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第四部『二人の帰郷、故郷の苦境』
エピローグ
しおりを挟むエピローグ
俺たちがメイオール村に戻ったのは、瑠胡の故郷――神界へ出発してから、二十日目のことだった。
天竜族であるドラゴン、ワイバーンたちが、俺や瑠胡、セラを村まで運んでくれた。運んでくれたといっても、メイオール村の西側にある森の中までだ。村に近づきすぎると村人たちが不安がるから、こればかりは仕方が無い。
俺たちは先ず、留守のあいだに世話をかけた《白翼騎士団》へと帰還の挨拶に向かったのだが……。
俺たちと面会したレティシアは、不満げな顔を、惜しげも無く露わにしていた。
「……あれは、どういうことなのか説明を求める」
「あれって?」
不満げな表情のレティシアの案内で、俺たちは俺の家に案内を――。
……?
…………え?
俺の目の間にあるのは、剛健な石造りの砦を思わせる建築物だった。隣にある俺の家と比べて、八倍くらいの敷地面積、そして高さは三……四階ほどか。
屋根の部分には、神界で見た瓦という材料が、使われているように見える。
レティシアは無言で回答を求めてきたが……こんなのがある理由は、俺の方が知りたいくらいだ。
アクラハイルは俺の家が改装と言っていたが、むしろ増築に近いだろ、これ。
「あのさ……これは、誰が建てたんだ?」
「詳しくは知らん。奇妙な出で立ちの職人たちが、十日ほどで建ててしまった。もっとも村長や――ハイム老王の許可を得ているということで、わたしは口出しできなかった」
「ハイム老王が……?」
俺は首を捻ったが、ふとアクラハイルの顔が脳裏を過ぎった。もしかしたら、あっち経由でハイム老王に話が伝わったのかもしれない。
俺が困ったような顔をしていると、いつの間に下界に降りていたのか、紀伊が近づいて来た。
「これは、天竜の神殿でございます。瑠胡姫様、そしてランド様、セラ殿の住まいを兼ねたものとなります。こちらを拠点として、どうか同胞たちからの尊敬を得られるよう、努力をして頂きたいと願います」
なるほど。つまり、これは天竜族が、俺たちのために建ててくれたわけだ。
紀伊の言った同胞とは、ドラゴン族のことだ。ドラゴン族からの尊敬を得るというのは、俺と瑠胡に関係があることだったりする。
竜神・安仁羅様と与二亜から、俺たちは正式に恋仲――つがいとして認められた。ただし、子を成すのは制止がかけられている。
『今のままでは、ほかのドラゴン族からの不満が募るだけである。よって、ランド殿は天竜族として功績を上げ、同胞たちからの尊敬を集めよ。それを経て、初めておまえたちは皆から祝福されるであろう』
『下界での住まいを襲撃しないよう、周知はしておく。おまえたちは、やるべきことに集中してくれればいいよ。ああ、もう一つ。世話人も送るから、是非に頼ってくれ』
――ということらしい。
俺と瑠胡はそれまで、つがい――つまり夫婦として子作りはできないわけだ。もっとも、正式に婚姻をしているわけではないから、当然のことではある。
なんだけど、功績を上げてドラゴン族からの尊敬を集めるのは、かなり大変そうだ。
と、ここまで記憶を反芻していると、レティシアに睨まれていることに気付いた。
「な、なんだよ……」
「瑠胡姫様やセラだけでなく、また新しい女性を連れてきたのか」
「いや、彼女は俺と関係ないって! 瑠胡の幼なじみなんだよ」
俺の説明を聞いても、レティシアは半信半疑という顔をしていた。
そんな俺たちの横で、瑠胡とセラが紀伊と話をしていた。
「紀伊……御主、なにをしにここへ?」
「わたくしは、皆様のお世話を仰せつかっております。それに、ランド様とセラ殿が修行をする際に、師範代わりにもなりましょう。お世話については、わたくしの他に二名の天竜族が来る予定です」
「修行をしていただけるのは、有り難いです。まだ少し、色々と不安がありますので」
世話係が来るなら、俺も少しは楽ができるのかな?
そうは思うが、問題は功績を上げるのと――レティシアたちへの説明が、頭痛の種になりそうだ。
なんだろう……この村に来て、のんびりと過ごせると思っていたのに。なんだか色々と大変になってきた。
とりあえず、レティシアに経緯を説明するところから始めようか。セラも天竜族として昇華した以上、下界にある特定の勢力に加わるわけにはいかない。
正式に騎士団から退団させないといけないんだが……そんな話をしたら、激怒しそうな気がするけど。
俺は溜息をつきながら、説明の言葉を探し始めていた。
完
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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!
わたなべ ゆたか です。
というわけで、まだちょっと続きます。
終盤に文字数が多かったですので、あっさりめのエピローグとなりました。たまにはいいかな……と思っています。
次回の予定ですが、早ければ土曜日(30日)の夜……になるかもです。
プロットの章分けが、二章までしか終わってないもので……スイマセン
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
次回もよろしくお願いします!
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