【R18】ステルス裸いだー M ~全裸でサイクリングは好きだけど、見つかるのが好きなわけじゃない(でもエッチなのは大好き)~

古城ろっく

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第5章 父の地元は温泉街

第17話 コンビニのトイレと公園のトイレ

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 来た時は気づかなかったが、確かに帰り道にコンビニがあった。そこに自転車を止めたシンタは、ポケットに財布が入っていることを確認して歩き出す。
「あ、待って」
 みのりが彼を呼び止めた。
「どうした?やっぱり心細いか?」
 今の彼女は、全裸に限りなく近い格好である。学校指定のニットベストとリボンは身に着けているが、逆に言えばそれ以外は何も身にまとっていない。下着すらも、だ。
 自転車の荷台から降りて、裸足で駐車場のアスファルトを踏みしめたみのりは、もじもじとしていた。見つかるのが怖いのかと思ったら、そうではない。
「私も、コンビニに入って良い?」
「え?いや、良いわけないだろ。そんな格好だぞ。買い物なら俺が代わりに買ってきてやるから、何でも言えよ」
「ち、違うの。シン兄ちゃんじゃ代わりにならない用事なの」
「なんだよそれ?」
 シンタが聞き返すと、みのりは股間に両手を当てた。右手は前から、ぷっくりと膨らんで赤くなった霜焼けクリトリスを隠す。左手は後ろから、小さなお尻の割れ目を隠すようにしていた。
 そして、彼女は恥ずかしそうにつぶやく。
「と、トイレ……」

 寒空の下、風に吹かれながらエッチを繰り返したみのりは、ずっとおしっこを我慢していた。さらに追い打ちをかけるのが、お尻の穴に注がれた温泉浣腸。シンタがたっぷり注いだおしっこは、お尻の穴から少しずつ漏れてきている。
 とどめを刺したのは、膣内に詰め込んだシンタのウンコである。入れた時は硬かったそれが、表面だけは溶けだしてヌルヌルになり、滑りやすくなってしまっている。みのりは落とさないように膣を締めていたが、それも限界だ。
「お、おトイレ行きたい。ううう」
 ついにぴょんぴょんと飛び跳ねる。そのたびにお腹の中のいろんなものがシェイクされて、脳みそが壊れそうだ。
「わ、分かった。それじゃあトイレまで行っていいぞ。でもせめて顔くらい隠せ。監視カメラに見つかる」
「顔を隠すものなんか無いよ」
「俺のマフラー貸してやるから。ほら」
 ふわっ、と、ウールのマフラーがみのりの首に巻かれる。これで顔の下半分くらいは隠せるだろう。
「あ、なんか今の、まるでドラマの恋人みたい」
「意外と余裕だな」
「あ、も、漏れちゃう漏れちゃう。先に行ってるね」
 みのりはぱたぱたと、単独でコンビニへ向かう。
「やれやれ」
 あまり知り合いだと思われたくないシンタは、みのりがトイレに入ってから入店することにした。



 自動ドアが開き、チープな電子音が店内に響く。チープと言っても、まったく不快感はない。お客様を歓迎するための音だ。
 しかし、この時間にちょうど棚出しをしていた女性店員は、
「いらっしゃいま――きゃああ!?」
 ドアをくぐってやってきた客の姿を見て、歓迎の言葉ではなく悲鳴を口に出した。
「お、お客様。どうかなさいましたか?事件ですか?警察をお呼びしましょうか?」
 全裸に近い格好の、卑猥な落書きだらけの女子高生。そんなものが堂々と店に来たら、何かの被害にあったと考えるのが自然なのかもしれない。
 しかし、みのりは当然のように首を振る。
「違うんです。その……これは私のオシャレです」
「お、おしゃれ?」
「はい。こういうファッションなんです。気にしないでください。学生服みたいで可愛いでしょ?」
 普通に考えればそんなわけない。みのりだって感性はぶっ飛んでいるしド変態で間違いないが、いくら何でも常識まで置き忘れたわけではない。
 なので、めちゃくちゃ恥ずかしい。
(うわー。寄りにも寄って店員さんが女性だったよぉ。これ、私の存在自体がセクハラじゃん。もし性的にトラウマになったらごめんなさい、店員さん)
 男性ならまだ、この状況を喜んでくれたり、別な形で歓迎してくれたかもしれない。そしてみのりも、それは覚悟していた。ただ、女性だった場合は話が違う。
 今の自分の姿が、同性から見て嫌悪の対象にしかならないことは、いくら頭のネジが数十ダース足りないド変態でも理解できた。
 なので、
「ね。可愛いお洋服でしょ?」
 と、パワープレイで乗り切るしかない。理屈ではなく、パワーだけで押し切るのだ。そうしないと本当に警察を呼ばれてしまう。
「は、はぁ……」
 店員が呆然としているうちに、さっさとトイレを借りて出ていく計画。今この状況で他に作戦なんか無い。
 ささっと店員をかわして、トイレへと向かう。そこには張り紙があった。

