アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

召喚－2

なので誕生日を一緒に過ごす相手はいなかった。
実家は電車とバスで１時間程の距離だが、わざわざ帰る気にもならない。
言い訳にはなるが、彼氏が出来る機会は過去にあった。
あるにはあったが心のどこかでこの人は違うと感じてしまい交際に至ることはなかった。
それが数回あり自分でも嫌になって、出会いの場を避けるようにしていたらとうとう40才になってしまったという訳だ。
周囲からは理想が高いだの、夢を見過ぎだの言われたが無理なものは無理で仕方がない、気持ちが無いのに付き合う方が失礼だと思う。
何故違うと感じてしまうのか自分でも分からないからどうしようもない、自分では理想は高くないと思うし白馬の王子様を待ってるわけではないのだから。
「あ、そろそろ行かなきゃ」
手早く後片付けをし、スーツに着替え会社に向かった。

「これ領収証と精算書類の金額が合いません、それに接待の人数と相手先も抜けてますよやり直しお願いします」
里菜が淡々と告げると営業課の青年の顔が歪み、しぶしぶといった感じで書類を受け取り去っていく。
ふぅと息をつくと、背後から声が掛けられた。
「ありがとうございます枝川主任、営業の人苦手なんで助かりました」
笑顔の彼女は去年入社の新人で、先程の不備書類を受け取った子だ。
「どういたしまして、けど次からは自分で返せるようにしないとね」
「は～い」
適当な返事が返ってくる。
不備を指摘する事は言いづらいが仕事なのだから出来ないと困るのだ。
だけど頭ごなしに注意しても最近の子には響かない、とにかく指導側に忍耐力が必要だ。
お一人様でがむしゃらに働いてきた里菜は急に休んだり早退したりしない為、会社にとっては都合がよく、能力もあったお陰でここ総務課の主任という立場にある。
そんな中途半端な立場はいらないと思ったが断れず今に至り、仕事は増え、社員の教育もしなければならず最近は残業が増えていた。
でも、今日くらいは定時に終わってもいいと思う、誕生日くらいはゆっくりしたいし流行りの洋菓子店のケーキも食べたいもの。
が、夕方近く資料作成の指示があり結局残業となった。
どうせ、と卑屈になりそうになる。
誰かにお願いしたかったが、若い後輩は飲み会があるとかで帰ってしまった。
上司に頼めるわけもなく、せめて早く終われるようパソコンに向かい終わったのは洋菓子店の閉店時間をかなり過ぎてからだった。
暗い夜道をコンビニスイーツの入った袋を片手にトボトボと歩く。
何で私ってこうなんだろう。
資料作成だって30分でもいいから誰か捕まえて手伝って貰えば良かったし、資料が必要なのは明日の午後なんだからギリギリまで時間を貰えば良かった。
でも若い時は遊びたいだろうと思うし、資料も早く手元に届けば会議前の準備がスムーズにいくだろうと考えてしまう。