アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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オーガストに案内された中庭は、四方を城の建物に囲まれ花壇と池が規則的に並んだ、庭というよりまさしく遊歩道のような所だった。
まあ、仕方ないか。でも、やっと外に出れた。
腕を天に向け、大きく伸びをすると透き通った群青の四角い空が見える。
「ん~、良いお天気」
「ご不便をお掛けして申し訳ありません。安全が確保出来れば庭園などもあるのですが」
「庭園があるんですか?」
「はい、この城には三つの庭園がございます。王の庭、王妃の園、王太子の箱庭です。どれも素晴らしいですよ、ただ王妃の園だけは王族とその従者しか入れませんが」
ふうん、限定されると余計見たくなるわね。
王族の庭か、国一番の庭師さんとかいそうよね、この中庭の花壇もパンジーっぽい花を色別で植えてて、日々手入れされてる感じがするもの。
さあ、少し歩こうとした時。
「まあ、オーガスト様。こんな所でお会い出来るなんて光栄ですわ」
突然、ギラギラに着飾った美人だが気の強そうな令嬢がオーガストに擦り寄って来た。
「これはマヌエリタ嬢、ご機嫌麗しく存じます」
オーガストは右手を胸に当て礼をした。
「今日は王妃様のお茶会に招待されましたの、ところでそちらの御令嬢は?」
声のトーンとは真逆の強い視線をリリエナに向ける。
「リリエナ様、こちらはディアレス子爵ご息女マヌエリタ様です。マヌエリタ様、こちらはドゥーベ辺境伯ご息女リリエナ様です」
と順番に紹介をしてくれたがリリエナにはディアレス子爵がよく分からない。
が、何故だかマヌエリタの顔が険しくなり、リリエナを睨みつけてくる。
「はじめましてリリエナ様、もし行き先が同じであればご一緒にどうですか」
声色と表情がこれだけ伴わないのもある意味凄いと思うけど、何でこんなに睨むんだろう。
「あ、いえ。私は」
「この方はお茶会には参加なさいません」
リリエナが返事をする前にオーガストが二人の間に入り答えると、マヌエリタは笑顔になり、今度は人を馬鹿にしたような表情をする。
「まああ、それは失礼致しました。いつか王妃様のお茶会でご一緒出来ると良いですわね、リリエナ様」
捨て台詞を残し、一礼してマヌエリタは去って行った。
いるいる、いるわよねマウント取ろうとする人、けどあの人何に対してマウント取ろうとしたのかしら。
「オーガストさん、あの人は何がしたかったのかしら」
「は、あ、申し訳ありません。お茶会にはこの通路は通らないはずでしたが手違いがあったようです。それにしてもリリエナ様は寛大なお方なのですね」
寛大?意味の分からないマウントを取られても怒りようがないしね。
と、花壇の花に視線を移すと、一つに黒くモゾモゾしたものが動いているのに気が付いた。
ん、あんなのさっきいたかしら。
近くで見ようと数歩移動した時、その黒いものがリリエナに振り返ったように見えた。
「リリエナ様、それに近づいてはなりません!」
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