15 / 43
14
しおりを挟む
緊張で眠れなかったけれど、少しだけうとうとしていると、外が白くなり始めた。
部屋にも柔らかい光が差している。
思った通り、私がいたのはかなり広い部屋だった。
カーン王子の後宮と同じように、この部屋も全体がタイルで装飾されている。
この部屋のタイルは、白と青の2色使いでさわやかな印象だ。
部屋に入ると広いホールになっていて庭が一望できる。
庭にはレモンの木があった。
ホール右側の部屋は寝室、左側の部屋は応接室だろう。
置かれている家具は寝室の寝台だけ。
寝台は綺麗に整えられていたけれど、部屋の隅には埃が積もっている。
長い間使われていなかったようだ。
もしかしたらここは牢獄かもしれないと私は思った。
リナレイには貴族用の牢獄がある。
それはかつて要塞だった建物を改装したもので、監禁されるものの生活は比較的快適で、特に王族用の部屋は広く豪華だと噂されていた。
私はタモハンで王族の端に加わった。
ここがタモハンの王族用の牢獄と言われれば、説得力があるかもしれない。
そうすると、やはりリナレイとタモハンの関係が悪化していて、私はここにつれてこられたのかもしれない。
でもそれなら話してくれれば、私は抵抗せずに従ったのに。
嫁いできたばかりの人間を信じられないということかもしれない。
しばらく考え込んでいるとドアがノックされ、武装した1人の男性が入って来た。
男性はカートを押してくると、布を敷き、ソファを用意して食事を並べ始めた。
パン、ミルク、水とお米、スパイシーな豆の煮物が並べられている。
男性は並べ終わると何も言わず帰っていった。
私は用意された朝食を食べた。
男性は1日に3度食事を運んできた。
食事以外の時間は特にすることもなく、私は寝台の上で考え事をして過ごしたり、ボーっとしていた。
4日目の朝、いつもの武装した男性は、料理を並べ終えた後、私のほうを見た。
「部屋から出られないのですか?」
「え?部屋から出ていいんですか?」
「はい。ここにはあなたしかいらっしゃいませんので。どこでも自由に。ただ、塀の外に出ることはできませんし、使われていない部屋は掃除していませんが。扉は開いていますので、自由にお過ごしください。湯殿もご用意しています」
塀の外には出られないけれど、外に出られるし、お風呂にも入れるのか。
「着替えはありますか?」
私は攫われた日のままだったので簡素なシルクのワンピースを着ていた。
そしてそれをずっと着ていたのだ。
体は水で拭いていたけれど、お風呂に入りたい気持ちはすごく高まっている。
入れると言うなら今すぐ入りたい気分だった。
「着替えですか?少々お待ちください。お持ちします」
男性は少し慌てて部屋から出て行った。
2,3時間待たされて、着替えが届けられた。
部屋にも柔らかい光が差している。
思った通り、私がいたのはかなり広い部屋だった。
カーン王子の後宮と同じように、この部屋も全体がタイルで装飾されている。
この部屋のタイルは、白と青の2色使いでさわやかな印象だ。
部屋に入ると広いホールになっていて庭が一望できる。
庭にはレモンの木があった。
ホール右側の部屋は寝室、左側の部屋は応接室だろう。
置かれている家具は寝室の寝台だけ。
寝台は綺麗に整えられていたけれど、部屋の隅には埃が積もっている。
長い間使われていなかったようだ。
もしかしたらここは牢獄かもしれないと私は思った。
リナレイには貴族用の牢獄がある。
それはかつて要塞だった建物を改装したもので、監禁されるものの生活は比較的快適で、特に王族用の部屋は広く豪華だと噂されていた。
私はタモハンで王族の端に加わった。
ここがタモハンの王族用の牢獄と言われれば、説得力があるかもしれない。
そうすると、やはりリナレイとタモハンの関係が悪化していて、私はここにつれてこられたのかもしれない。
でもそれなら話してくれれば、私は抵抗せずに従ったのに。
嫁いできたばかりの人間を信じられないということかもしれない。
しばらく考え込んでいるとドアがノックされ、武装した1人の男性が入って来た。
男性はカートを押してくると、布を敷き、ソファを用意して食事を並べ始めた。
パン、ミルク、水とお米、スパイシーな豆の煮物が並べられている。
男性は並べ終わると何も言わず帰っていった。
私は用意された朝食を食べた。
男性は1日に3度食事を運んできた。
食事以外の時間は特にすることもなく、私は寝台の上で考え事をして過ごしたり、ボーっとしていた。
4日目の朝、いつもの武装した男性は、料理を並べ終えた後、私のほうを見た。
「部屋から出られないのですか?」
「え?部屋から出ていいんですか?」
「はい。ここにはあなたしかいらっしゃいませんので。どこでも自由に。ただ、塀の外に出ることはできませんし、使われていない部屋は掃除していませんが。扉は開いていますので、自由にお過ごしください。湯殿もご用意しています」
塀の外には出られないけれど、外に出られるし、お風呂にも入れるのか。
「着替えはありますか?」
私は攫われた日のままだったので簡素なシルクのワンピースを着ていた。
そしてそれをずっと着ていたのだ。
体は水で拭いていたけれど、お風呂に入りたい気持ちはすごく高まっている。
入れると言うなら今すぐ入りたい気分だった。
「着替えですか?少々お待ちください。お持ちします」
男性は少し慌てて部屋から出て行った。
2,3時間待たされて、着替えが届けられた。
11
お気に入りに追加
1,693
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる