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episode4 帰れない道
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「このまま、誰も傷つかずにいられるのが……一番いいんだけどな」
呟くように、そう言った斗哉の背中を、嵐は見上げる。どんな表情をして
いるのか、顔を見なくても声色でそれがわかる。嵐はぎり、と唇を噛んだ。
誰も傷つかずに済むなら……
そんななまぬるい気持ちではいられないほど、つばさが好きなのだと、
自覚する。もしもあの時、つばさの肌に触れていなかったら。
唇の甘さを、知ることがなかったら。或いは、気持ちを抑えることが
できたのかも、しれない。けれどもう、何もかも遅かった。
距離を置こうとしたのに、つばさは容赦なく自分を求めた。それが、恋人以外の
感情だとわかっていても、心は喜ぶことを止められなかった。
だからもう、誰も傷つかない結末なんて、何処にもないのだ。
嵐は空を見上げた。さっきまで屋上を照らしていた太陽が、厚い雲に覆われている。
ひや、と冷たい風が前髪を流してゆく。もうすぐ、予鈴が鳴る頃だ。
斗哉が振り返った。最後まで、何も言わなかった嵐に向けられる眼差しは、
苦しくなるほど、優しかった。
「俺はたぶん……お前を嫌いにはなれないよ。この先……何があっても」
嵐が目を見開く。その表情を見て、斗哉は満足気に笑みを深めた。
「じゃあ、またな」
伝えたいことはすべて伝えた、と言うように、ひら、と手を振って斗哉が踵を返す。
昼休みの終わりを告げる予鈴が、屋上に響きわたる。嵐は斗哉の姿がドアの
向こうに消えても、しばらく、その場を動くことが出来なかった。
呟くように、そう言った斗哉の背中を、嵐は見上げる。どんな表情をして
いるのか、顔を見なくても声色でそれがわかる。嵐はぎり、と唇を噛んだ。
誰も傷つかずに済むなら……
そんななまぬるい気持ちではいられないほど、つばさが好きなのだと、
自覚する。もしもあの時、つばさの肌に触れていなかったら。
唇の甘さを、知ることがなかったら。或いは、気持ちを抑えることが
できたのかも、しれない。けれどもう、何もかも遅かった。
距離を置こうとしたのに、つばさは容赦なく自分を求めた。それが、恋人以外の
感情だとわかっていても、心は喜ぶことを止められなかった。
だからもう、誰も傷つかない結末なんて、何処にもないのだ。
嵐は空を見上げた。さっきまで屋上を照らしていた太陽が、厚い雲に覆われている。
ひや、と冷たい風が前髪を流してゆく。もうすぐ、予鈴が鳴る頃だ。
斗哉が振り返った。最後まで、何も言わなかった嵐に向けられる眼差しは、
苦しくなるほど、優しかった。
「俺はたぶん……お前を嫌いにはなれないよ。この先……何があっても」
嵐が目を見開く。その表情を見て、斗哉は満足気に笑みを深めた。
「じゃあ、またな」
伝えたいことはすべて伝えた、と言うように、ひら、と手を振って斗哉が踵を返す。
昼休みの終わりを告げる予鈴が、屋上に響きわたる。嵐は斗哉の姿がドアの
向こうに消えても、しばらく、その場を動くことが出来なかった。
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