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カーン王子は、お仕事に呼ばれてすぐに部屋を出て行った。
残された私は、ジュメイラさんにスワイマン殿下について聞いてみることにした。
「ジュメイラさんはスワイマン殿下と面識があるんですか?」
なんだかすごく良く知っているような話しぶりだった。
「子供の頃、よく遊んだの。私、カーン様、スワイマン殿下の3人。スワイマン殿下のお母上は外国の姫だったのだけど、早くに亡くなってカーン様のお母さまが育てられたの。私とカーン様は同い年、スワイマン殿下は4歳年下。私は殿下方の遊び相手として、後宮に出仕し、そこでカーン様に出会って仲良くさせていただいた。スワイマン殿下はいつも私たちの後をついてきて、とてもきれいで優しい子だったわ。いつも私のために花を摘んで贈ってくれたの。今はどんな男性になっているのかしら?ジェーン様が一目ぼれするくらいだから、きっと素敵な男性に成長したんでしょうね」
実は私も見たことがないんです。
正確には、見たと思うけどあの日は男性を見すぎていてどの人だか忘れました。
ただ、男も惚れる男だとアクラムは言っていました。兄貴的な?
「そうだったんですね」
「どうしたの?もしかして恋しくなっちゃった?早く帰りたい?」
ジュメイラさんはニヤニヤと私を見ている。
幸せな人は、考えることが違うなぁと、私はジュメイラさんを見て思った。
でもジュメイラさんの言うような優しい人なら、ちゃんと話せば私に恋人を作ることをカーン王子みたいに許可してくれるかも。
私は少しだけ希望を見つけた。
数か月前まで過ごしていた部屋に泊まらせてもらい、ジュメイラさんと一緒にお茶をしたり、一緒にご飯を食べたり。
修学旅行のように楽しい日々を過ごさせてもらった。
侍女に足や手をオイルマッサージしてもらったりヘッドスパをしてもらったり。
すごく贅沢な気分を味わわせてもらった。
本当は一緒にお風呂に入りたかったけど、ジュメイラさんが心配するだろうと思い、一緒にお風呂に入るのだけは「恥ずかしいから」と言って遠慮した。
3日間ゆっくり滞在させてもらい、アクラムのことも考えてそろそろアルラシード宮殿にかえろうかと思い始めた頃、カーン王子が1枚の紙をもって後宮にやってきた。
「面白いものを見つけたぞ」
カーン王子は、私とジュメイラさんがお茶しているところに登場し、1枚の紙を見せた。
そこには女性の似顔絵と、名前、数字、説明文が書いてあった。
名前はジェニファー・シュワイマー。数字は10000ワラカ。ワラカはこの国の貨幣単位だ。
「すご~い、ジェーン様にそっくり~」
というジュメイラさんの声が聞こえる。
私は冷や汗が流れるのを感じた。
「え?似てますか?似てないですよ。ところで、それは何ですか?」
驚きと焦りを隠し、私は冷静にカーン王子に尋ねた。
「今最も報奨金の高い尋ね人の似顔絵らしい。髪の色は金色でピンクダイヤの瞳と書いてある。特徴もジェーンにそっくりだな」
「本当だ。この世には3人同じ顔の人がいるっていうけど、本当にいるんですね~。私の髪色も瞳の色も、リナレイではありふれた色ですからね」
私は似ていることは認めつつ、あくまで私ではないというスタンスをとった。
本当はリナレイでも私の瞳の色は珍しいのは内緒だ。
ジェニファー・シュワイマーというのは、アラン・スミシーという名前が偽名だとばれてしまったので、仕方なく本名として名乗った偽名だった。
誰よ。ジェニファーを探して何をしようっていうの!?