『ご使用の際は従業員に一声おかけください』

 耳まで真っ赤にしたみのりは、羞恥に震える声を必死に張り上げた。もう涙目なんて状態じゃない。目から零れ落ちる涙はとっくに床を濡らしている。
「と、トイレお借りします」
「え?」
「トイレ!お借りしますっ!」
「は、はいどうぞ!……?」
「ありがとうございます。失礼します」
 トイレに入ったみのりを見送った後、女性店員は目をパチパチと見開いて、そのまましばらく放心していた。
(ず、ずいぶん礼儀正しい変態お嬢さんだったわね)
 顔はマフラーでよく見えなかったが、それでもどこか気品のある顔立ちをしていた気がする。卑猥な落書きだらけの身体で、性的に汚らわしい格好だったが、意外と上品なお客様なのかもしれない。
 そんなことを考えていた店員の耳に、トイレから獣の咆哮と、すさまじい音が届けられる

「あああああああっ。あんっ。はぁあん!」

 びちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃっ!びゅーっ。ぶばっ。ぶりりりりりりっ。ぼとん。

「え?えええええ?」
 店員は、ひたすら思考を巡らせたが、何を考えるべきなのかは分からなかった。
 そのうち、シンタが他人のふりをして店にやってくる。
「い、いらっしゃいませー」
 店員は考えるのを辞めた。ただマニュアル通りに喋るだけのロボットとなった彼女の顔には、もはや何の感情も浮かんでいなかった。


 一方、
(こ、怖かった。今までの人生の中で、一番……ううん。三番目くらいに怖かったよーっ!!)
 と、トイレに駆け込んだみのりは、全身を震え上がらせていた。
 最初に彼女の身体から出たのは、彼女のものではない尿だった。それが膀胱や尿道を通らず、肛門から排出される。もちろん、シンタに温泉浣腸してもらった分だ。
 本来なら液体を出すように作られていない肛門は、そのままにすると周囲におしっこを飛び散らせてしまう。なのでなるべく脚を開いて、両手を当てたまま排泄する。脚を閉じるとそっちを伝って流れてしまうので、こんな格好になるのだ。
 手の平に当たったおしっこは、指先から便器へと伝い落ちる。目の前にある『トイレは綺麗に使いましょう』という張り紙に従って、必要以上に汚さないよう、細心の注意を払う。
「ふぐっ。ふううんっ。あ、ああっ」
 次に排泄するのは、シンタのウンコである。こちらはおまんこに入れてきてしまったので、指で丁寧にほじくるしかない。
 コロコロと固い部分は、割と簡単に掻き出せた。残っているのは精子と混ざってトロトロになってしまった部分だ。下痢のように液状なわけではなく、ゼリー状の精液や膣液と混ざってジェル状になったウンコ。それは指だけでは出し切れない。

 くちゅ、くちゅ……

 まるでオナニーをしているような形になってしまったが、本人はいたって真面目にウンコを出している。両手の指を突っ込んで、必死になって膣をいじる美少女。その綺麗に剃られた恥丘はウンコまみれだ。指も、お腹も、内ももも茶色に染まる。
 非常にマニアックなオナニーにも見えるかもしれないが、誤解の無いよう再三にわたって申し上げる。これは……
「あん。あ、はぁあん。んっ」
 非常にマニアックなオナニーである。それ以外の何事でもない。どうして気持ちよさそうにしているんだこの女。それは誰にも分からない。
「あっ……はぁ――はぁ――っ」
 やがて安らかな表情を浮かべたみのりは、静かに潮を吹いてイってしまった。その無色透明な潮吹きは、やがてほんのりと黄色く変わっていく。
 小刻みな痙攣に合わせた潮吹きから、ゆったりとした呼吸に合わせた放尿へ切り替わる。その瞬間はまるで、長い夜の空に朝日が青く差し込むように、ただ綺麗だった。
 ちなみにこの三人称視点から地の文章として実況しているわたくし、そろそろ自分で何を書いているのか分からなくなっている。読者の皆様にはご不便をおかけします。

