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episode2 おかしな三角関係
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「ねえ、いまそこに男の人、立ってたよね?」
「男の人?気付かなかったけど」
そんな人いた?と、真理が振り返って、
つばさの後ろを見る。しかし、そこには誰もいない。
つばさも振り返って、ぞくりとした。
その男性が立っていた辺りは、細い廊下の真ん中で、
他に分岐する通路も部屋もない。姿が見えなくなる
には、早すぎた。思えば、さっき見た男性の双眸には、
見覚えがあった。国道で見た……あのライダーだ。
「ごめん。変なこと言って。気のせいかも」
つばさは、後から来た同室のクラスメイトを見つけて、
あはは、と笑った。
「ちょっと、あんた達、置いてかないでよー」
同室のクラスメイトたちが、つばさと真理に言う。
「ごめん。途中ではぐれちゃってさ。
でも部屋はあそこみたい。早く行こう」
真理は少し先にある、板張りの引き戸を指差した。
部屋の前に立って見上げれば、確かに擦れた墨文字で
“菊の間”と書いてある。広いといいね、と笑いながら
真理がガラッと扉を開けた。と同時に、つばさの背筋に、
冷たいものが走った。一見、何の変哲もない和室に見える。
が、漂う霊気は宿全体から感じるそれよりも、強い。
つばさはもう、回れ右をして逃げ出したかった。
「ほんとだ。結構広いじゃない」
クラスメイト達が次々に荷物を置いて、着替えや洗面用具を
取り出す。つばさの班はA組だから、すぐに入浴へ行かなけ
ればならないのだ。つばさも恐る恐る部屋に入り、真理の
隣で入浴の準備を始めた。
「ねぇ。お風呂入る前に、布団敷いておかない?
皆でやればすぐ終わるし、その方が楽だよね?」
どちらかと言うと、優等生気質のより子が、メタルフレームの
メガネを片手で押さえながら言った。
「あ、そうだね。そうしよっか」
早々と入浴の荷物をまとめ終えたクラスメイトたちが、
襖の前に集まる。つばさは、大きなビニール袋にジャージ
を詰め込みながら、振り返った。
より子が、すらっ、と襖を開ける。次の瞬間、
ヒィィーーーーーーっ!!!
つばさは全身から血の気が引いた。
目に飛び込んできた光景は、押入れ一面に浮かぶ無数の
顔、顔、顔!!!
青白い顔や、歪んだ顔が虚ろな目をして浮かんでいる。
スパーーーーーン!!!
つばさは、物凄い勢いで駆け寄ると、
クラスメイト達を押しのけて襖を閉めた。
「ちょっと!何すんのよ!!」
メタルフレームのより子がつばさを睨む。
他のクラスメイトも、びっくりしながら、つばさを見た。
「あのさっ、私、クラス委員だし、布団は後で私が敷くよ。
汗かいちゃったし、先にお風呂行かない!?」
襖を背に、えへへ、と笑いながら意味不明な説得をする。
「そんなの、クラス委員の仕事じゃないでしょ?
