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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
技術長の高慢と欺瞞の渦 その1
しおりを挟む技術長の高慢と欺瞞の渦 その1
魔神を斃してから、一ヶ月が経った。
僕――アウィン・コーナルは相変わらず、発掘技師を続けていた。土埃だらけの作業着を着て、手がりで坑道の中を削りながら、魔導器という大昔に作られた兵器を掘り出している。
僕の側にはレオナがいてくれて、周囲の警戒をしてくれている――んだけど。
今は何故か、横で僕の顔をジッと眺めていた。
……なんだろう。なんだかちょっと、恥ずかしい。
僕は掘り起こした円形の盾をゆっくりと取りだしてから、レオナを見た。
「えっと……どうしたの?」
「別に? 真剣な顔だなって」
微笑むレオナに、僕は照れながら盾に目を戻した。
エディンの墓参りでキスをした仲だというのに、僕は未だにレオナの一挙一動に照れたり見惚れたりしている。
我ながら進歩がない……とは思うけど、自分からなにをすればいいのか、自分からなにかしてもいいのか、というのがわからない。
僕なんかが、レオナになにかをしたら嫌われてしまうかも――という不安もあるけど。
きっと、僕の顔は真っ赤になっている筈だ。
その証拠に、足早に近づいて来たファインさんが、レオナに噛みついた。
「ちょっと。技師の邪魔をするなら、地上に戻ってなさいよ」
「邪魔はしてないでしょ? 見てるだけなんだから」
「俺が言うのもなんだけどさ。おまえら、こんなところでワチャワチャすんな」
溜息を吐きながら、ハービィさんが二人を窘めた。
レオナとファインさんが、ほぼ同時にハービィさんを振り返り、「ちょっと黙ってて」という意味のことを異口同音に言い放った。
ハービィさんは一瞬だけ怯んだのち、沈鬱な溜息を吐いた。
「おまえら、俺にギャン泣きされたくなかったら、もうちょい労れ。そんで、そこの色男。おまえも止めろよ」
「色男って……」
「いや、この状況からしたら、そーだろ。ただな……まったく羨ましくないって思えるのは、なんでだろうな?」
「それは、その……個人の価値観だと思いますけど」
ハービィさんは「そーかもしれんけど」と言いながら、兜を脱いで頭を掻いた。
このところはワームすら出ないほど、坑道内は平穏だった。そのため、こうやって気が抜けている護衛兵も増えているって噂だけど……こうして目の前で見ることになるなんて、思いも寄らなかった……なぁ。
僕とハービィさんが、並んで溜息を吐いたとき、僕らの元に一人の護衛兵がやってきた。
二十歳かもう少し上くらいの青年だ。簡素な鎧の魔導器と長剣しか身につけていないから、ファインさんやハービィと同じくらいの戦功しかないみたいだ。
その警護兵の青年は、僕らを見回しながら、躊躇いがちに近寄って来た。
「アウィン・コーナルとレオナシアという魔導器はいますか?」
「あ、アウィン・コーナルは僕です。それで……レオナはそこに」
ファインさんと、文句の小競り合い――言い争いというには、あまりにも子供じみた――をしているレオナに、護衛兵は戸惑いながらも行儀良く視線を逸らした。
きっと、見なかったことにしたんだと思う。
護衛兵は咳払いをしたあと、僕に一枚の用紙を差し出してきた。
「ジョージ大尉から、出頭命令が出ています。時間と日時は、命令書を見て下さい」
「え……なんの用かは、聞いてますか?」
「はい――いいえ。内容は直接、大尉から話をお聞き下さい」
妙に畏まった警護兵は最後に敬礼をすると、踵を返して去って行った。
なんか、真面目な人だったな……。
「どうしたの?」
レオナが近づいて来ると、僕は命令書というのを見せた。
「明日の朝九時に、ジョージ大尉のところへ行かなきゃいけないみたいなんだ。なんか、軍の本体から偉い人がくるみたいで、同席を求むってことみたい」
「大尉のところに? あまり気が乗らないなぁ……イヤな予感っていうの、しない?」
イヤな予感なら、もちろんある。
僕はそう答えてから、ダグラスさんの忠告を思い出していた。
用心はしておいて、損はない。それはレオナも同じ気持ちだったようだ。複雑な表情で、命令書の内容に目を落としていた。
そして――内容を確認し終えた僕らは、同時に溜息を吐いたのだった。
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