(よかったー。トイレ、汚れてなかった)
 全ての用を足した後、股間を拭いたみのりは、その紙も便器に投じる。いろいろ出された洋式便所だが、このくらいでは詰まったりしない。
(やっぱりおトイレって凄いなあ。私も、いろんなものを受け入れられるよう、もっともっと頑張ろう)
 そう決意した彼女は、そっと個室を出る。念入りに手を洗って、再び売り場へと戻ると、
「あ、シン……えっと、お兄さん」
 シンタを見つけて、手を振りながら駆け寄る。お互いに名前を知られるのは嫌なので、ここは適当に呼び合うのがベターだろう。
「よう。トイレは終わったか?」
 本音を言えば他人のふりをしたかったシンタだが、呼びかけられては仕方ない。店に入る前にもっとちゃんと打ち合わせをしておけばよかったと後悔するばかりだ。
「どれ買うんだっけ?」
「私、スーパーカップのバニラ」
「そうだったな。俺はストロベリーにしよう」
 二人で選んだアイスを、二人でレジへと持って行く。
「まだドキドキしてる?」
「っていうより、今更になって余計にドキドキしてきたよ。そこらじゅうの監視カメラにも映っちゃってるし……ふにゃぁああ」
「大丈夫だよ。顔は隠しているし、背中の落書きだってニットベストでギリギリ見えないって」
 卑猥な単語が並ぶヘナタトゥ。背中に個人情報がガッツリ書いてあるから困りものである。


 店員は、不思議な気持ちになっていた。
(あの子……あんな彼氏さんがいたんだ。お兄さんって呼んでたけど、年上なのかな?もしかして本当にお兄さん?)
 半裸で買い物を楽しむ少女と、それに付き添う優しそうな男性に、どうしても視線が向かってしまう。
 ときどき大きく脚を開いたり、わざとニットベストを開いたりする彼女は――
(可愛い、かも……)
 女性の立場から見ても、そう見えた。不思議な事である。
「袋は要りますか?」
「はい。お願いします」
「合計で283円になります」
 いつものマニュアルに従ってこなす仕事も、いつもと違って感じる。お客様が変態だからだろう。
 彼女はただ普通に買い物をしている演技に必死だった。必死で演技をしていると解ってしまう。何しろ、鼻や耳まで真っ赤にしたまま、涙と鼻水を流しながら、それでも笑顔なのだ。
「あ、あのっ。1円玉、あります。たしかここに……」
 あるわけのない1円玉を探すふりをしながら、みのりはベストを開いた。存在しない内ポケットを探るようにして、放り出した乳房を揺らして見せる。
「ああ、ごめんなさい。ありませんでした」
「それでは、300円からお預かりします。17円のお返しと、レシートです」
 彼女はそれを受け取ると、お釣りとレシートを商品の袋へと入れて去っていく。
「あ、あの……」
「ひぅっ!?」
 店員は、ついみのりを呼び止めてしまった。逃げられると思っていた彼女は、びくっと肩を跳ね上げる。素足でのご来店なので、踵がぴょんと跳ね上がったのも見えた。
 その格好で外に出るのは寒いだろう。雪が積もった外を歩くのは、足の裏も冷たいだろう。いろいろ言いたかったが、
「またのご来店を、お待ちしております」
「え?」
 この変態は、店内で何らかの迷惑行為をしたわけでも、商品を盗んだわけでも、従業員を脅かしたわけでもない。
 だから、店員は心に決めていた。この件について、警察などは呼ばない。ただ、この可愛らしい変態のお客様を、また笑顔で迎えよう、と。
「はい。きっとまた――」
 最後に彼女が見せた笑顔は、やっぱり可愛かった。



