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episode5 朔風に消える
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「俺のキスで、こんなに濡れたなんて……あいつには言えないよな」
嵐がつばさの前にしゃがむ。つばさは、顔を覆ったまま、首を振った。
「俺、本気だから。本気でつばさが欲しいから。少しでも隙があったら、
つけ込むよ。そうでもしないと……あいつからつばさを奪うなんて、
できないからさ」
嵐がつばさの頭に手を伸ばす。いままで優しいだけだった嵐の手を、
恐ろしく感じて、つばさは肩を震わせた。嵐の手の平が、軽く触れた
だけで離れる。去っていく体温に、顔をあげたつばさは、いま重なった
ばかりの唇が動くのを、見た。
「世界でいちばん、つばさが好きだ」
いつか、斗哉の口から聴いた言葉だ。そう思った瞬間、つばさは斗哉
の温もりを思い出して、泣いた。
嵐がつばさの前にしゃがむ。つばさは、顔を覆ったまま、首を振った。
「俺、本気だから。本気でつばさが欲しいから。少しでも隙があったら、
つけ込むよ。そうでもしないと……あいつからつばさを奪うなんて、
できないからさ」
嵐がつばさの頭に手を伸ばす。いままで優しいだけだった嵐の手を、
恐ろしく感じて、つばさは肩を震わせた。嵐の手の平が、軽く触れた
だけで離れる。去っていく体温に、顔をあげたつばさは、いま重なった
ばかりの唇が動くのを、見た。
「世界でいちばん、つばさが好きだ」
いつか、斗哉の口から聴いた言葉だ。そう思った瞬間、つばさは斗哉
の温もりを思い出して、泣いた。
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