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ドゥーベ辺境伯家 1

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「お帰りリリエナ、我が娘」
応接の間で出迎えてくれたのは大きな体格で強面だが目元の皺は優しさを漂わせている壮年の男性だった。
白いシャツとスラックスという地味な服装だが、佇まいに気品が滲んでおり、優しく里菜を見つめている。
ヴァイツェンとオーガストも待っていてくれたようだ。
この人が御当主様?優しそうで素敵な人だな、でも我が娘ってどういうこと?
里菜が戸惑っていると当主がヴァイツェンに向かい姿勢を正した。
「殿下にお願いがございます。親子水入らずの時間を過ごさせていただきたいのです」
「あまり時間はないのだが」
「我が家族にとっても久方振りの再会、つもる話もございます。5日後にはドゥーベ家精鋭の護衛をつけて王城まで送り届けるとお約束します」
「そうか、すぐにでもと思うところだが、家族の時間が必要なのはわかった、だがリリエナ嬢は私自身が預かってゆく、これだけは譲れない。明日の午後には出発する」
ドゥーベ家当主とヴァイツェンの視線が強くぶつかる。
「わかりました、昼食後に出発できるよう用意させます。殿下方は客間を用意しましたのでお休み下さい」
要は早く出て行けって言ってる、この人王子様よね、そんな態度で大丈夫なんだろうか?
「では失礼する」
里菜の心配を余所にヴァイツェンは短く答えると部屋を出て行った。
残された里菜の緊張に気付いた当主はドアに向かい「お茶を」と声をかけた、間も無くティーセットとケーキが運ばれて、テーブルに並べられる。
里菜の視線は生クリームたっぷりタルトケーキに釘付けになる、この状況でもケーキへの執着は消えていなかったようだ。
しかも里菜の好きなフルーツ盛り盛りタイプだ、種類だってたくさんある。
「お腹はすいてないかい?リナが好きだったものを用意させた、好みが変わってなければいいのだが」
「いえ、大好きです。実はお腹すいてました、いただきます」
昨夜から何も食べておらず、正確にどれくらいの時間が経過しているのか分からないが、本当にお腹ペコペコだったのだ。
知りたい事は色々あるけれど、まずは腹ごしらえってとこね。
「夕食までまだ時間がある、おかわりもあるそうだ、たくさん食べなさい。リナが現れたと連絡があって、コック達が張り切って用意してくれたのだ、後で声を掛けてあげなさい」
すでに口いっぱいに頬張っていた里菜はモゴモゴしながら頷く様を当主は微笑ましく眺める。空腹に負けてマナーどころではなくなっていた。
「まずは自己紹介をしておこう、私はエドワイド=ドゥーベ。このドゥーベ辺境伯家の現当主だ。そしてリナ、君は5年前に私達の家族となりリリエナ=ドゥーベとなった」
咀嚼したものをゴクリと飲み込む。
「あの」
「さて、少し昔話をするとしよう。恐らくリナの知りたい事だ」
そう言うと5年前の出来事を話し始めた。
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