 夜の公園のベンチで、シンタとみのりはアイスをつついていた。
「風呂上がりのアイスって、やっぱ美味いな」
「うん。全裸で食べると美味しいね」
「全裸なのはみのりだけだけどな。つーか何でベストまで脱いでんだよ」
「えっと……コンビニで店員さんに見られた時、気持ちよくて火照ってきちゃったから」
「そういうもんかねー。うわっ。冷たっ!?」
 みのりの胸に触ってみると、とても冷たい。まるで氷のようだ。
「えへへー。シン兄ちゃんの手。火傷しそうなくらい温かい」
「逆だ。お前の身体が冷えてんだよ」
 木製のベンチは、少しささくれ立っていて、素肌にチクチクと当たる。それがまた、少しだけ気持ちいい。鉄製のベンチじゃなくて良かった。あれは真冬に裸で座ると、凍ってくっついてしまうから。
「ねえ、シン兄ちゃん。この後、帰る前にお願いがあるんだけど、いい?」
「ああ、何だ?」
「トイレに行きたいんだ」
「またか?腹でも冷やしたんじゃないだろうな」
「そ、そうじゃないの。おしっこはもう出たから、そういうのじゃないの」
「?」
 困惑するシンタの手を取って、みのりは歩き出す。
「トイレ掃除、手伝ってほしい」
 お腹のトイレマークを指さしながら、彼女はにこやかに男子トイレへ向かう。

 この公園の男子トイレは、小便器が3個と、洋式の個室が2部屋。しかしみのりは、それら便器には目もくれずに歩く。
(鍵がかかってませんように)
 開けたのは、個室のさらに奥。用具入れだ。バケツやモップ。それから水道設備一式がある。なかなか立派なものだ。
「なあ、トイレ掃除ってどういうことだよ?」
「あ、トイレって言うのは、私のおまんこだよ」
「え?」
「いやー、シン兄ちゃんのウンコ、ずっとおまんこに入れてたでしょ?コンビニで出してきたんだけど、完全には取り切れなくてね」
 水道にホースをつないだ彼女は、水が出ることを確認してから、そのホースの先端を自分に向ける。身体に水をかけながら、大きなシンクに身体を沈めた。
 お尻からシンクに入ると、手足を投げ出すような姿勢になってしまう。すっぽりお尻がハマったような姿勢だ。大事なところは丸出しである。
「そこにトイレ掃除用のブラシがあるでしょ。それでおまんこ洗って」
「ま、マジかよ……」
「もー、シン兄ちゃんのウンコで汚れたんだからね。まあ、勝手に入れちゃったのは私なんだけどさ。お願い。手伝って」
「いや、俺が心配してんのは、そこじゃないんだけどな」
 そもそも、トイレ掃除用のブラシなんかを女性器に突っ込んでいいものか……などという衛生観念は、もう気にする必要はない。何しろ排泄物をそのまま突っ込んでしまった後だ。
 なので、
「……痛かったら言えよ」
 とだけ注意する。それすら、まともに聞き入れてもらえるか分からないが。

 今回使用するのは、円筒形のワイヤーブラシ。長めの柄がついていて、周囲がごそっとナイロン製の毛で覆われた商品だ。トイレ掃除のほかに、パイプなどの詰まりを取り除いたり、便器の奥の汚れも落とせる優れものである。
 それを、みのりの大事な(はずの)ところに挿入する。
「んんんっ」
 少なくとも、痛そうではない。気持ちよさそうな嬌声が上がる。
「チクチクしないのか?」
「するけど、そんなに固い感じじゃなくて、するするーって、しなやかに入ってくる感じ。細かい所まで洗ってもらえて、すっごい嬉しい」
「こんなの突っ込まれて喜ぶ女がいるとは思わなかったよ。しかも恥ずかしながら親戚に」
「ねー。末代までの恥だよねー」
 何が面白いのか、みのりはケラケラと笑いながらホースを手渡して来る。
「これですすいで」
「すすぎもやるのか。いや、確かにそうしないと綺麗にならないよな。ほれ」
 この真冬の時期、公園の水道設備が止まっていないのは奇跡に近いだろう。場所によってはトイレそのものが閉鎖される。凍結を防ぐための、雪国の知恵だ。
 水は驚くほど冷たく、指にかかっただけでもかじかむ。こんなものを好んで浴びようだなんて、いよいよみのりとの付き合い方を考えなきゃならない。
「入れるぞ」
「うん。……ふ、ふにゃあぁぁあぁあぁああっあっあっあん」
「何だよその声」
「寒くて、冷たくて、ゾワゾワして、ヒリヒリするんだよぉ。気持ちいいよ。シン兄ちゃんもやる?」
「いや、俺に穴ないし」
「そっかぁ。それもそうだね」
 みのりは納得したようだが、根本的に穴があるとか無いとかの問題でもない話だろう。大概の女性はこんな扱いお断りである。

