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召喚-3
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でも、今日くらいはもう少し自分の為に時間を使いたかったな。
40才という節目は存外に重く感じる。
何やってるんだろうな私。
いつもは感じなかった寂しさがじわりと湧いてきて、こんなことならもっと積極的に出会いを求めたら良かったなんて考えてしまう。
あ、駄目だ泣きそう。
早く帰ろう、きっと疲れてるのよ。
残業が続いており、疲労はピークで足取りは重く地球の重力を恨めしく感じていた。
帰ってネットで小動物の動画を見ながらスイーツを食べよう。
ケーキは休みの日に好きなだけ買えばいいし、とにかく今は早く帰ろう。
駅に着きホームへ急ぐと、タイミング良く電車が到着していたので扉が開いた瞬間に勢いで飛び乗った。
どの席に座ろうか探す為見渡した里菜は目の前の光景を信じられず固まる。
「え?」
座席がどこにも見当たらない。
いや、何も無かった、ここは電車の中ですらなくどこを見ても真っ白な世界が広がっていた。
「何、ここどこ?電車に乗ったはずなのに!」
あまりにも突然で身動きが取れない。
「違う、足が動かない」
力を込めても動かす事が出来ないと気付いて足元を見ると、真っ白な床に踝まで沈んでおり、ズブズブと沈んでいた。
「や、何、怖い、助けて!」
無機質な床が自分の体を飲み込んでいく事になす術もなく、アッと言う間に顎まで沈んでいく。
「死ぬのはイ」
イヤと最後まで言えなかった。
頭までとっぷりと沈んだ後に感じるのは浮遊感で、その後背中に衝撃があったかと思ったら何かに巻き付かれていた。
床に飲み込まれて咄嗟に目をつぶったから、今自分に起きている事を視覚的に把握出来ていない。
が、呼びかけられた声にハッとする。
「おかえり、リリエナ」
この声、優しい声、聞いたことがある。
誰なの、目を開けたいけど頭がグラグラして無理。
ただ、自分に巻き付いているものが誰かの腕であることは分かった。
あなたは誰?
リリエナって誰?
口を動かすが言葉にならず、里菜は完全に意識を手放した。
40才という節目は存外に重く感じる。
何やってるんだろうな私。
いつもは感じなかった寂しさがじわりと湧いてきて、こんなことならもっと積極的に出会いを求めたら良かったなんて考えてしまう。
あ、駄目だ泣きそう。
早く帰ろう、きっと疲れてるのよ。
残業が続いており、疲労はピークで足取りは重く地球の重力を恨めしく感じていた。
帰ってネットで小動物の動画を見ながらスイーツを食べよう。
ケーキは休みの日に好きなだけ買えばいいし、とにかく今は早く帰ろう。
駅に着きホームへ急ぐと、タイミング良く電車が到着していたので扉が開いた瞬間に勢いで飛び乗った。
どの席に座ろうか探す為見渡した里菜は目の前の光景を信じられず固まる。
「え?」
座席がどこにも見当たらない。
いや、何も無かった、ここは電車の中ですらなくどこを見ても真っ白な世界が広がっていた。
「何、ここどこ?電車に乗ったはずなのに!」
あまりにも突然で身動きが取れない。
「違う、足が動かない」
力を込めても動かす事が出来ないと気付いて足元を見ると、真っ白な床に踝まで沈んでおり、ズブズブと沈んでいた。
「や、何、怖い、助けて!」
無機質な床が自分の体を飲み込んでいく事になす術もなく、アッと言う間に顎まで沈んでいく。
「死ぬのはイ」
イヤと最後まで言えなかった。
頭までとっぷりと沈んだ後に感じるのは浮遊感で、その後背中に衝撃があったかと思ったら何かに巻き付かれていた。
床に飲み込まれて咄嗟に目をつぶったから、今自分に起きている事を視覚的に把握出来ていない。
が、呼びかけられた声にハッとする。
「おかえり、リリエナ」
この声、優しい声、聞いたことがある。
誰なの、目を開けたいけど頭がグラグラして無理。
ただ、自分に巻き付いているものが誰かの腕であることは分かった。
あなたは誰?
リリエナって誰?
口を動かすが言葉にならず、里菜は完全に意識を手放した。
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