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第5章 父の地元は温泉街

第14話 旅の恥はかき捨て

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 新年をどこで迎えるのか?
 いろいろな答えがあると思うが、森泉家では親戚の家で新年を迎える。父の実家だ。
「今年も楽しみだな」
「う、うん」
 由緒ある造船所の社長をしている父だが、別に元が造船所の生まれなわけでも、船大工の家系に生まれたわけでもない。実家は内陸の雪深い地域にあり、そこから船大工に弟子入りして今の町に引っ越したのだそうだ。
 ――と、そんな話はさておき、
 実家に向かう新幹線の中で、みのりはドキドキしながら座っていた。
(き、気づかれてない、よね……)
 彼女の体には、まだ色濃く落書きが残っている。数日前にカズマに書いてもらった隠語のヘナタトゥだ。肌に色素が沈着して、あと1週間ほどは残りそうである。
 そんな彼女は、今日は冬らしい装いで新幹線に乗っていた。首元にファーが付いたダウンジャケットに、タイトなジーンズ。肌の露出はほとんどなく、落書きに気づかれるはずがない。
 ただ……
(こ、こんなに人が多い所に、こんな身体でいるの、初めてだよぉ。お父さんも隣にいるし)
 新幹線という場所がら、大人しく座っていれば注目されること自体がない――が、やはり気になることは気になるのだろう。
 ほんの1時間にも満たない電車旅だったが、その間にみのりの緊張がほぐれることは無かった。



「ふぅ……疲れたぁ」
 電車とバスを乗り継いで実家までくると、当然ながら親戚一同からの「大きくなったね」攻撃が容赦なく来る。純粋にちやほやされるようなものから、若干セクハラまがいのものまで多数だ。
 お年玉の稼ぎ時ではあるので大人しくしているのだが、本音としては気を遣うし疲れる。妙にイライラするのは、生理が近いからというだけではないだろう。
(あとはもう寝ちゃおう。お風呂は――明日でいいや)
 親戚からあてがわれた部屋に戻ってきたことで、みのりはようやく一人になれた。もともと人見知りしがちな性格も相まって、この一人きりの時間がとても大切に感じられる。
(一応、パジャマに着替えて……)
 と、服を脱ぎ、ブラを外した。一日ずっと肩をすぼめていたせいで圧迫された乳房が、ようやく解放される。
(――こんな姿、見られたら大変だね)
 沈着した落書きは、少しずつ薄くなっていたが、まだまだ目立つ。気のせいかもしれないが、興奮して火照るほど色が濃く見えるのだった。まるで、エッチな気持ちになったときにだけ浮かび上がる淫紋のようだ。

 ――とんとん、

「あ、待って」
 突然のノックに、みのりは驚きながらもすぐ返事をした。ただ、それを待たずに扉は開かれる。
「みのりちゃーん。風呂の話なんだけ、ど……」
 ノックする文化は持っていたのだが、ノックした後に返事を待つという常識が欠けていた青年が顔を出した。
「し、シン兄ちゃん……」
 彼は、みのりの従兄に当たる人物、シンタだった。みのりより6歳ほど上だったので、今年で22歳になるはずだ。
 一人っ子のみのりは、彼を『シン兄ちゃん』と呼んで慕っていた。あまり年上の男子と遊ぶ機会が無いみのりにとって、唯一のお兄ちゃんのような存在だった。
 その彼が、今、
(み、見られ……)
 着替え中の自分の身体を、ばっちり見ている。
(え?ええっ?)
 パンツはまだ脱いでいない。ブラを外して放り出した胸も、とっさに両手で隠した。
 問題は、体中に書かれた落書きである。『セックスしたい』と全力でアピールするその落書きは、お腹や手足にもびっしり並んでいる。
「あ、えっと――何も見てないから」
 シンタが何事も無かったように、そっと扉を閉じようとした。その瞬間、
「待って!」
 みのりが抱き着いて、彼を呼び止めた。



