教師失格

ひとちゃん

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禁断の恋の発覚

奥さん事情

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「…そうか、バレてしまったのか」

渡辺先生は出張で東京に来ている。

私達は今、丸の内のホテルのバーで飲んでいる。
バーなら落ち着いて話ができるだろう、そう先生は言って予約をしてくれた。

「すみません。私も悪かったのですが…相手の勘の鋭さと、スマホを見られてしまったようで」
「仕方ない…それで、彼氏はなんて言っているんだ?」

…先生もびっくりしちゃうよね、きっと。

「渡辺先生のことが好きでも、真綾を愛すると言っていました」
「…随分と変わった彼氏だな」

そりゃそうだ。
大体、そんなことがバレたら別れを切り出すだろう。

「よっぽどお前のことが好きなのだろう…」

渡辺先生はぐびっとカクテルを飲み込む。

「…渡辺先生、私達どうしましょうか」

沈黙が続いた。
正直、私といて欲しい。
でも、渡辺先生には奥さんがいる。
無理だよね、そんなの。

「お前に言ってなかったよな、俺の話」
「な、なんのことです?」
「奥さんのこと」

まさかの奥さんの話だった。
どうしたのだろうか、とても気になった。

「奥さん…奥さんと俺、今離婚調停中なんだ」
「…!?どういうことですか??」
「奥さん、実は結婚した年から色んな男と不倫していた」

奥さん…そんな人だったんだ。
渡辺先生の奥さんってきっと真面目で、家庭的な人で…そんな人だと思っていた。

「俺はそれを知らんぷりしていた。だけど、あまりにも家に帰ってこなくなってさ」
「は、はい…」
「家事も全て俺任せ。流石に疲れたんだ、家庭のことも、奥さんが不倫していることも」

渡辺先生はため息をついた。

「それで、半年前から離婚調停中だった。結局、俺もお前と不倫しちゃったけどな」 
「渡辺先生……」

そんなことがあったなんて、思いもよらなかった。

「だから、離婚したら俺はお前と正式に付き合いたいと思っている」

いつもの真剣な瞳で私を見つめた。

「ただ、お前の彼氏がそんなふうに言うとは思ってもいなかった。真綾のこと…相当愛してるみたいだな」

少し寂しげな顔をして、渡辺先生はカクテルを再注文した。

「真綾、どうするかはお前が決めることになる。俺はお前のことが好きだ。できることなら付き合いたい」
「渡辺先生…」

渡辺先生は私の手を取り、握りしめた。

「お前次第なんだ。深く考えて欲しい」
 
私は…私は今、渡辺先生のことが好きになってしまっている。
できるものなら、渡辺先生と何処かへ行ってしまいたい。
でも凌河は…?私に変わらない愛を伝えている凌河に申し訳なさと苦しさが重なる。

「私は……」

黙り込んでいると、渡辺先生は突然立ち上がった。

「なぁ、今から都庁行ってみないか?」
「…へ?」

突然だった。
なぜ都庁?疑問だった。

「気晴らしに夜景でも見よう。連れてってやる」

渡辺先生はバーでチェックし、私を連れてタクシーで都庁へ向かった。


「都庁、夜景凄い綺麗なんだ」
「そうなんですか…初めて聞きました」 
「大学進学で勉強が捗らなかった学生時代に一度両親に連れてもらったことがある。夜景はなんだか気分転換になるからな」

都庁の夜景の見える階に着いた。

確かに、綺麗。
心が浄化されそう…そんな気分だ。

「…綺麗だろ」
「ええ、凄く…」

私はこの光景にうっとりしていた。

渡辺先生…気分転換させてくれたんだ。
本当に優しい。
その優しさが、たまに辛い。

渡辺先生は私の手を取り、繋いだ。

「どちらかを選ぶのはお前次第だ。俺はいつでも…お前を待っている」

…そんなこと言わないで。
もっと好きになっちゃう。

「わ、私……」
「うん」

私はこう言った。



「もう少し…考えてもいいですか?」
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