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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
消耗品扱いの発掘技師は、魔造少女と世界を救う_アフターストーリー だって女の子だもの ~ レオナ その2
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発掘の仕事が終わった僕は、レオナと一緒に商店の並ぶ通りを歩いていた。
第三坑道が落ち着くまで、僕は第二坑道の手伝いをしている。第三坑道は、軍が主体となって崩れた部分の掘削が続いている。
アイホーントを封印していた、あの巨大な箱を掘り起こすという話だ。
噂では、アイホーントの死骸を再封印するらしいけど……上手くいくのかな?
とはいえ軍の管轄になった以上、僕の出る幕はない。ジョージ大尉あたりから、相談を持ちかけられたら応じるけど……あまり良い思い出がないから、あまり関わりたくないっていうのが本音だけど。
僕とレオナは先ず、《金の砂塵亭》に入った。
店内は、まだ客の姿は少なかった。僕とレオナが二人掛けのテーブルに座ると、店員のダレスさんが近寄って来た。
「いらっさいっと。お、久しぶり。なんにする?」
「じゃあ、パンとスープ……あ、いや。パンと鶏の唐揚げを」
「あたしは、鶏の唐揚げを二つ」
「あいよ。ちょっと待ってな」
店の奥へ行ったダントさんと入れ替わりに、おかみさんが僕らのテーブルへと近づいて来た。
「しばらくぶりじゃないか。最近は自炊を頑張ってるって聞いてたけど、今日はこの辺に用事でもあるのかい?」
「えっと、僕はダグラスさんのところでバイトが」
「あたしは……下着が欲しくて」
「下着? ああ、戦いかなにかで、破れたのかい?」
「あ、いえ……その、まだ持ってなくて」
レオナが返答した途端、店内にいた男性客――みんな発掘技師だ――が、一斉にこちらを向いた。皆一様に、少し鼻の下が……伸びている。
おかみさんといえば、僕に少し釣り上げた目を向けた。
「……アウィン。あんた、今まで下着もなしで過ごさせてたのかい」
「え? いや、その……」
「あ、違うんです。その、水着みたいな補助アーマーが下着代わりだったんですけど、やっぱりちゃんとしたものが欲しくて」
この僕を庇ってくれたレオナの返答に、店内の男性陣は一斉に元の姿勢に戻った。なにを期待してたのか……あまり想像したくないなぁ。
おかみさんは、安心したように息を吐いた。
「ああ、そういうわけかい。納得したよ」
「そういうわけで……あとは、バイト探しですね。下着代とか稼がなくちゃ」
その言葉に、おかみさんは目を丸くしながらレオナを見た。
「あんたが、バイト探し?」
「そうなんです。協力し合うって決めたので、自分の欲しいものくらいは自分で買いたいんです。じゃないと、アウィンがバイトを増やしそうで、心配なので」
「へえ……なるほどねぇ」
おかみさんは腕を組むと、見回すようにレオナの周囲で顔を動かした。
なんだろう――と、僕とレオナが顔を見合わせていると、おかみさんは満足げに頷いた。
「そうだねぇ。なんなら、ここでバイトするかい? 注文とかテーブルの片付けをする仕事だけどさ」
「え――? え? あ、あの……いいんですか?」
「あんたさえ良ければ、だけどね。給料もそんなに高くはないし。看板娘もあたしだけじゃあね」
……看板娘。
おかみさんは、看板娘としては少し恰幅の良い体型だと思うけど……そのあたりは、突っ込まないほうがよさそうだ。
レオナといえば……少し腰を浮かせながら、おかみさんへと笑顔を向けていた。
「あ、あの、お願いしたいです。よろしくお願いします!」
「そりゃ良かった。こっちこそ、よろしく。明日からで――」
おかみさんが微笑んだとき、その背後から半泣きのダントさんが大声でわめいた。
「おかみさん! お、俺クビッすか?」
「あんたね――そんなわけないだろう。忙しい時間帯に、人手が欲しいって思ってたところだしね。丁度良いって思っただけだよ」
溜息を吐きながら、おかみさんは呆れ顔で答えた。
ともあれ、これでバイトが決まったのは時間的にも助かるなぁ。あとは、下着の下見だけど、それはレオナ一人で行くんだろうし。
そうなると、晩ご飯を食べたら別行動になっちゃうな……。
少しの寂しさを覚えながら、僕は注文の品が届くのを待つことにした。
*
「予想はしてたけど、やっぱり地味なのばかりだね」
店内に並んだ商品を眺めながら、レオナが素直な感想を口にした。
しばらく商品棚を順に眺めていたけど、不意に振り返ると、両手に品を僕に見せてきた。
「どっちが似合うと思う?」
「……あの、そんなことを聞かれても」
僕は下着が陳列された場所から背中を向けて、顔を真っ赤にさせていた。
てっきり別行動になると思っていた下着の下見だけど……何故か、僕も同行することになっちゃってた。
まだ街の地理に疎いレオナが、僕に道案内をして欲しいって言ってきたからなんだけど……正直、恥ずかしい上に周囲の目が気になっちゃうよ、これ。
そもそも、女性の下着とかわかんない。
僕はレオナをチラ見しながら、右に持っている水色のものを指さした。少なくとも、左の茶色よりは……良いと思うけど。
レオナは僕の指先を目で追って、右の水色のものを顔の前に上げた。
「やっぱりこっちよね……ねえ、二〇ベリって、どのくらいなの?」
「ええっと……銅貨で二〇枚」
大体、僕が修理屋でやる二日分のバイト代が、そのくらいだ。発掘の給料が、大体……六バロン。銅貨に換算すると、三〇〇ベリだ。
銅貨五〇枚で銀貨一枚換算だから、計算は合ってると思う。
女性用の下着って、高いんだなぁ……。
それでも、手持ちでなんとか支払える額だ。
そう思っていたら、レオナは同じ色の品をもう一つ取り出した。
「二つで四五ベリだって。足りそう?」
「ごめん……少し足りない」
女性用の下着って……上と下とで別なんだ。今まで知らずに済んでいたことだけど……これからは、そういうわけにもいかない。
そうは言っても、流石に女性用の下着ばかり売ってる場所は、やっぱり恥ずかしいなぁ……。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、レオナは「もう少し安いのないかな」と別の棚を探し始めていた。
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