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ドゥーベ辺境伯家 4

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夕食を終え屋敷中が寝静まった頃、里菜は寝付けずにいた。
この先の不安が緊張となり眠りを妨げていた。
ベッドから降り、外の空気を吸おうと音を立てないようそっと窓を開け、暗い空を見上げながら思い切り息を吸い込む。
身体全体を使い、今度は息を大きく吐いた。
ふわりと少し冷たいが心地良い風が入って、どんよりした里菜の気持ちを少しばかり癒してくれる。
それが天に伝わったのか今度は空を覆っていた雲が去り、月光を里菜まで届ける。
この世界の空も同じなのね。
曇りのせいか星はあまり見えないが、自分の世界との共通点を見つけ自然と笑みを浮かべていた。
「リリエナ?」
ふいに名前を呼ばれピクリと肩を揺らす。
「驚かせてすまない、私だ、ヴァイツェンだ」
里菜の部屋は2階にあり、声の主はその窓の下の植え込みに居た。
月の柔らかい光が彼の麗しい姿を照らす。
「殿下ですか?どうしてそんな所に」
「うん、君が窓から顔を出さないか願っていたんだ、そしたら叶った。私は運がいい」
え、ストーカーみたいなんですけど。大丈夫かなこの人。
「眠れないかい?」
優しく問われる。
「はい、うまく寝付けなくて」
「王都に行くのは不安?」
正直に言っていいのかな、王子様に向かって失礼にならないかしら。
「本音を言ってくれリリエナ、私は君を守ると約束する。不安を取り除く努力もしよう。だが君が何を感じているのか分からなければ私は無力だ」
王子様が恥ずかしい台詞を言っているわ。
里菜は頬が紅く染まるのを自覚しながら、今が夜の薄明かりであることを感謝した。
「あの、不安です。でも王都だからとかではなく、漠然とこれからの事が分からなくて不安になります」
あれ、私すんなり本音言っちゃった。この人の事あまり知らないのに、どうして。
言われ慣れない言葉に流されたかしら。
「良かった」
「え?」
「王都が嫌ではないのだな、それに私の事も。であればその不安、私に預けてくれないか。リリエナ、貴女の剣と盾になると誓おう。私に付いてきて欲しい」
ま、まあ、どうせ行くしかなさそうだしね。
「分かりました。王都に行きます」
「ありがとう、さあ、もう寝た方がいい。風邪を引いてしまうよ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
窓を閉めベッドに潜ると、既に冷え切っていて身体がブルッと震えたが、心は不思議と軽かった。
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