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最終章 女神が告げる死の神託
おまけ その4 スライムについて/ジンが女帝の孫という展開について/短篇『会いたくて』
しおりを挟むおまけ4 スライムについて/ジンが女帝の孫という展開について
/短篇『会いたくて』
●スライムについて
元々のスライムは粘液状、または微細生物や単細胞生物の群生体――です。歴史は浅く、二〇世紀に入ってから。
アメリカの小説から、テーブルトークRPGへ採用され、コンピュータRPGで有名になったという歴史がありますね。
基本的なスライムは知性がなく、捕食のために迷宮や洞窟の内部を這いずり、待ち伏せをする生物です。ほかの生物を捕食――溶かし、同化することで取り込む――することで、成長します。金属も金銀とか一部の素材以外は溶かす――という性質を持ちます。
触れただけで同化が始まり、引き剥がすには燃やすしかない。
この性質により剣などの物理攻撃は、ほぼ効果がありません。斃すためには、魔術や炎、薬物などが必要です。
乾きにも弱く、日光は大敵。
種類としては、アシッド、バブル、ジェリー、ガスなど。
日本だとドラゴンクエストの影響で、ゼリー状で目や口のあるスライムが普及しましたね。
本編では、前者のスライムを採用しています。
粘液状の生物で、火に弱い。
ここからは余談ですが……。
コンピュータRPGでは、ワンダリングモンスターで出現することが多いですが、TRPGでは罠(トラップ)として使われることが多いです。
たとえば……。
マスター「西の通路に入ると、ランタンの火で照らされた壁や床が、油でベタベタになっていることに気づくね。気をつけて歩けば転ばないけど、戦闘になるとペナルティが入るかも。このまま先に進む?」
プレイヤー1「いいよね? 先に進むよ」
マ「それじゃあ30フィートほど進むと、水たまりっぽいのが見えるよ。その先は、ランタンの光で見える範囲だと、10フィートくらいだね。通路の状況は変わらないように見えるけど、油のてかりは薄くなっているように見えるよ」
プ2「水たまりを見てみるけど、なにか気づく?」
マ「そうだね……宝石が見えるよ。ルビーとかエメラルドとか……その一つは少し浮いているね」
プ1「スライムかな? 知識チェックは?」
マ「いいよ。どうぞ」
プ3「成功……」
マ「スライムで間違いないね。それで、対応は?」
プ2「いつものパターンで。油をかけて、火を点ける」
マ「……いいよ。反対意見は……ないね。じゃあ、火を点けると、燃え始めたよ。スライムだけじゃなくって、通路全体が」
プレイヤーズ「へ?」
マ「通路の油にも引火して、パーティーは炎に包まれた。どうするの?」
プ1「逃げるに決まってるじゃん!」
プ2「元来た道を戻るよ」
マ「全員、それでいい? それじゃあ、セービングロールを三回。10フィートおきに一回の勘定ね。失敗で10点ダメージ、成功で半分ね(先に進めば一回ですんだのに)」
プ3(魔法使い)「あ……死んだかも」
――という展開でパーティーを半壊させたのは、今では良い思い出です。
●ジンが女帝の孫という展開について
三章-3で、女帝から「赤子のときに会ったことがある」というのが第一の引き。次の引きは、四章のおまけ5「だめよ、あれ」です。
大きな引きは、その二つですが、もう一つは、二章でジンが砂糖を振りかけたパイを女帝が抵抗なく食べたこと。
普通なら、忌み子が手にした料理には手を付けないか、嫌悪感があって当然なんです。けれど、女帝は躊躇なく食べた。
きっと、孫の手料理が嬉しかったんでしょう。
余談ですが、女帝の息子夫婦は事故で他界。妾の女性は存命ですが、今は帝都から離れています。
●短篇『会いたくて』
破壊神討伐から四ヶ月が経った春、キャッスルツリー領に帝都からの書状が届いた。内容は、帝都からの使者が訪問する日程の通知である。
ステフ――いや、今は仮面を付けたステファニー女伯は、書面の内容を読んだあと、大袈裟なほど、そしてかなり長い溜息を吐いた。
「……また来るの?」
使者が誰かなのか、ステフには容易に想像がついた。
執務室にある手持ちの鐘を鳴らすと、ドアの外から侍女の声がした。
「失礼します」
ドアを開けた若い侍女に、ステフは書状を差し出した。
「また、帝都から使者が来ます。女性用の客室の準備を」
「畏まりました」