「――って、ことだったの」
 みのりは正直に、今までの事を話した。
 中学2年生の時に、クラスメイトの男子5人とセックスしたこと。何度も野外でセックスしているうちに、露出趣味に目覚めたこと。実は小さい頃から、そういう気持ちが少しだけあったことも。
「シン兄ちゃん。小さい頃、一緒にお風呂に入ったよね」
「ああ、あったな」
「その時も、ちょっとドキドキしてたんだ。おちんちん触らせてくれるの、シン兄ちゃんだけだったから」
「そういや、やたら触ってたな。ただ珍しがってるだけだろうと思ってたよ」
 もう10年も前の話。シンタが12歳で、みのりが6歳の頃の話だ。
 その頃から毎年こうして、一緒に遊んでいたシンタ。それが今、自分の成長した裸を見て、恥ずかしそうに顔を反らしている。それが何だか、
(楽しい)
 みのりはそう感じていた。
(わざと服を着ないまま、普通におしゃべりしているけど……ふふっ。シン兄ちゃん、やっぱり私の裸が気になるんだー)
 引かれるんじゃないか。嫌われるんじゃないか。そんな気持ちは、どこかに吹き飛んでいた。シン兄ちゃんはシン兄ちゃんなのである。彼が自分の事を嫌っていないのは、こうして一緒にいるだけで分かる。
「ねえ。シン兄ちゃん」
「ん?な、なんだ?」
「せっかくだから、私とセックスしてみない?」
「ぶふぉっ!?」
 突然の申し出に驚いたシンタは、下を向いて咳き込んだ。からかわれているのかと思った彼は、なるべくみのりを見ないようにする。座布団に座っている自分の膝を見て、呼吸が整うのを待った。
 と、その膝の上に、みのりが先ほどまで身に着けていたパンツが置かれた。
「え?」
「見て。シン兄ちゃん。みのりのおまんこだよ」
 顔を上げたシンタの目の前に、ぴったりと閉じたすじ一本が見えた。綺麗に剃られたツルツルの恥丘。その下の方に少しだけ見える、ぷっくりとした小陰唇。上の方を見れば、あざ黒い男子トイレのマーク。
「えっと、それともシン兄ちゃん、エッチな女の子は嫌いかな?」
「いや、そんな事ない。けどさ」
 シンタは簡単に誘いに乗ってこなかった。やはり親戚同士で、幼馴染である。やりにくい気分はあるのだろう。
(そっか。そうだよね……)
 みのりとしては、残念な事だった。

「あ、そう言えば、シン兄ちゃん。私に何か用事があったんじゃないの?」
「ああ、それな。風呂の話だったんだけどさ。うちの風呂、まだ沸いてなくてさ。もしよかったら沸かすけど、どうするか聞きに来たんだ」
「あー」
 みのりもちょうど、もう今日はお風呂に入らないで寝るかと思っていたところである。
「えっと、私は別に……あ、シン兄ちゃんは?」
「んー、俺は温泉にでも行こうと思ってたんだ」
「え?この時間に?」
 実はこの町、地元ではそこそこ知られる温泉地である。駅前には案内板が設置され、旅館やホテルが立ち並ぶ通りも存在する。今日集まった親戚の中には、そっちに泊まる人たちも多い。
 とはいえ、もう夜中0:00近い時間である。もうそろそろ日帰り客を受け入れる温泉もないだろう。と思っていたのだが、
「いやいや。それがあるんだよ。天然でずっと湧いてて、無料で24時間いつでも入れるところが」
「え?それって、どこ?」
「温泉旅館が並ぶ通りがあるだろう。その近くの川さ。もう川のほぼ全体が温泉なわけだよ。特に管理人もいないから入り放題」
 それを聞いたみのりは、すぐにピンときた。
 幼い頃の記憶だが、確か父に連れられて、シンタと一緒に行ったことがある。

