
「我々の瞳の色は、その者の待つ魔力の属性に左右される。何故かは分からないが、こちらの世界のことわりがリリエナの身体に影響を及ぼしているのかもしれないな。以前も出会った時にはもうその瞳だった。そうか、瞳の色については気になっていたが、こちらに来てから変化したものだったか」
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