侍女が退室するのを眺めながら、ステフは(これはジンに教えないほうがいいかな)と、考えていた。
*
書状が届いてから五日後、帝都からの使者がサンロウフィルに到着した。
領主の屋敷の玄関で、ステファニー女伯は、ダグド卿や使用人らと使者を出迎えた。
黒塗りに銀で装飾の施された馬車の扉が開くと、ステファニー女伯らは一斉に最敬礼をした。
「……皆様、ご苦労様です」
最初に表に出てきたのは、ピンク色のドレスの裾だ。少し長くなった金髪を軽く結い上げ、華奢とは言い難いが、やや小柄な体付き。
皇位継承の第五位である、エトワール・エキシンドルである。
なにかを探すように視線を彷徨わせるエトワールに、頭を上げたステファニー女伯は慇懃な態度を崩さぬまま口を開いた。
「長旅、お疲れ様で御座います。疲れを癒やして頂くため、お茶の準備をして御座います。わたくしが御案内を致します。どうぞ、こちらへ」
「お心遣い感謝いたします。ですが、お茶は必要ございません。女伯の執務室で、お話を致しましょう」
にこやかに微笑むエトワールに、ステファニーは頭を下げてから表情を強ばらせた。
「それで、お兄様はどこですか?」
執務室に入ってステファニーと二人っきりになった途端、エトワールは不満げな顔をした。
執務机に腰を落ち着けたステファニー女伯は、静かに溜息を吐いた。
「ジンなら、迷宮です。次期領主とはいえ、わたくしとジンの住まいは、まだ迷宮ですから。それより今回の訪問は、どのような目的なのでしょうか?」
「お兄様に会いに来ただけです……あ、もしかして。お兄様に、わたくしが来ることは伝えて……」
「――伝えてはおりません。書状には使者の訪問としか書かれておりませんでしたから」
ステフの返答に、エトワールは頬を膨らませた。
「それでも、わたくしが来ると想像ついたはずです。なんで教えなかったんですか?」
「わたくしもジンも、暇をしているわけではありませんから。それに皇女様の訪問は、この四ヶ月で六回目です。公費なんですから、もう少しご自重願います」
ステファニー女伯の反論に、エトワールは不機嫌な顔で黙り込んでしまった。
正論なだけに、これ以上の追求ができなくなったのだ。このあたり、まだまだ口論の経験が足りない。
そんなエトワールを見ながら、ステファニー女伯は溜息を吐いた。
(それだけが理由じゃないんだけど……)
エトワールはジンと会う度に、ことあるごとに身体に触れ、ひっつき、甘えまくる。
ブラコンというには、今まで接点はなかったのだ。これは、あからさまな好意の現れである。
ステフが、エトワールにジンを会わせたくなくなるのも当然かもしれない。
そんなとき、執務室のドアがノックされた。
執務室に入ってきたクレアを見て、エトワールは憮然とした。
「……裏切り者」
「いきなり心外だわね、皇女様? どのみち、あなたは妹なんだから」
「それは……確かに、妾にも妻にもなれませんけど」
膨れっ面のエトワールに、クレアは苦笑いを浮かべつつ、ステファニー女伯へと近寄った。
「ジンが、今日のご飯はどうするのかって」
時刻は昼を過ぎているから、ジンの質問は夕食についてのものだ。
ステファニー女伯が答える前に、エトワールが口を開いた。
「わたくしもお兄様の手作り料理が食べたいです」
エトワールの発言に、ステファニー女伯とクレアは顔を見合わせた。
ステファニーは少し考えてから、手を組む姿勢で机に両肘をついた。
「あの……皇女様? 何日ほど滞在なされる御予定でしょうか?」
「お兄様に、お会いするまでです」
きっぱりと言い切ったエトワールに、ステファニー女伯は胡乱な目を向け、クレアは苦笑いを浮かべた。
エトワールが無事、ジンの手料理を口にすることが出来たか――それは、ステファニーだけが知ることとなる。
完
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本作を読んで頂き、ありがとうございます!
わたなべ ゆたか です。
ウマ娘では今、キャラの無料ガチャ(一回)を開催してるんですが……まさかの星3。
しかし、ダイイチルビー。
どうせならユキノビジンが良かった……と思うのは贅沢ですね。
おまけは……次で最後ですね。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
最後となる次回もよろしくお願いします!
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