アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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きっと慣れない人が一生懸命に作ってくれたのね、それにまだ温かい。
はむっと頬張る。
あれ、塩ついてない。あ~、塩むすびだと思って食べたから物足りない。
こっちのおにぎりは塩をつけないのかしら。
と思いながら咀嚼をしていたが、米本来の甘味を感じると逆に米の美味しさに驚いた。
ブランド米というものがこの世界にあるならそれだ、これなら米だけでも十分食べられるが、やはり塩は欲しかったと二つとも食べ終わった後に思うのであった。
不恰好のおにぎりも悪くない、それにこれは懐かしいような気がする。
ふと視線を感じ、チラリとレスリを見ると、心配そうな顔をしていた。
せっかく出してくれたのに変な顔は出来ないわね。
「美味しかったです、ありがとうございます」
と笑って見せた。
「お口に合いましたようで、よろしゅうございました」
とほっと胸を撫で下ろしながら微笑んで、お皿をトレーに乗せて出て行った。
お腹が満たされ元気が出たところで、気になっていたことを聞いてみる。
「オーガストさん、私が元の世界に戻れる方法ってあるんでしょうか」
「そ、それは討伐を拒否なさりたいのでしょうか」
オーガストの声が珍しく動揺している。
「あの、いえ。討伐云々というより、そもそも聖女と言われても皆さんが期待されてるような特別な力もありませんし。ここにいてもお役に立つとは思えないんです。ですから私を元の世界に帰して、ちゃんとした聖女様を召喚すればと」
「は-、そういう事でしたか。リリエナ様、貴女は正しく聖女様ですよ」
「でも、魔法使えませんし、治癒とかも出来ませんよ」
オーガストがリリエナの正面に片膝をついた。
「リリエナ様は召喚かれて以降、まだ魔力を使われておりません。今の段階で使えないと言うには早すぎるかと。私からの提案ですが、指導を受けられてはどうでしょう」
「指導?」
「はい、以前も魔導師より魔力の使い方を習われていたと思いますので」
そうか、確かに使えない証拠が無ければ帰る方法があっても帰してくれないかもね。
「わかりました。確かに一理あると思います。指導を受けたいです」
オーガストはあからさまにほっとした表情を見せ、微笑んだ。
「ありがとうございます。では今日にでも殿下に許可を頂いておきましょう、ひとまず午後に魔導師から帰る方法について話を聞けるよう手配しておきます」
あ、スルーされなかった。ちゃんと聞いててくれる人なのね。
「ありがとうございます」
「いえ、リリエナ様のご要望を叶えるのが私の仕事なので」
「そうなんですか。ところで散歩とかしたいのですけど駄目でしょうか」
さっきのおにぎりで満腹になってしまったから腹ごなしがしたいのよね。
このままだと昼食までにお腹が空きそうにないし。
オーガストは少し考えてから扉の外の衛兵と何やら言葉を交わした。
「遠くへは行けませんが、城の中庭であれば大丈夫でしょう。ご案内致します」

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