罪の在り処

橘 弥久莉

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第二章:僕たちの罪

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 「わたしも、これに入れていたからか無事
だったんです。もっとも、これはお財布とし
て持ち歩いているものだから、家に置いてあ
る方の携帯は普通に問題なく」

 「家にもう一台って、もしかして携帯二台
持ち派ですか?」

 意外な事実に、僕は目を丸くする。
 昨今、格安プランが充実していることから
仕事用とプライベート用を分ける人が増えて
いると知っていたが、実際に二台使っている
人を見るのは初めてだった。彼女はこくりと
頷くと、透明のそれから携帯を取り出した。

 「こっちの古い携帯は充電の消耗が激しい
ので、お財布として使ってるんです。通話や
メールなんかは家に置いてあった携帯をメイ
ンにしてるから、もしこれが壊れたとしても
全然困らなくて」

 「今どきと言うか、何かカッコいいですね」

 「そうですか?格安SIMとの併用で携帯代
も節約できるし、もし失くしたとしても検索
機能が付いてるから簡単に探せるし。意外に
多いですよ、二台使ってる人」

 「なるほど。僕は携帯をお財布代わりに持
つという感覚がないから通話と財布に分ける
という発想もないんです。レジでも、ピッ、
とカードかざしてクレカのポイント貯めるく
らいだし」

 「スマホ決済にクレジットカード紐づけれ
ば、カードを持ち歩く手間もないですよね?」

 「まあそうなんですけど。いまいちアプリ
の登録の仕方がわからなくて、使ってないん
ですよね。なんか僕、時代に乗り遅れたおっ
さんみたいだな」

 あはは、と自虐的に笑いながら頭を掻く。
 と、このところさらに症状が悪化していた
手のひび割れが、ピリ、と痛みを訴えながら
血を滲ませた。

 「卜部さん、血が」

 「あ」

 目敏くその手に気付いた彼女が眉を顰める。
 そして手にしていた携帯を仕舞うと鞄から
ハンカチを取り出し、ちょん、ちょん、と
折り畳んだそれで血を拭ってくれた。

 「ごめんなさい。お顔の傷も、この手の傷
も、全部わたしのせいですよね」

 「あ、いや、これは違うんです」

 「え?」

 「いやっ、違くはないんですけど、何と言
うか、手のひび割れは持病?みたいなものだ
から他の傷とは関係なくて」

 「もしかしてアトピーですか?」

 「いや、それとも違うんですけど……」

 しまった。
 アトピーということにしておけば良かった
と、気付いたところでもう遅い。他意のない
瞳を向け、小首を傾げている彼女に内心嘆息
すると、僕はしばし思い悩み、本当のことを
打ち明けた。
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