皆でやればすぐ終わるから、どいてよ」
いやいやいや、頼むから、ここは何とかスルーしてくれ……
そう、心の中で懇願するつばさに、言い出しっぺの
より子が引かない。つばさが困り果てていると、
真理が呆れたように言った。
「そんなこと後でやればいいじゃん。
お風呂の順番詰ってるんだから、早く行こうよ」
長い髪をうっとうしそうに払って、皆を見る。
「そうよね。早く行かないと先生に怒られるし」
真理のもっともな意見に、他のクラスメイト達も頷いて、
次々と部屋を出ていった。渋々と、その後に続いて
廊下に出たより子の肩を、真理がポンと叩く。
「私たち、先に行ってるから、つばさも早くね」
襖を死守するように立っているつばさに、
真理が笑いかける。
「うん、すぐ行く!!」
つばさは二つ返事で頷くと、ビニールに荷物を
移し始めた。
「男の人?気付かなかったけど」
そんな人いた?と、真理が振り返って、
つばさの後ろを見る。しかし、そこには誰もいない。
つばさも振り返って、ぞくりとした。
その男性が立っていた辺りは、細い廊下の真ん中で、
他に分岐する通路も部屋もない。姿が見えなくなる
には、早すぎた。思えば、さっき見た男性の双眸には、
見覚えがあった。国道で見た……あのライダーだ。
「ごめん。変なこと言って。気のせいかも」
つばさは、後から来た同室のクラスメイトを見つけて、
あはは、と笑った。
「ちょっと、あんた達、置いてかないでよー」
同室のクラスメイトたちが、つばさと真理に言う。
「ごめん。途中ではぐれちゃってさ。
でも部屋はあそこみたい。早く行こう」
真理は少し先にある、板張りの引き戸を指差した。
部屋の前に立って見上げれば、確かに擦れた墨文字で
“菊の間”と書いてある。広いといいね、と笑いながら
真理がガラッと扉を開けた。と同時に、つばさの背筋に、
冷たいものが走った。一見、何の変哲もない和室に見える。
が、漂う霊気は宿全体から感じるそれよりも、強い。
つばさはもう、回れ右をして逃げ出したかった。
「ほんとだ。結構広いじゃない」
クラスメイト達が次々に荷物を置いて、着替えや洗面用具を
取り出す。つばさの班はA組だから、すぐに入浴へ行かなけ
ればならないのだ。つばさも恐る恐る部屋に入り、真理の
隣で入浴の準備を始めた。
「ねぇ。お風呂入る前に、布団敷いておかない?
皆でやればすぐ終わるし、その方が楽だよね?」
どちらかと言うと、優等生気質のより子が、メタルフレームの
メガネを片手で押さえながら言った。
「あ、そうだね。そうしよっか」
早々と入浴の荷物をまとめ終えたクラスメイトたちが、
襖の前に集まる。つばさは、大きなビニール袋にジャージ
を詰め込みながら、振り返った。
より子が、すらっ、と襖を開ける。次の瞬間、
ヒィィーーーーーーっ!!!
つばさは全身から血の気が引いた。
目に飛び込んできた光景は、押入れ一面に浮かぶ無数の
顔、顔、顔!!!
青白い顔や、歪んだ顔が虚ろな目をして浮かんでいる。
スパーーーーーン!!!
つばさは、物凄い勢いで駆け寄ると、
クラスメイト達を押しのけて襖を閉めた。
「ちょっと!何すんのよ!!」
メタルフレームのより子がつばさを睨む。
他のクラスメイトも、びっくりしながら、つばさを見た。
「あのさっ、私、クラス委員だし、布団は後で私が敷くよ。
汗かいちゃったし、先にお風呂行かない!?」
襖を背に、えへへ、と笑いながら意味不明な説得をする。
「そんなの、クラス委員の仕事じゃないでしょ?
皆でやればすぐ終わるから、どいてよ」
いやいやいや、頼むから、ここは何とかスルーしてくれ……
そう、心の中で懇願するつばさに、言い出しっぺの
より子が引かない。つばさが困り果てていると、
真理が呆れたように言った。
「そんなこと後でやればいいじゃん。
お風呂の順番詰ってるんだから、早く行こうよ」
長い髪をうっとうしそうに払って、皆を見る。
「そうよね。早く行かないと先生に怒られるし」
真理のもっともな意見に、他のクラスメイト達も頷いて、
次々と部屋を出ていった。渋々と、その後に続いて
廊下に出たより子の肩を、真理がポンと叩く。
「私たち、先に行ってるから、つばさも早くね」
襖を死守するように立っているつばさに、
真理が笑いかける。
「うん、すぐ行く!!」
つばさは二つ返事で頷くと、ビニールに荷物を
移し始めた。
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