「ねぇ。そこ、子供の頃に一緒に行ったところ?」
「あ、そうそう。覚えてたのか」
「何となく……でも、遠かったんじゃない?」
「ああ、ちょっとな。でも自転車で行けば、案外近いもんだよ」
「ほんと?私、自転車大好き」
「そうなのか。俺も最近、自転車好きになってきちゃってさ。たまに遠出とか楽しいよな」
 シンタが少しだけ笑った。目の前に全裸の少女がいるという緊張が、少しだけほぐれたのだろう。
 こうして話をしていると分かる。みのりは子供の頃から、中身的には何も変わってない。10年前まで一緒にお風呂に入ったり、ちんちんを触られたりした、あの頃の可愛い親戚だ。
「――ところでさ。みのり?」
「え?なに?」
「もしかして、ついて来る気じゃないだろうな?」
 当然ながら、野外で混浴の無料開放温泉だ。年頃の女の子を――まして今の、身体に落書きだらけの彼女を連れて行くわけにはいかない。もし見つかってしまったら、何をされても本人の同意があったとしか思えない格好だ。
 しかし、
「いいでしょ?シン兄ちゃん」
 こういう時、断れないのもシンタの性格だった。



 シンタの自転車は、特徴が無いようなママチャリだ。後ろには荷台があるが、ほとんど使っていない。
 そのやや錆びついた、硬くて冷たい荷台に、
「失礼しまーす」
 柔らかくて暖かい、少女のお尻が乗せられた。
「えへへへ。二人乗りなんて、おまわりさんに見つかったら逮捕されちゃうね」
「心配するところはそこじゃないだろ。別な罪状で逮捕されるっての」
 今日のみのりは、真っ白なニットベストだけを着用し、学校の制服に使われるようなリボンを首に着けただけの恰好だった。つまり、大事なところは露出し放題だ。
「夜中で人通りが少ないとはいえ、さすがに見つかるぞ」
「……うん。ちょっとだけ、見つかってみたかったんだ。ほら、私って露出狂だから」
 AVなどで見る、女子高生らしい記号を詰め込んだ露出衣装。すぐに脱げて温泉に入りやすく、また背中を隠せるこの服は、みのりにとって都合が良かった。
(シン兄ちゃんになら良いけど、他の人に背中を見られるわけにはいかないもんね)
 卑猥な落書きだらけの身体。その背中には、みのりの本名と在籍する学校の名前。それからスマホの番号が書かれている。
「見つかったらどうすんだよ。その服。その身体」
「シン兄ちゃんが守ってくれるでしょ?」
「俺に出来る範囲とそうでない範囲があるぞ」
「大丈夫。シン兄ちゃんのこと、信じてるから」
 そう言われたシンタは、はーっ、と深いため息を吐くしかなかった。それ以上は何も言うまい。
(まあ、どうせこの時間なんて、こんな田舎に誰もいないか)
 年末とはいえ、深夜に遊びに行くところなどあまりない。ならば大通りを避ければ、まず車とすれ違う事さえ無いだろう。自転車や歩行者と出会う事はなおさら無い。

 背中に、ぎゅっと抱きしめられる感触がずっとある。着ているコート越しでも分かる柔らかさと、小刻みな震え。
「大丈夫か?みのり」
「う、うん。大丈夫」
「寒いのか?」
「あ、ううん。違うの。ただ、知らない街を裸で出かけるのって、ちょっと怖くて」
「だから言ったじゃん」
「あ、嫌なんじゃなくて、その……怖くて楽しいな。って、そういうこと」
 みのりの言うことを、シンタは今ひとつ理解できないままでいた。



「と、到着したぞ」
「わぁ!」
 うっすらとした記憶にはあっても、実際に来たのは久しぶりな温泉。
 正直、ここまでたどり着くのに大きなトラブルが発生しなかったのは奇跡だろう。およそ3キロメートルほどの道のりを、15分もかけて来た。そのあいだに誰とも遭遇しなかったのは幸運だ。
「それじゃあ、入っていいよね」
「ああ。いいけど服は――最初から着てなかったな」
「うん」
 見た感じはただの川にしか見えない場所だ。街灯のような照明も今は消えている。通常の利用時間を過ぎてしまったということだろうか。
 ただでさえ暗いうえに、湯気が立ち込めていて、ほとんど何も見えない。
(これなら、近くを人が通っても、私が裸でお風呂に入ってるの、気づかれないよね)
 みのりは着ていたベストと、首に巻いていたリボンだけを外すと、ママチャリの籠に入れた。
(あ、でも、逆にこっちからも気づきにくいのか。……相手がこっちを見てても、私が見られてることに気づかないパターンも考えられるんだよね。うう、気を付けないと)
 そう思うと、とたんに緊張する。
 足がすくんで、うまく歩けなくなる。一歩踏み込むたびに揺れる胸も、足を前に出すたびに風の当たり方が変わる股間も、全部が恥ずかしくなってきた。
 ごつごつした岩の感触が、足の裏を刺激する。それを頼りに、ゆっくり、ゆっくりと――
「あ、ちなみにその辺、温泉のせいでヌルヌルするから気を付けてな」
「え?」
 シンタが忠告するタイミングと、みのりがまさに足を滑らせるその瞬間は、同時だった。
「きゃっ!?」
 滑って転んだみのりは、そのまま丸い石の上を滑っていく。一応、安全に配慮してあるのだろう。急斜面ではあっても、尖った石などはない。真冬なので雑草も生えていなかった。

