屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか

文字の大きさ
上 下
178 / 276
第六部『地の底から蠢くは貴き淀み』

三章-5

しおりを挟む

   5

 俺たちが洞窟を出たとき、空には一面の星々が浮かんでいた。西側の空に浮んでいる刃のように薄い三日月は、控え目に周囲を照らしていた。
 蝋燭を垂らした跡を辿って、俺たちは早々に洞窟へと戻り、地上へ出た。眠気はあったけど、あんな地下で眠る気にはなれず、徹夜を覚悟の強行軍となったわけだ。
 そして洞穴の外では、約束通りドワーフが待っていてくれた。
 異変の原因について知り得たことを話すと、まだ若そうな――髭のせいで年齢が把握しにくいが――ドワーフは、俺たちに寝床を提供すると言ってくれた。ドワーフは山の中腹あたりで、坑道を兼ねた住居を構えていた。
 地下ということでセラは難色を示したが、ベッドの大きさ以外は快適――なにせ、ドワーフ用のベッドだ――だった。
 夜が明けるとともに、俺たちはホウル山を下山し、ホーウ村に戻った。
 そこからは、まさに息を吐く暇すらないほどの忙しさだった。
 騎士たちとの接触を避けながら、職人頭さんたちから工事の状況を聞いたり、奥方に礼をして馬車を引き取りもした。村から手に入る食料は殆どないため、取り急ぎ近くの森で木の実などを採取しておいた。
 俺たちが村を出発できたときには、昼を少しばかり過ぎていた。馬に負担をかけて潰すわけにはいかないから、急く気持ちとは裏腹に、キャリン村への旅路は往路とそれほど変わらぬ行程となった。
 俺たちが久しぶりにキャリン村に戻ったのは、最後にクロースたちと合流してから、六日目のことだった。
 牧場の前で馬車を停めると、俺たちが馬車から降りるより早く、クロースが飛び出してきた。
 手には飼い葉を掴んでいたが、一緒にタマネギや芋も持っているのは何故だろう?


「セラさん! ランド君に、瑠胡姫様っ!」


 クロースの顔は、俺たちが持ち帰ったであろう異変の原因への期待からか、どこか期待に満ちたものだった。
 クロースに手を振りながら御者台から降りた俺は、先ずは馬を柵に繋いだ。
 それから瑠胡とセラが馬車から降りるのを手伝っていると、アインが遅れてやってきた。


「ランド、どうだった?」


「色々とわかったことはあるけどな……問題も増えた」


「なんだ、そりゃ」


「どこか、人気の無いところで話したいんだけどな」


「それなら、放牧地の端っこが良いだろうな。誰かが来ても、すぐにわかるし」


「いいね。そこにしようか」


 俺たちはラストニーやマナサーさんが馬車から降りてから、牧場の建物や牛舎などから一番遠いところにある、放牧地の柵の前で、輪になって腰を降ろした。
 俺たちはクロースとアインに、ホウル山で知り得た情報を話した。鍋の底にある黒い鉱物みたいなもの、遺物、それらに絡む女が領主らしいこと――話を終えたとき、クロースの顔は酷く沈んでいた。


「そんな……領主様が異変の原因を造ってるなんて、こんな話ってある? 証拠なんか、隠し放題じゃない」


「でもさ、それを探し当てないと、根本的な解決はできねぇんだよな。領主の息子も――」


「ああ、そうなら装飾品を造ってる職人なんかも、手掛かりになりそうじゃないか!!」


 俺の言葉を遮るように、ラストニーが大声を出した。
 いきなりのことに全員が呆気にとられていると、ラストニーは「ランドに瑠胡様、セラ殿、マナサー様、ちょっとこっちへ」と、俺たちを手招きした。
 怪訝そうにしている俺たちが手招きに応じると、ラストニーは小声で言ってきた。


