消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

邪な神託を求めて~そして封印へ その4

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 邪な神託を求めて~そして封印へ その4


 ダグラスさんの手伝いで、僕は二日ほど《箱》の復元作業を手伝った。といってもクレーンの設営と《箱》にこびり付いた土の除去作業が大半だ。
 まだまだ《箱》の修復作業を行うには、時間がかかりそうだった。
 砂にまみれた作業着を叩きながら《箱》を見上げていると、ファインさんとハービィさんがやってきた。


「アウィンっ!」


 ファインさんは僕とレオナの前で立ち止まると、「もうっ!」と怒りを露わにした。


「なんで、こっちにいるって教えてくれないの!? ずっと第二坑道を探してたのにっ!!」


「すいません……えっと、ダグラスさんから、関係各所に連絡してくれるって言われてたので、てっきり知ってるって思ってました」


 僕の返答を聞いたファインさんは、近くにいたダグラスさんを睨んだ。
 ダグラスさんは困ったような顔をしながら、わけがわからない言いたげに、両手を上に挙げた。


「いや、護衛兵側にも伝えたんだがな……」


「なら、お爺様の仕業かな……もう、なんなの」


 腕を組んで膨れっ面をするファインさんの背後では、ハービィさんが呆れたように肩を竦めていた。
 この二、三日あたり、ファインさんの機嫌はかなり悪かったみたいだ。
 ハービィさんのホッとしている表情から察するに、かなり苦労したようだ。だって、今の状況で安堵してるくらいだし。
 レオナは「それで」と前置きをしてから、ファインさんを手招きしながら声をかけた。


「それで、話を進めたいんだけど。なにか用事があるんじゃないの? それと、どうやってここを見つけたわけ?」


「ジョージ大尉から、あなたたちに伝言。そのときに、ここにいるはずって聞いて」


「ああ、なるほど。それで、伝言って?」


「仕事が終わったら、執務室まで来てくれって。あたしとハービィも行くけど」


 一体、なんだろう? ダグラスさんは、僕が振り返ると無言で頷いた。きっと、「行ってこい」ということだろう。
 僕とレオナは、ファインさんたちと一緒に、ジョージ大尉の執務室へと行くことにした。


「あんまり、良い予感はしないなぁ」


 道中に聞こえてきたレオナの呟きに、僕は胸中で同意した。

   *

 ジョージ大尉の執務室を訪れた僕たちは、そのまま軍の施設へと連れて行かれた。
 倉庫――正式には格納庫というらしい――の中に収められた魔神アイホーントは、脚や胴体をワイヤーで固定されていた。
 目は白濁とし、口から覗く内部は黒く焦げている。あのときと同じ、死骸のままにも関わらず、僕は思わず恐怖心が蘇った。
 レオナは恐怖よりも嫌悪感が勝ったみたいだ。ジョージ大尉へ、露骨に眉を顰めていた。


「こんなのを見せて、どういうつもりですか?」


「明日、アラド技術長が魔神の調査を行う。不測の事態に備えるため、君たちには当施設内での待機をお願いしたい」


「あの、待って下さい。調査や実験は、しないって話じゃ――」


 ジョージ大尉は以前、僕らにそう言った。魔神がそのまま復活するとは思えないけど、なにが起きるか予想ができない。
 そのことは、ジョージ大尉も覚えてはいたみたいだ。大袈裟な素振りで頷いてから、僕らを見回した。


「これは、交換条件でね。技術部隊の装備を借りる代償に、アラド技術料が魔神の身体を調べるのを許可した。もちろん、警備と監視は付ける」


「まったく、これだから軍ってのは……」


 嘆息するレオナに、ジョージ大尉は僅かに頭を下げた。


「すまん。君らには、我々の尻ぬぐいをさせるかもしれん。ただ、調査の内容は至ってまともだ。《箱》に運ぶため、魔神の身体を切断するためのものだ」


 ファインさんは、不安げな顔でジョージ大尉に訊いた。


「切断って――そんなことできるんですか、大尉」


「その調査を行うのだよ。あの巨体を運搬するのは、かなりの労力だ。何等分かできれば、それが軽減できるかもしれないのだからな」


「そういうことですか。たしかに、ここまで運ぶだけでも、二日かかりましたから」


「ああ。さらに言えば、今回は地下まで運ばねばならん。身体を細分化できれば、坑道を広げたり、縦穴を掘ったりする手間が省ける」


 ジョージ大尉の説明は、筋が通ってる気がする。
 だけど……なにか見落としているような気がして、僕は素直に同意できなかった。
    
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