後宮に入りましたが、旦那さんが来ないので恋人を探します

国湖奈津

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緊張で眠れなかったけれど、少しだけうとうとしていると、外が白くなり始めた。
部屋にも柔らかい光が差している。

思った通り、私がいたのはかなり広い部屋だった。
カーン王子の後宮と同じように、この部屋も全体がタイルで装飾されている。
この部屋のタイルは、白と青の2色使いでさわやかな印象だ。

部屋に入ると広いホールになっていて庭が一望できる。
庭にはレモンの木があった。
ホール右側の部屋は寝室、左側の部屋は応接室だろう。

置かれている家具は寝室の寝台だけ。
寝台は綺麗に整えられていたけれど、部屋の隅には埃が積もっている。
長い間使われていなかったようだ。

もしかしたらここは牢獄かもしれないと私は思った。
リナレイには貴族用の牢獄がある。
それはかつて要塞だった建物を改装したもので、監禁されるものの生活は比較的快適で、特に王族用の部屋は広く豪華だと噂されていた。

私はタモハンで王族の端に加わった。
ここがタモハンの王族用の牢獄と言われれば、説得力があるかもしれない。

そうすると、やはりリナレイとタモハンの関係が悪化していて、私はここにつれてこられたのかもしれない。
でもそれなら話してくれれば、私は抵抗せずに従ったのに。
嫁いできたばかりの人間を信じられないということかもしれない。


しばらく考え込んでいるとドアがノックされ、武装した1人の男性が入って来た。
男性はカートを押してくると、布を敷き、ソファを用意して食事を並べ始めた。

パン、ミルク、水とお米、スパイシーな豆の煮物が並べられている。
男性は並べ終わると何も言わず帰っていった。

私は用意された朝食を食べた。
男性は1日に3度食事を運んできた。

食事以外の時間は特にすることもなく、私は寝台の上で考え事をして過ごしたり、ボーっとしていた。

4日目の朝、いつもの武装した男性は、料理を並べ終えた後、私のほうを見た。

「部屋から出られないのですか?」
「え?部屋から出ていいんですか?」

「はい。ここにはあなたしかいらっしゃいませんので。どこでも自由に。ただ、塀の外に出ることはできませんし、使われていない部屋は掃除していませんが。扉は開いていますので、自由にお過ごしください。湯殿もご用意しています」

塀の外には出られないけれど、外に出られるし、お風呂にも入れるのか。

「着替えはありますか?」
私は攫われた日のままだったので簡素なシルクのワンピースを着ていた。
そしてそれをずっと着ていたのだ。

体は水で拭いていたけれど、お風呂に入りたい気持ちはすごく高まっている。
入れると言うなら今すぐ入りたい気分だった。

「着替えですか?少々お待ちください。お持ちします」
男性は少し慌てて部屋から出て行った。
2,3時間待たされて、着替えが届けられた。
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