 ざぶーん!

 心の準備も出来ないまま、湯船に突っ込む。
「わ、わぷっ。溺れるっ。おぼれ……あれ?足が付く?」
「そりゃまあ、その辺は天然とはいえ温泉だからな。ちゃんと同じ高さで石が敷き詰められてんだよ」
 水位は足首ほどまでしかない。いや、奥まで行けばもっと深くなるのだが、それでもせいぜい膝上くらいだ。
 川として、きちんと緩やかに流れている。とはいえ、
「あったかい……」
「そりゃ、温泉だからな」
 少しぬるめの、寒い日には入りやすい温度の温かさだ。
「そこは比較的下流で、温度も低い所だな。その先に岩が積んであるだろ。そこが温泉の端っこ。そこから先は急に深くなってるから、出てっちゃダメだぞ」
「うん。でも、どうして深くなってるのを知ってるの?」
「……俺も昔、そっちに行ってみようとして転んだことがあるんだよ」
 シンタもようやく服を脱ぎ終えたらしい。ゆっくりとざぶざぶ入ってくる。こちらは足を滑らせることも無く、誰かが石を積んで作ったらしい階段を歩いて入る。
「あー、温かい」
「うん。それに、ちょっとヌルヌルするね」
「アルカリ泉だからな。肌の表面に溜まった角質が溶けだして、それがヌルヌルするらしいよ」
「あ、そうなんだ。物知りー」
「俺もこの辺のおっさんから聞いただけさ。この町に住んでる人はみんな知ってるよ」
 川の中央の方まで歩いて、そこで肩までゆったり浸かる。この辺は深く、そして岸より温かい。

 シンタは冷静を保つために、必死で普通の態度を取り続けていた。
 まるで同じ学校の男子ときたときのように、平然と会話を続けている。がしかし、
(女の子と会話しながら風呂なんて、そんなの冷静じゃいられないだろ)
 みのりの身体も成長していたが、シンタもまた、子供の頃とは違う。幼少期には気にならなかったことも、今なら気になってしまう。
 そのひとつが、声の感じ方だ。
「どうしたの?シン兄ちゃん」
「い、いや、何でもない」
 彼女は自覚がないのかもしれないが、その声は甘く、色っぽかった。子猫が出すような甘えた声で、それでいて少女が出すには少し大人びた発音。
 ただ普通に聞いているだけなら、何もおかしな意識はしないだろう。でも今はお互いに裸で、屋外の風呂に入っているのだ。
 外の音は、特に聞こえてこない。冬の澄み渡る空気は、その声をなんら反響させず、まっすぐ遠くまで運んでいく。

 ざぱぁ……

 みのりが立ち上がったのが、シルエットで分かった。暗い中でも、白い湯気と遠くの町明かりで、少しだけ明るく感じる。そこに彼女の姿が、黒い影のように映るのだ。
 柔らかく膨らんだ胸と、それを突き出すように反らされた細い肩。きゅっと細くくびれた腰と、そこから膨らむお尻。その女性らしい影が、川の流れに逆らって近づいてくる。

 じゃぷ、じゃぷ、じゃぷん……

 大きな水音を立てて、少しずつその姿が鮮明になっていく。白い肌に、卑猥な落書き。亜麻色の髪に、すっと鼻筋の通った顔立ち。それでいてどこか幼さを見せる柔らかな頬は、温泉のせいか真っ赤に染まっていた。
「ねえ。シン兄ちゃん」
「ど、どうした?」
 少し離れて入っていた時は、聞き取りづらかった声。それが近くで聞くと、湯気に影響されずしっかり聞こえる。
 とっさに目を反らし、なるべくそっちに視線を送らないようにする。……のだが、
「ねえ。どうしてそっちばっかり見てるの?」

 じゃぶじゃぶじゃぶ……

 回り込まれてしまった。
「べ、別に、何でもない」
「ふーん」
 座っているシンタの周りを、みのりがぐるぐると歩き回る。その視線の高さのせいで、シンタの目の前にちょうど、みのりの股間が見えた。
 つるつるに剃り上げられた正面。張りのある柔らかな膨らみを持つお尻。腰骨をうっすらと浮かばせる横から見れば、反対側の内ももまで見える。歩く時の筋肉の動きも詳細に……
「シン兄ちゃん。エッチしよう?」
「え?」
 みのりからの突然の誘いに、ただでさえキャパオーバー寸前だったシンタの脳内は完全にフリーズした。
「えっと、それは……」
「あ、えっとね。私、せっかく一緒にお風呂入ってるんだから、遊びたいな。って思ったの」
「あ、ああ、そうなのか」
「うん。あの、私とセックスするのが嫌なら、触りっこでも、指入れるだけでもいいし……もし私に女の子としての魅力がないなら、普通に男子同士でするような遊びでもいいからさ。遊ぼう?」
 みのりの声は、よく届いている。それでも言っている意味を判断できるほどの冷静さは、彼の中に残っていなかった。
 ぼんやりと沸騰しそうな頭で、必死に考える。
(せ、セックスはダメだよな。親戚同士の一線を越えるし、そもそもゴムなんか持ってないから、妊娠させたら大変だし……でもエロいなぁ。さ、触りたい)
 さぞ変な顔をしていただろうシンタに、みのりがそっと顔を寄せた。ものすごく近くに、彼女の顔がくる。それ以上に、何も身にまとっていない胸も近づいてきた。
(よりによって、なんって恰好で……)
 その左胸には、ご丁寧に『Cカップおっぱい』とヘナタトゥで描かれている。右胸はいわゆる『おまんこマーク』……放射線状の8本線と、それを囲む二重の円形で彩られていた。おかげで右側だけ、乳首まで真っ黒だ。
 その、まるでオッドアイのように左右で色が違う乳首が、視線の先でふらふらと踊る。体中に書かれたヘナタトゥの文字が、『人間やめました』『レイプしてね』『エッチ大好き』と誘ってくる。
「じゃあ、触りっこ、しようか」
 シンタが言うと、みのりはニコッと笑った。その卑猥な落書きだらけの、奴隷みたいな姿と裏腹に、
「うん。しよー」
 とても無邪気に、まるで幼い子供のように笑うのだ。



 もにゅ、もにゅ……
 ちゃぷ、ちゃぷ……

「んっ。んん」
「気持ちいい?」
「うん。シン兄ちゃんの手、おっきくて気持ちいい」
 胸を揉まれたみのりが、より艶めかしい声を出す。いま彼女は、足を伸ばして座っているシンタの膝の上に、跨るようにして膝立ちしていた。
 膝を少し上げると、それがみのりの股間に食い込む。
「ふにゅう……あんっ。シン兄ちゃん、サービス良すぎだよ」
 みのりも負けじと、お湯に両手を突っ込み、シンタの男根を探す。お腹を触りながら、その筋肉の硬さに少し驚きつつも、それを撫でて下に……
「みぃつけた。にゃはははん」
「うっ!」
「あ、ゴメン。痛かった?」
「いや、違うんだ。むしろ……気持ちよかった」
「あ、そうなんだ。よかったぁ」
 風呂で温まって、すっかり伸び切った玉袋。その奥でコロコロと転がる、左右で大きさの違うタマタマ。それらを撫でながら、中央に堂々とそびえたつ棒にたどり着く。みのりの大好きなものだ。
 藻のように湯船に揺蕩う毛を、指先に絡めながら弄っていく。男根の先を手のひらで擦り、すっと引っ張るように指を滑らせる。

