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屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです
幕間
しおりを挟む幕間 ~ 虚偽から迫る
インムナーマ王国では、騎士団や兵舎、各領主の監査を行う監査係が存在する。
王都タイミョンの中央区画にある監査係の庁舎に、第十三監査分隊の詰め所がある。そこでは、監査係における最年少の監査役らが事務処理や装備の点検を行っていた。
「……おいおい、冗談だろ?」
そこそこに質の良い椅子に腰掛けながら、ゴガルンは剃り上げた頭を手で撫でた。
品の良い紺色の制服に身を包んでいるが、上腕筋が太すぎるためか、似合っているとは言い難い。制服を少し窮屈そうに着たゴガルンに、部下である赤毛の青年は、にやついた笑みを向けた。
「いや、ゴガルン分隊長……本当らしいですよ。ゴガルン分隊長の言っていた、レティシアってのが率いる一団が、例の洞窟の魔物を追い払ったっていう話です」
「なんだと!?」
ゴガルンは立ち上がると、赤毛の青年を睨み付けた。
「あの洞窟にいたのはキマイラじゃく、ドラゴンのはずだ。レティシアたちで、勝てるはずはねぇ!」
「ですが……ハイント領のベリット・ハイント男爵からの書状には、そう書かれていたそうです。ただ、自軍と魔物との戦力差を冷静に判断し、助っ人を雇ったらしいのですが……」
「くそっ! ドラゴンを見たレティシアが、逃げ帰って来る算段だったのによ。俺の計画が無茶苦茶だぜ。それで、レティシアの部隊はどうなるんだ?」
不機嫌に問いかけるゴガルンに、赤毛の青年は言いにくそうに答えた。
「監査首座は感心した御様子で……その、騎士団として正式に決定となりそうです」
「ふざけんじゃねぇ!」
乱暴に机を叩いたゴガルンは、肩を揺らしながら詰め所を出た。
廊下を進んだ先にある階段を登る最中、部下を引き連れた監査首座に出くわした。灰色の口髭を整えた、品の良さそうな四〇代の男だ。
ゴガルンが最敬礼をすると、監査首座は鷹揚に微笑んだ。
「確か、《ダブル》のゴガルンだったな。おまえの同期であるレティシアの部隊は、大層な活躍をしたらしい。なんでも、ハイント領のドラゴンを追い出したそうだ。先ほど届いたドラゴンの鱗は鑑定に出しているが、本物の可能性が高いらしい。彼女を推薦した、おまえも鼻が高いというものだな」
「……はい。同期として、誇らしく思います」
最敬礼をしたまま答えるゴガルンに、監査首座は頷いた。
「うむ。今回の功績で、彼女の部隊は正式に騎士団となるだろう。もっとも監査役を送って、最後の活動実態を視察せねばならんがな」
ゴガルンは僅かに頭を上げると、右手を自分の胸板に添えた。
階段の途中にも関わらず膝を折ると、従順な態度で監査首座を見上げた。
「願うことが許されるのであれば、その役目……わたくしの分隊にお任せ頂けないでしょうか?」
「おまえが……ふむ」
監査首座は少し考える素振りをしたあと、僅かに口元を緩めた。
「よかろう。久しぶりに同期の顔を見るのも、いい刺激になるだろう。手続きは、中隊長にやらせよう。おまえたち十三分隊は視察の日程が決まり次第、ハイント領へ向かうがいい」
「はっ」
再び頭を下げたゴガルンの口が、なにかを企むような笑みを浮かべていた。
ゴガルンと別れて階段を降りた監査首座は、静かに溜息を吐いた。
「さて、どうなることか。一つ手を打っておくとしよう……おい」
「はい。どうなさいました」
「うむ……ハイント領の領主である、ベリット様へ手紙を出してくれ。文面は、そうだな……」
監査首座から内容を聞いた部下は、驚くような顔をしながらも、慇懃に頭を下げた。
部下が駆け足で階段を降りるのを見送りながら、監査首座は静かな溜息を吐いた。
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