「あの、私そろそろ帰ろうと思ってたんですけど。その似顔絵ってどの程度出回ってるんですか?今外に出たら、私がその女性だと思われちゃいますか?」
私は恐る恐るカーン王子に聞いてみた。
「この紙は町中皆持ってるらしい。私も部下から3枚もらった。この国の一般的な女性なら、髪を隠せば大丈夫だと思うが。君の場合は瞳が特徴的だからな。リナレイには多いのかもしれないが、この国では見たことのない色だ。もしかしたら今外に出るのは危険かもしれないぞ。もしよければ、部下に送らせようか?それとも迎えに来てもらうか?」
ど、ど、ど、どうしよう…。
残された私は、ジュメイラさんにスワイマン殿下について聞いてみることにした。
「ジュメイラさんはスワイマン殿下と面識があるんですか?」
なんだかすごく良く知っているような話しぶりだった。
「子供の頃、よく遊んだの。私、カーン様、スワイマン殿下の3人。スワイマン殿下のお母上は外国の姫だったのだけど、早くに亡くなってカーン様のお母さまが育てられたの。私とカーン様は同い年、スワイマン殿下は4歳年下。私は殿下方の遊び相手として、後宮に出仕し、そこでカーン様に出会って仲良くさせていただいた。スワイマン殿下はいつも私たちの後をついてきて、とてもきれいで優しい子だったわ。いつも私のために花を摘んで贈ってくれたの。今はどんな男性になっているのかしら?ジェーン様が一目ぼれするくらいだから、きっと素敵な男性に成長したんでしょうね」
実は私も見たことがないんです。
正確には、見たと思うけどあの日は男性を見すぎていてどの人だか忘れました。
ただ、男も惚れる男だとアクラムは言っていました。兄貴的な?
「そうだったんですね」
「どうしたの?もしかして恋しくなっちゃった?早く帰りたい?」
ジュメイラさんはニヤニヤと私を見ている。
幸せな人は、考えることが違うなぁと、私はジュメイラさんを見て思った。
でもジュメイラさんの言うような優しい人なら、ちゃんと話せば私に恋人を作ることをカーン王子みたいに許可してくれるかも。
私は少しだけ希望を見つけた。
数か月前まで過ごしていた部屋に泊まらせてもらい、ジュメイラさんと一緒にお茶をしたり、一緒にご飯を食べたり。
修学旅行のように楽しい日々を過ごさせてもらった。
侍女に足や手をオイルマッサージしてもらったりヘッドスパをしてもらったり。
すごく贅沢な気分を味わわせてもらった。
本当は一緒にお風呂に入りたかったけど、ジュメイラさんが心配するだろうと思い、一緒にお風呂に入るのだけは「恥ずかしいから」と言って遠慮した。
3日間ゆっくり滞在させてもらい、アクラムのことも考えてそろそろアルラシード宮殿にかえろうかと思い始めた頃、カーン王子が1枚の紙をもって後宮にやってきた。
「面白いものを見つけたぞ」
カーン王子は、私とジュメイラさんがお茶しているところに登場し、1枚の紙を見せた。
そこには女性の似顔絵と、名前、数字、説明文が書いてあった。
名前はジェニファー・シュワイマー。数字は10000ワラカ。ワラカはこの国の貨幣単位だ。
「すご~い、ジェーン様にそっくり~」
というジュメイラさんの声が聞こえる。
私は冷や汗が流れるのを感じた。
「え?似てますか?似てないですよ。ところで、それは何ですか?」
驚きと焦りを隠し、私は冷静にカーン王子に尋ねた。
「今最も報奨金の高い尋ね人の似顔絵らしい。髪の色は金色でピンクダイヤの瞳と書いてある。特徴もジェーンにそっくりだな」
「本当だ。この世には3人同じ顔の人がいるっていうけど、本当にいるんですね~。私の髪色も瞳の色も、リナレイではありふれた色ですからね」
私は似ていることは認めつつ、あくまで私ではないというスタンスをとった。
本当はリナレイでも私の瞳の色は珍しいのは内緒だ。
ジェニファー・シュワイマーというのは、アラン・スミシーという名前が偽名だとばれてしまったので、仕方なく本名として名乗った偽名だった。
誰よ。ジェニファーを探して何をしようっていうの!?
「あの、私そろそろ帰ろうと思ってたんですけど。その似顔絵ってどの程度出回ってるんですか?今外に出たら、私がその女性だと思われちゃいますか?」
私は恐る恐るカーン王子に聞いてみた。
「この紙は町中皆持ってるらしい。私も部下から3枚もらった。この国の一般的な女性なら、髪を隠せば大丈夫だと思うが。君の場合は瞳が特徴的だからな。リナレイには多いのかもしれないが、この国では見たことのない色だ。もしかしたら今外に出るのは危険かもしれないぞ。もしよければ、部下に送らせようか?それとも迎えに来てもらうか?」
ど、ど、ど、どうしよう…。
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