「うあっ」

「ふふふふっ。気持ちいい?男の人って、こういうことされるの好きだよね」
「随分と、経験豊富みたいな言い方だな」
「うん。これでも今まで、10人以上の人とエッチしてきたよ。あ、半分くらいは知らない人なんだけどね」
 そう答えながら、みのりは先端を指でくるくると弄んでいる。その細い指が、先端に開いた銃口をなぞった。本来ならいろいろ発射するその切り口が、細い指でこじ開けられるように押される。
「これも結構、評判いいんだよ。男の子って、自分で触る時もこういうことしてるの?」
「いや、してないと思う。……うああ。あ、だから、気持ちいいのかも」
「え?」
「いや、だからさ。慣れてないから、気持ちいいんだよ。俺だったら握って擦るだけだもん」
「あ、そっか。私もその気持ちは分かるかも」
 みのりは膝立ちのまま、もぞもぞと前に出る。向かい合ったシンタの手に、乳房を押し付けるように。
「私も、自分でおっぱい揉むとき、こんなに強く握ったりしないもん」
「あ、そうなのか?ゴメン。痛かった?」
 シンタの大きな手は、みのりの乳房を包み込むように、端から端まで届く。そのまま握りつぶされると、いくら温泉でヌルヌルしていても、お肉の逃げ場がない。
 横にも縦にも潰された乳房に、ごつごつした指が容赦なく食い込んでいく。圧力で破裂しそうな痛みが、胸の奥や乳首に集中していくのだ。
 そのまま揺さぶられたりしたら、今度こそ千切れてしまいそう。一番奥の乳腺まで痛みが伝わるその揉まれ方が、みのりは大好きだった。自分でやろうとしても痛くて途中で止まってしまうし、そもそも手の大きさが足りない。
 だから――
「気持ちいいよ。痛くて、虐められてるみたいで……でも、気持ちいい。もっと強く、握って」
「え?そういうもんなの?」
 よく分からないシンタだったが、みのり本人が言うならそうなんだろう。と考え、再び激しく胸を揉む。乳房の重みが手の平にブルンブルンと伝わり、飛び出してきた乳首まで抑えつけて潰しそうだ。
「んんんんっ!?そ、そう。そんな感じ。そうやって痛くされるの、好きなんだ」
「えっと、ドMってやつ」
「うん。私、多分ドMだからっ、優しくされるより、痛い方が好き」
 みのり自身も動揺しているのだろう。ときどき本気で胸を握ると、そのたびに彼女は男性器を強く握ってきた。これはこれで気持ちいい。
「で、でも、私ね。痛いあとの優しいのも、イっちゃうくらい好き……」
「こ、こう?」
 言われた通り、シンタは突然乳房を離して、乳首を指でくすぐるように撫でた。

「ふ、ふにゃあぁああん!」

 ぷしゅうううう!……ぷしっ、ぷしっ。

 今まで痺れるほど握られていた乳房に、急に解放された涼しさと、血液が回り出す痛みがじんじん響く。
 そんな中で乳首を擦られたりしたらどうなるか。
 ただでさえ苦しさから解放されたばかりの敏感な乳首は、今までと違う種類のくすぐったさを、全身に伝えることになる。
「みのり?」
「ま、待って。いま、イってるから……」
 はぁはぁと荒い息遣いが、耳元で聞こえる。たまに身体が痙攣して揺れるのが、目の前の乳房の揺れ具合で分かる。何より、潮吹きしているのが分かりやすい。シンタの膝にかかる液体が、たまに水面に当たって大きな音を立てる。

