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episode3 転入生 神崎 嵐
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「大丈夫?」
「うん。ありがとう」
ぱん、とスカートを叩きながら、スリッパに足を突っ込みながら、
つばさは笑った。手を貸してくれた男子に目をやれば、真新しい
制服に身を包んで、手には購買のビニール袋をぶら下げている。
転入生だろうか?そう言えば、真理がB組に新しい子が入って
来たと言っていたような………思わず、じぃ、と見つめてしまった
つばさに、目の前の男子は苦笑いをして言った。
「俺、昨日、この学校に転入して来たばっかりでさ。
ワイシャツが足りないから、ちょうど買いに行ってきたんだ」
まっ黒な瞳が照れたように別館を見やって、また、つばさを向く。
つばさは、そっかぁ、と笑って頷いた。
「青山中央高校へようこそ。私、A組の藤守つばさ。宜しくね」
「ああ。俺は神崎 嵐。隣のB組だから、
ちょくちょく会うかもな。宜しく」
斗哉とはまた違った部類の整った顔立ちが、人懐っこい笑みを
浮かべる。つばさは一瞬、その笑顔に目を見張りながらも、
何となく、そこで会話が途切れてしまったので、じゃあ、また、と
その場を立ち去ろうとした。その時、不意に、嫌な視線を感じて、
いま来た廊下を振り返った。
渡り廊下の入り口の向こうの茂みから、あきらかに、この世の者で
はない、黒い人影が、ゆらゆらと風に揺れながらこちらを見ている。
浮遊霊か、地縛霊か、はたまた生霊か?その種類はわからないが、
霊体から感じる念は、決して気持ちの良いものではなかった。
つばさは、思わず、じり、と後退りをした。その肩が、とん、と嵐に
触れる。振り返って見上げれば、嵐も、つばさと同じ方向に目を
やりながら、眉間に深い皺を刻んでいた。
「ずいぶん、タチの悪い怨念だな」
黒い影を見やったままで、嵐が呟く。
つばさは、その言葉の意味を理解するのと同時に、
嵐のブレザーの袖を掴んでいた。
「もしかして、あなたにもアレが見えるの!?」
食い入るように自分を見つめるつばさに、嵐が頷く。
「ああ、見えるよ。実は俺、代々続く霊能一族の当主なんだ。
あんたも見えてるみたいだから言うけど、アレは生霊で、
あの生霊の怨念は、あんたに向けられてる」
信じ難いことを、同時に二つも言われて、つばさは「へ?」
と間抜けな声を出した。この神崎嵐という転入生は、
霊能一族の当主で、つばさにさえ分かり得ない黒い人影の
正体を知っているのだ。しかも、あの生霊の怨念が自分に
向いていることまで、見抜いている。祖母の九重澄子以外で、
こんな事を話せる人に出会ったのは初めてだった。
「ど、どうしよう。どうしたらいいかな?」
混乱と、言い知れぬ恐怖とで、つばさは知らず知らずの
うちに、掴んでいた嵐のブレザーを引っ張ってしまう。まさか、
あの生霊がチョキチョキと、自分の上履きを刻んだんじゃ
なかろうな?と、ありえない妄想さえしてしまう。苦手なのだ。
ああいう、話の通じない怨念というものは。
死霊でも、生霊でも、タチが悪い。
「とりあえず、いまは何かしてくるような感じはないから、
コレを護身用に持っとくといいよ」
嵐はブレザーの懐から、札のようなものを取り出して、
つばさに渡した。つばさは、掴んでいたブレザーを離して、
受け取る。手にしたそれは、嵐の温もりが残っていて、
日本語ではない、呪文のような文字がつらつらと並んでいた。
「うん。ありがとう」
ぱん、とスカートを叩きながら、スリッパに足を突っ込みながら、
つばさは笑った。手を貸してくれた男子に目をやれば、真新しい
制服に身を包んで、手には購買のビニール袋をぶら下げている。
転入生だろうか?そう言えば、真理がB組に新しい子が入って
来たと言っていたような………思わず、じぃ、と見つめてしまった
つばさに、目の前の男子は苦笑いをして言った。
「俺、昨日、この学校に転入して来たばっかりでさ。
ワイシャツが足りないから、ちょうど買いに行ってきたんだ」
まっ黒な瞳が照れたように別館を見やって、また、つばさを向く。
つばさは、そっかぁ、と笑って頷いた。
「青山中央高校へようこそ。私、A組の藤守つばさ。宜しくね」
「ああ。俺は神崎 嵐。隣のB組だから、
ちょくちょく会うかもな。宜しく」
斗哉とはまた違った部類の整った顔立ちが、人懐っこい笑みを
浮かべる。つばさは一瞬、その笑顔に目を見張りながらも、
何となく、そこで会話が途切れてしまったので、じゃあ、また、と
その場を立ち去ろうとした。その時、不意に、嫌な視線を感じて、
いま来た廊下を振り返った。
渡り廊下の入り口の向こうの茂みから、あきらかに、この世の者で
はない、黒い人影が、ゆらゆらと風に揺れながらこちらを見ている。
浮遊霊か、地縛霊か、はたまた生霊か?その種類はわからないが、
霊体から感じる念は、決して気持ちの良いものではなかった。
つばさは、思わず、じり、と後退りをした。その肩が、とん、と嵐に
触れる。振り返って見上げれば、嵐も、つばさと同じ方向に目を
やりながら、眉間に深い皺を刻んでいた。
「ずいぶん、タチの悪い怨念だな」
黒い影を見やったままで、嵐が呟く。
つばさは、その言葉の意味を理解するのと同時に、
嵐のブレザーの袖を掴んでいた。
「もしかして、あなたにもアレが見えるの!?」
食い入るように自分を見つめるつばさに、嵐が頷く。
「ああ、見えるよ。実は俺、代々続く霊能一族の当主なんだ。
あんたも見えてるみたいだから言うけど、アレは生霊で、
あの生霊の怨念は、あんたに向けられてる」
信じ難いことを、同時に二つも言われて、つばさは「へ?」
と間抜けな声を出した。この神崎嵐という転入生は、
霊能一族の当主で、つばさにさえ分かり得ない黒い人影の
正体を知っているのだ。しかも、あの生霊の怨念が自分に
向いていることまで、見抜いている。祖母の九重澄子以外で、
こんな事を話せる人に出会ったのは初めてだった。
「ど、どうしよう。どうしたらいいかな?」
混乱と、言い知れぬ恐怖とで、つばさは知らず知らずの
うちに、掴んでいた嵐のブレザーを引っ張ってしまう。まさか、
あの生霊がチョキチョキと、自分の上履きを刻んだんじゃ
なかろうな?と、ありえない妄想さえしてしまう。苦手なのだ。
ああいう、話の通じない怨念というものは。
死霊でも、生霊でも、タチが悪い。
「とりあえず、いまは何かしてくるような感じはないから、
コレを護身用に持っとくといいよ」
嵐はブレザーの懐から、札のようなものを取り出して、
つばさに渡した。つばさは、掴んでいたブレザーを離して、
受け取る。手にしたそれは、嵐の温もりが残っていて、
日本語ではない、呪文のような文字がつらつらと並んでいた。
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