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最終章 女神が告げる死の神託

おまけ その3 魔王二柱について/ハーピーについて/短編/短編のおまけ

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 おまけ その3 魔王二柱について/ハーピーについて/短編/短編のおまけ


●魔王二柱について

・モラークス
 元はモラクスという、ソロモン72柱の一柱。伯爵にして総帥(?)。
 文献によって異なりますが、雄牛の頭部を持った人間の姿で現れるという書籍と、男の頭部を持つ雄牛の姿で現れるという書籍があります。
 名はときに、フォライー、もしくはフォラクスと呼ばれることがあるようです。
 魔法の石や薬草の知識を伝え、占星術などの学問を説くといいます。
 
 モロク(モレク)の霊としている文献もあります。
 第一章に出た魔王モロークとモラークスの関係は、この資料を基にしています。


・ゴモリィ
 ソロモン72柱の一柱の公爵、ゴモリ(ゴモリー、グレモリーとも)が元です。
 黄金の冠を被り、ラクダに乗った姿が有名です。未来と過去の知識を持ち、黄金の隠し場所を知るといわれます。
 女性の愛をしる方法を得たい者に召喚される――とあります。

 ゴモリィがヴィーネの槍に執着したのは、知識として槍を調べたかったから。
 複製を作りたいとか、そういうものには興味がない。ただ、調べたかったから、槍を見たかっただけ。
 そんなわけですので、槍が見れなかったゴモリィにとって、あの戦いは「時間の無駄」だったわけですね。
 フリーダムキャラ枠です。


●ハーピーについて
 ギリシャ語で「奪う者」を意味する、嵐や旋風のデーモン。
 奪うというのは人間のことらしく、地上から痕跡を残さずに攫うという意味合いがあるそうです。
 本来のハーピーは、翼のない女性の姿をしているとされてたようです。
 今では有名な女性の顔と胸部を持つ鳥の怪物となったのは、後代のことみたいです。別のバージョンでは、デーモンの姿をしたハーピーもあるようですね。


●短篇 『そんな名前はつかえない』

 俺とステフの子どもが産まれて、少し落ち着いたころ。
 ミーアが子どもを授かったという一報が入った。転移の魔術でジラフ村へと移動した俺とステフは、まっすぐにタイクたちの家へと向かった。
 久しぶりに胴鎧やローブ姿の俺たちを見て、タイクは目を丸くした。


「まさか、祝いを持ってくるなんて」


 村での生活も落ち着いてきたのか、出会った当初よりも表情が穏やかになったタイクが、俺とステフからの籠を受け取って、笑みを浮かべた。
 その隣で、お腹の大きくなったミーアが穏やかに微笑んでいる。


「御領主のお仕事は、お忙しくないんですか?」


「それなら、今はクレアさんにお願いしてるから大丈夫」


 ステフがお気楽に答えると、タイクとミーアは乾いた笑いを浮かべた。
 うん……まあ、そーなるよな。


「クレアさんも大変ですね」


「それは大丈夫だけど……でも、子どもができるの遅かったね。あたしたちより、早いと思ったのに」


「ああ……ウーイがいるからさ」


 ステフの問いに、タイクが頬を掻いた。
 その言葉で、俺は少しだけ状況を察した。ステフも俺と同じことを思ったのか、「あー」って顔をしていた。


「だからウーイが、村の女の子の家で機織りを教えて貰ってるときに――」


「ちょっと、タイク……」


 細かい説明をしかけたタイクの横腹を、ミーアが肘で突いた。まあ正直、そういうのを教えられてもって感じだから……止めてくれて良かった。
 タイクはバツが悪そうに頭を掻いてから、俺とステフを見た。


「丁度いいから頼みたいんだけど……名付け親になってくれるか?」


 タイクの願いに、俺とステフはチラッと視線を交錯させた。
 俺は少し考えて、タイクに告げた。


「なんなら、俺の名前使ってくれていいけど」


「男の子の名前ってことか?」


「いや……前世で暮らしてた国じゃ、ジンっていうのは女の子の名前にも使われてて」


「嘘を言うな。ジンって日本だったよな? 日本については、ボルテスVとかで勉強したんだからな。少しくらいは知ってるぞ」


 ……ボルテスってなんだっけ? 昔の番組だったかな?