 ぴちゃちゃっ。ぴちゃ、ぴちゃ。ちょろろ……

「ご、ごめんなさい。せっかくのお風呂なのに、お湯汚しちゃって、本当にゴメン」
「いや、気にすんなよ。こんなに広いし、それに流れてるからさ」
 と言ってから、シンタは後悔した。
(あ、いや。今のは『みのりの身体から出たものだったら汚くないよ』って言うところだったか。あー……)
 もっとも、目の前で女の子が絶頂を迎えたという、あまりにも衝撃的な光景を目の当たりにしているのだ。何も言えなくなったとしても仕方がない。
「――っと?」
 突然、みのりが体重を預けてきた。シンタの身体に自分の身体を重ねるように、向かい合ったままうつ伏せで寝そべってくる。どこを触っても柔らかい、細い身体。それが温泉よりもずっと熱く、全身に覆いかぶさっている。
「大丈夫か?」
「ううん……ちょっと気持ちよすぎて、疲れちゃった」
「のぼせたんじゃないか?」
「うん。そうかも……」
 のぼせたも何も、先ほどは下半身しかお湯につかっていなかった彼女だが、
「イクとき、いつもそうなんだよね。……我慢しすぎた時とか、急に不意打ちでイク!ってなっちゃったときとか、ドキドキして、身体が熱くなるんだ」
 それと温泉が組み合わさったために、思った以上にのぼせたのだろう。

 湯船から出て、冷たい石段に腰を下ろす。そこに冬の風が、どこからか雪を運んできて吹き付けた。その冷たさが、火照った身体を刺すように凍らせる。
 身体の中は芯まで温かいのに、皮膚の表面がパリパリになるほど冷たい。そのコントラストは、みのりにとって気持ちいい。
「ちょっと休んだら帰るか」
「え?でも、シン兄ちゃんがまだ……」
「俺もちゃんと温まったよ。いい風呂だった」
 シンタはそう言ったが、みのりは違うところを指さす。シンタの股間だ。
「シン兄ちゃんはまだ、気持ちよくなってないよ」
「そんな事かよ。いいよ。もう適当にオナニーして鎮めるから」
「わ、わわわわっ。ダメだよ、そんなの勿体ない」
 みのりが手をぶんぶんと振る。その細い指先から、綺麗な水しぶきが飛んだ。
(たしかに、その手で抜いてもらえる可能性を考えたら、勿体ないな)
 せっかくさっきまでエッチな触り方をしてもらっていたのだ。ここからオナニーで済ませるのは勿体ない。
「ね。私の身体はもう大丈夫だから、お湯から上がって、触りっこの続き、しよう?」
 みのりが自分の座る石段を叩く。つまり、隣に座ってほしいと言うことだろう。
「ああ、そうだな」
 もうここまで来たら、止まらないし止められない。
 みのりが誘うままに、シンタはすぐ隣に、肩がぶつかるほどの距離で座った。

 冷たい空気の中、お互いの身体が触れた所だけが温かい。みのりの左手は、そっとシンタの太い幹を握っていた。
「おっきいね。もう私の指、届かないや」
「おれもここまで膨らんだのは久しぶりだよ。いや、初めてかもしれない。勃ちすぎて痛いぜ」
「あ、そうなんだ。大丈夫?」
「大丈夫だよ。これも気持ちよさの一環みたいなもんだ」
 シンタはみのりの背中から手を回して、抱き寄せるようにしながら胸を揉んでいた。が、そのうち飽きてきたのか、するりと手を滑らせて背中に回る。
 温泉の効能でヌルヌルした肌の感触。やわらかな背中の中心だけが、背骨に当たって硬い。そこから降りて行けば、ふたつの膨らみを持つお尻。その割れ目に指を滑らせて、手のひらで左のお尻を撫でる。
「んっ。ちょっと腰、浮かせた方がいいかな?」
「いや、そのままでもいいよ。ペタペタして気持ちいいな」
 自転車やアスレチックで鍛えられたお尻は、小さいながらも形が良く、柔らかいのに張りがある。むにゅむにゅと揉んでいるだけでも、不思議な弾力と滑らかな肌の感触が楽しい。