「頼みます。どうかクロースには、わたしの素性を内密にして下さい。今知られるのは、なにかと拙い状況ですから」


 なにを気にしているのかは知らないが、気にしすぎじゃないか――と想いはしたが、ラストニーの必死な表情に、俺は呆れ気味に頷いた。


「わかったよ。あとで恨まれるよりは、いいだろうし」


「すまない」


 密談は終わりだとラストニーが解散を指示すると、アインが口を曲げていた。


「なんなんだよ、おまえら」


「あ、いや……」


「情報の訂正をされただけだ。気にするな」


 俺が返答に迷っていると、セラが代わりに言ってくれた。
 アインはこの回答に納得はしてなさそうだったが、それ以上の追求はしなかった。腕を組んで口を曲げると、目だけで俺に話の続きを促してきた。
 俺は少し内容を修正してから、なるべく嘘の無い内容で答えることにした。


「とりあえずは、領主街のクロイスで兵士や職人の動向を探るしかないな。鉱石を宝石状にして装飾品にするなら、職人の手は必要だ。確実性には欠けるけどさ、依頼人を順に追っていこうと思ってる」


「……確かに、確実性には欠けるな。崩れた山の洞窟は、いつ復旧するって?」


「あと……十日前後ってところらしい。二次災害を警戒すると、そんなに急いで工事はできないそうなんだ」


 アインは顎に手を添えると、唸るような声をあげた。


「十日……か。時間との勝負だな」


「ああ。ところで、そっちはどうなんだ。なにかわかったか?」


 アインにした質問だったが、反応したのはクロースが先だった。
 手にした飼い葉やタマネギを地面に置くと、酷く悲壮な顔をした。


「異変は……家畜だけじゃないかもしれないの。タマネギ、半分に切ってみるね」


 クロースが、半分に切ったタマネギの断面を俺たちへ向けた。断面にある芯から三つ目鱗茎に沿うように、黒い筋が入っていた。


「この黒いの、石みたいなんだ。こんなのが、ザイケンで採れたタマネギや芋に、こんな石みたいなものが紛れ込んでるの」


「なんだって?」


 異変が家畜だけでなく、作物にまで影響が出ているなんて。
 ニッカーの言っていたことを総合すると、ホウル山の地下水が汚染され、それが水源まで影響を与えたことが、家畜の異臭の原因になっている。
 ただ水源への影響が、どう家畜に影響を与えているかまでは、教えてくれなかった。
 俺は少し悩んでから、この場にいる全員を見回した。


「水源の汚染が、どうやって家畜の異臭に繋がってるんだろうな。そこから、順を追って考えてみようか。もしかしたら、遺物を止めるだけじゃダメかもしれないし」


 俺の問いかけに、皆はそれぞれに考え始めた。一番最初に「あ!」と言って顔を上げたのは、クロースだった。


「きっと、雨期の氾濫だよ! 雨期になると、川が氾濫するって話しなかったけ? そのせいで、川の近くじゃ農作物を育てるのは難しい。だけど牧草なんかは、川の氾濫で水をたっぷりと吸うから、一気に育つんだよ。だから酪農は川の近くが多いの。だからつまり……氾濫した川の水によって、牧草も汚染されたんじゃないかな」


 流石、地元民。
 しかも酪農家の娘となれば、この手の発想はすぐに出てくるな――と、感心している俺の横で、瑠胡も似たようなことを思ったのだろう。
 軽く握った右の拳の底を、左手に打ち付けた。


「なるほど――矛盾はないように思えるのう」


「姫様、ありがとうございます」


 少し照れくさそうに応じるクロースに、ラストニーがやや柔らかい声音で言った。


「農作物は川から遠い場所で栽培してるけど、それの異変も雨期に関係していると思うかい?」


「それは……よくわかりません。飼い葉の中にも黒いスジを見つけましたし、これも家畜を汚染する原因だと思うんです」


 少し言葉が固くなりながらも、クロースは答えた。クロースが次に手にした飼い葉は、茎の一部分が平たくなっていた。そこに、先ほど言っていたように、黒いスジが見えた。
 飼い葉の麦稈――それを見た俺の頭に、ある光景が浮かび上がった。