「そんなもんで日本文化のすべてをわかると思うなよ。もっと奥深いからな。たとえば、すべての国民は毎日、ご飯になまこを食べたりだな――」


「いや、それは絶対に嘘だ。なんだっけ、人の上に人を作らず……って福沢なんかとかが言ったとか」


「ああ、それは間違い。嘘情報というか、事実誤認だから訂正しておいてくれ」


 俺の返答にタイクが「へ?」と、虚を突かれた顔をしたとき、ステフが小さく手を挙げた。


「それじゃあ、あたしの名前でもいいよ。ステファニーは前世で暮らしていた国だと、男女ともに使って――」


「おまえら、夫婦して同じような嘘を吐くな!」


 ステフの言葉を遮るように、タイクはわめき声をあげた。


「まったく……なんで、こんなところで似たもの夫婦をやってるんだよ」


 俺とステフが噴き出すように笑っていると、ミーアが困ったような笑顔を浮かべた。


「それでは、お二人のものをもじった名前にさせて貰いますね」


 しまった……纏められてしまった。
 それからは、ステフとミーアが出産や子育ての話をするのを聞きながら、俺たちは穏やかな刻を過ごした。

                                   完

●ボルテスVについて

 おまけのおまけですが。
 ボルテスV(ぶい)は、昔の日本のアニメ、ボルテスⅤ(ファイブ)が元です。ほとんど変わってないですが、そこは気にしないで下さい。
 こちらの作品、フィリピンでは超が付くほどの人気でして。主題歌を歌ってみえる堀江美都子さんは、フィリピンに招かれて国賓並みの扱いを受けたとか。
 日本国内のアーティストや歌手の中で、国賓となり、歌が他国の軍歌にまでなったのは、堀江美都子さんだけだと思います。

 自国の軍歌になった歌手やアーティストの楽曲は、世界的にもまあまあありますが。他国で軍歌になったのは多分、堀江美都子さんだけだと思います。
 偉大なお人です、マジで。

 ちなみに、ボルテスⅤの放送が中断されたから革命が起きた――というのは、wikiでは噂であって真実じゃ無いとあります。

 が。

 マニラの教授さんが、「革命を描く内容は、マルコス政権にとって不都合だった説」と暴力規制説を紹介してる記事もあります。
 そしてフィリピンの人のツイッターで、「当時ボルテスⅤを途中で打ち切られた世代が、マルコス政権を打ち崩した」と呟き、それを「平和的な革命」と仰有っていました。

 革命というと武力によるものをイメージしますが。現地の方々の意見を鑑みると、ボルテスⅤは革命の一要因となった――そう考えた方が、なんか浪漫がありますね。


●「天は人の上に人を作らず――」について

 おまけのおまけ その2です。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」というのは、アメリカの初代大統領、ジョージ・ワシントンの言葉です。

 福沢諭吉の言葉は、天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといえり。ですので、要約すると

「人間は平等って言われてるけど、本当にそうなん?」ですね。これが、学問のススメの冒頭の言葉です。


 福沢諭吉自体、タカ派で右翼な人ですし。
 脱亜論なんて本を書いてますからね。

 学問のススメ自体、「勉強をして平等になろうね」という内容ではなく、「対人、対組織、対国間で平等になるためには、学問を履修し力を付けなければならない」という、ぶっちゃけ富国強兵を説いている本ですし(ざっと読んだ個人の感想です。判断基準には個人差があります)。

 ただ、これが当時流行ったこともあり、明治維新が成功した――という事実もあるわけです。一昔前、歴史コンテンツなんて流行ったときには、「だから一万円なんだ」という意見もありました。

 ちなみに、学問のススメは著作権が切れてまして。探せば無料で見えるのがあった……はず。興味があれば是非。

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本作を読んで頂き、ありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

花粉症で、とうとう目の痒みが「痛い」にレベルアップしました。目を開けることすら、苦痛な一日です。できれば家から出たくない。

おまけも、あと二回くらい……を予定してます。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!
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感想 2

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