 ホースを突っ込んで、膣内を水で流す。するとその冷たさから、彼女の割れ目はキュッと縮こまった。
 また強引にブラシを突っ込むと、押し返すような抵抗感がある。それでもみのりが奥まで入れてと懇願するので、無理やり入れるしかない。
 入れたら、ブラシを前後させたり、回転させたりして、隈なく掃除をする。あらかたの汚れを浮かせたら、ガバガバになった穴に、またホースを挿入する。その繰り返しだ。
「あー、まだちょっと汚れてるな。もう一回入れるぞ」
「うん。んっ」
「気持ちいいか?」
「うん。ちょうどいい感じ」
「何がどう丁度いいのか分からんけど、ちょっと回してみるぞ。くるくる。わしゃわしゃ」
「にゃふふっ。シン兄ちゃんがオノマトペ使うの、ちょっと意外」
「いいだろ別に。……じゃあ、次は汚れを掻き出していくぞ。前後に、――しゅっ、しゅっ」
「あっ。イク」
「みのり。気持ちいいのは分かるけど、動くと危ない」
「はぁい。んんっ。動かないでイクの、難しい」
「じゃ、流すからホースをくれ」
「はい」
「じゃあ、突っ込んでくぞ。汚い水がドバドバ出るからな」
「もー、そんな言い方しないでよ。あとイったばっかだからやさしくふわあああん」
「よーし、これで完成だ」
「えー……あのさ。もう一回、ダメ?」
「仕方ないな。もう一回だぞ」
「うん」
「じゃあ、ホースは返すから、ブラシが終わるまで、好きなだけ水浴びしてていいぞ」
「うん。シン兄ちゃん大好き」
 唇を震わせながら無邪気に笑うみのりを見て、シンタは思った。
(寒そう)
 と、割とシンプルに。

「綺麗になった?」
「ああ、ブラシがな」
「ブラシ?」
「さっき見た時は割と汚れてたのに、今これ新品同様だぞ。ピッカピカだ」
 相互に作用して、片方の汚れが落ちるともう片方の汚れも落ちる場合は多々ある。今回はブラシの毛並みと、みのりの中のザラザラした凹凸が、お互いを磨いた結果なのだろう。



 外はまだ暗い。というより、一日で最も暗い時間帯になっているかもしれない。夜明けまでまだ遠く、残留する光すら消えた頃だ。
 しかし、太陽よりも時計を重視する民間人は、そろそろ起きて活動を始めるようだった。遠くから聞こえるのは郵便配達のバイクの音。早朝出勤の人たちも、そろそろ車のエンジンを温め始める。遠くには除雪車の音も聞こえた。
「さて、さっさと帰らないと、みのりが変態だって町中にバレるぞ」
「うーん」
 みのりはこの危機的状況を、ぼんやりと俯瞰していた。
 ときどきあるのだ。自分が自分でない感覚というか、現実世界が現実味を帯びないような時間。
 いまここにいる自分が、どこかの物語のヒロインであるかのように錯覚してしまう。どんなに恥ずかしくなっても、どれほど虐められても、怖くても、痛くても、気にならない。そんな時が。
「もう、さっきのコンビニでとぉっても恥ずかしい恰好しちゃったし、別にいいんじゃないかな。見られても……」
「いや、それじゃあ危ないというか、バレたら大変なことになるぞ」
「それなら、バレる前に逃げればいいんでしょ?」
 そう言ったみのりは、全裸のままシンタの自転車に跨る。後ろの荷台ではなく、サドルに、だ。
 自分の着ていたベストをカゴに入れると、
「シン兄ちゃん、後ろに乗って。帰りは私が運転するから」
 と、シンタに促した。
「おいおい。俺が後ろかよ」
「うん。私の背中には個人情報も書かれてるから、ちゃんと抱き着いて隠してね」
「それより身体。おまんことか、おっぱいとか」
「おまんこはサドルで隠れるよ。おっぱいは――シン兄ちゃんが両手で隠して」
 楽しいサイクリングは、どうやらまだまだ続くようだ。
「こうか?」
「えっと……乳首は覆い隠すんじゃなくて、つまんで持ち上げるみたいにすると、恥ずかしくて気持ちいいよ」
「これでいいのか?」
「うん。ぜんぜん隠れてなくて、とっても良い感じ。それじゃ、家までサイクリングしてみよう」

 まるで恋人同士のようなサイクリングは、とっても気持ちよかった。
 まあ、後に数人に見つかり、街で都市伝説として扱われることになるのだが、それは新学期が始まってからの話である。
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