「ねぇ」
 突然、みのりが甘えた声を出した。
「ん、どうした?」
「あの、さ……もし嫌じゃなかったら、私の中にね。指、入れてみない?」
「え?そそそそそ、それって、おまんこに?」
「うん。おまんこ」
 不用意に言った単語が、そのままみのりの声で帰ってくる。
(ま、マジかー。いや、俺は嬉しいけどね。でも、いいのかな。いやー。ここまでやってるんだし、いいか)
 この状況から、指を入れるくらいまでなら大した違いじゃないだろう。本人もいいと言っているのだから、いいのかもしれない。
「じゃ、じゃあ、入れまーす」
「うん。……んっ!?」
 思ったよりもするりと、シンタの中指が入っていった。中はつぶつぶで、コロコロした丸いものが沢山入っている。そして思ったほどヌルヌルじゃない。
「おお、これはこれは……」
「ち、違う。シン兄ちゃん。そっちの穴じゃないよぉ」
「え?」
「そっち、お尻の穴。……えっと、うんちっち、出す穴だから」
 そう言われて、シンタは指を引き抜いた。その指先には、たしかに茶色の何かが付いている。
「これって……」
「えっと、私の、う、うんちっち」
 ここにきて、みのりは心底恥ずかしそうな……いや、もっと言うなら本気で嫌がっているような顔を見せた。照れ隠しに笑って見せるような余裕がない。口をとがらせて、眉をひそめている。本当に困ったときにする表情だ。
 シンタはそれを見て、ふと思い立ったことを実行する。何となく、そのお尻の穴に突っ込んでいた指の臭いを嗅いでみた。

 くんくん……すぅーっ。

 ちょっとマイルドだがどっしりとした、やや甘い匂いだ。親戚一同が参加した今夜の宴会に、カニ鍋があった。あれの磯臭くも決して魚臭くはない匂いが、ちょっと強めに主張している。
「にゃあああっ!?そ、そんなの嗅がないで!本当にやめて」
「何だよ。どこ見られたって触られたって恥ずかしくなかったくせに」
「それだって恥ずかしかったよ。でも、その臭いは違うの!女の子のエッチな可愛さじゃないからダメー!」
「俺はどっちも好きだよ」
「私が嫌いなの。えっちっちの恥ずかしさは良い恥ずかしさで、うんちっちの恥ずかしさはダメな恥ずかしさなの」
「恥ずかしさに良いとかダメとかあるのかよ」
 と、まあ、みのりの弱点を知ることが出来たのは、シンタにしては大収穫だった。本気で顔を真っ赤にして涙を浮かべながら睨んでくる彼女も、これはこれで可愛い。
 ただ、やり過ぎると本気で嫌われてしまいそうだ。

「分かったよ。冗談が過ぎた。手を洗ってくるよ」
「え?でも、お湯が汚れちゃうんじゃ……」
「いや、要するに川の下流の方で流せばいいんだろ。逆流はしてこないって」
 彼はそう言うと、湯船に戻っていき、先ほど言った『仕切り』の外で手を洗う。そこは深いらしいが、手を洗うのに深さは関係ない。
「あー、でもお尻の穴も気持ちよかったぜ。って、みのりは苦しかったか?」
「え?……ううん。気持ちよかった。私、そっちもいっぱい触られたし、おちんちん入れたこともあるから」
「ほー、これまた経験豊富ですな」
「うん。中学校の同級生に、そういうの好きな男の子がいてね。その子の趣味に合わせてるうちに、私までお尻好きになっちゃって……」
 話しているうちに、みのりのお尻がひくひくしてきた。本当は気持ちよかったのだ。準備が整ってなかったから驚いただけで、きちんと洗浄していたならもっと触ってほしかった。
「あ、あのさ。シン兄ちゃん。自転車、借りていい?」
「ん?いいけど、どうするんだ?」
「私、ちょっとお尻の穴、洗ってくるね」
「え?」
 シンタが聞き返すよりも先に、みのりはママチャリに跨っていた。もちろん全裸のまま、濡れた身体も拭かずに。
「じゃ、ちょっと川の下流まで行ってくる。すぐ戻るから」
「お、おいおい。待てって。おーい」
 あまり大声を出せば、みのりが他の人に見つかる可能性もある。おかげであまり大っぴらに呼び止められない。
 そんな中、みのりは勝手に自転車を使って、川の淵に沿って走っていく。
(お尻の中を綺麗にしたら、シン兄ちゃんが喜んでくれるんだ。それで、好きになってくれたら、セックスしてくれるかも……赤ちゃんできたら、ちゃんと産むからね)

 みのりのアナル洗浄アドベンチャー、はじまりはじまり。――である。
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