「……そうか、牛糞だ」


 俺の呟きに、ラストニーは露骨にイヤそうな態度を見せ、アインは眉を顰めた。クロースは首を捻っただけで、瑠胡とセラ、それにマナサーさんは冷静に次の言葉を待ってくれている。

 特にラストニーに言いたいが、「そういうネタを好む人か」という目を向けるのを止めろ。

 俺は咳払いをすると、クロースの手にある飼い葉に湯に指先を向けた。


「この前、クロースが麦稈と牛糞を交換するって言ってたよな。その牛糞も汚染されていたとしたら? 麦藁と畑に放置して肥料にしてるはずなんだけど、それが土壌を汚染したなら、作物もダメになるよな」


 この辺りは、メイオール村で手伝い屋をやっていた経験によるものだ。
 実際は切り落とした麦藁や作物の茎を放置した畑に、牛や豚を放すだけだ。あとは勝手に、牛や豚が糞をする。
 あとは時間の経過によって、土地が肥えていく――というものだ。時期的には夏期から秋の初旬に行われる。冬は気温が低いためか、逆に土地を痛めるだけ――と、聞いたことがある。
 ザイケンでは、農村と酪農の距離が離れているから、牛糞と麦稈の交換という形をとっているんだろうが、それが災いしたに違いない。
 そんな俺の意見に、ラストニーの顔が青くなった。


「待ってくれ。汚染された土地っていうのは、冬を越したあたりで元に戻るのかい?」


「それは……多分、無理でしょう。今回の収穫で、どれだけ汚染が作物に吸収されたかわからないけど、すべてじゃ無いと思うし。早くて来年の収穫後、最悪数年はダメかも――」


「冗談じゃない! それでは、民が飢え死にするぞ」


 頭を抱えるラストニーに、アインは頬を掻きながら告げた。


「新たに開墾するとか、そういう手段じゃ駄目なのか? 領主に掛け合えば――」


「開墾なんて、すぐに出来るものじゃない。今の規模を開墾しようとしたら、少なく見積もっても三年はかかる。そのあいだ、ザイケンの民は汚染された作物を食べるか、余所の領地から仕入れた作物を食べるかのどちらかだ。
 貴族や裕福な商人ならともかく、平民たちは汚染を口にするか、飢えるかの選択しかない」


「あとの手段は、地道に土を入れ替えていくしかないです。出来るだけ早く、出来るだけ大人数で畑の土を入れ替える。開墾と、どちらが楽かはわかりませんけれど」


 マナサーさんの提案を聞いても、ラストニーの表情は晴れなかった。
 自分の母親がしでかしたことだけに、心中は穏やかじゃないんだろう。暗い表情のまま顔を上げると、目の前の空間を睨むように、目を釣り上げた。


「汚染の原因を止める――まずは、そこからやらねば……なにも始まらないし、始められない」


 その意見は、俺も同感だ。
 少しでも早く遺物を止めなくては、汚染は深く進行する一方だ。


「クロイスへ行こう。調べるにしても、直談判をするにしても、クロイスでなければ、なにもできない」


 謎といえるものは、解けた。
 だけど解決のための手段は、まだ霧の中だ。手探りだろうと光の源を見つけるため、俺たちは考え、動き続けるしかない。
 牧場主に礼を告げた俺たちは、これからのことを話し合いながら、クロイスへと馬車を奔らせた。

----------------------------------------------------------------------------------------
本作を読んで頂き、誠にありがとうござます!

わたなべ ゆたか です。

牛糞での汚染――というのがやりたくて、麦稈と牛糞の交換という設定をした次第です。

中世ヨーロッパの農法だと、メイオール村のやり方ですね。もしくは、獣骨をばらまく方法。
日本だと人糞になる――すいません、汚い話が続いてしまって(汗

別に中の人は、そっちのマニアでは御座いませんので……勘違いは勘弁して下さい。

ただハイヒールにh(以下自主規制

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!

追記

ファンタジーカップ用も投稿しました。

「最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます」

よろしければ、そちらもよろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...