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 リズ・ミア・ジェーンの3人は、あの後も私付きの侍女として残ってくれていた。

 私の結婚が決まり、忙しくなるからと父が決めたもので、3人も了承してくれた。
 今はアンナと併せて4人で私をサポートしてくれている。

 私はこの家に住み続けるのだし、結婚の準備と言ってもほとんど何もないのに、父は大げさなことをするなと最初は思っていた。

 けれど、それは大きな間違いだった。
 ものすごく忙しくて、アレックス様にもなかなか会えない状況だ。

 衣装の打ち合わせや誰を招待するか。
 そしてお手紙書きに夫婦の部屋の改装計画。

 髪や肌の手入れも、以前よりも念入りに行ってもらっており、時間はいくらあっても足りないくらいだった。

 今は束の間の休憩時間。
 5人でお茶をしている。

 この国では侍女と一緒にお茶をするなんてと眉を顰める人もいるけれど、私はまったく気にしない。
 他人の目のないところでは好きにさせてもらっている。

 最初は固辞していた3人も、今では時間になれば普通に着席して、おしゃべりしてくれるようになった。


 「えっ、じゃあみんな知ってたの?アレックス様が求婚してくださっていたこと」

 私は驚いて声を上げた。

 「えぇ、その日のうちに全員知ってましたよ」

 「全員?」

 「屋敷の中で知らなかったのはエミリア様だけです」

 リズがそう答えると、みんながうんうんと頷いている。

 「私も先輩が呼びに来てくれて、将来お仕えすることになるからとアレックス様見に行きましたよ。ほとんどの女子が一目見に行っていたと思います」

 とジェーンが言った。
 私はそれを聞いて、アレックス様ってパンダみたいだなと思った。

 「それで、ついにお嬢様が結婚するんだねって、私たち皆で喜んでいたんです」

 「知らなかった」

 「私もお嬢様が旦那様に呼ばれている間に、そのことを聞いて、一番に祝福しようと思ってお嬢様が帰ってくるのを待っていたんです。ところが、お嬢様は王太子殿下に求婚するなんて言い出したので、驚きました」

 アンナは振り返ってそう続けた。

 「言ってくれたらよかったのに」

 私はそうつぶやいた。

 「上の方から旦那様はこの結婚話を良く思っていないという話が伝わってきました。お嬢様をぬか喜びさせることになったら申し訳ないと、箝口令が敷かれました」

 「そうだったんだね」

 「ジェーンは言いそうになってましたけどね」

 ミアがジェーンをつついている。

 「あの時、3人が怖い顔でにらんできて、慌てて口を閉じましたよ」

 ジェーンはその時の3人の顔を思い出したように、そう言った。

 「まぁジェーンの気持ちは分かるけどね。日に日に濃くなるお嬢様の目の下のクマを隠すのに毎日大変でしたから。あの時は何度も言ってしまおうかと思いました」

 メイクが一番うまいリズは、そう言った。
 その節はお世話になりました。

 「私ももう直談判しかないと思って言いかけました」

 ふふふっとみんなで笑った。

 「なんだか、みんなにも心配してもらってたんだね。ありがとう」

 私は心の底からお礼を言った。

 「お礼なら、ルイーザ様にも仰った方がいいですよ。お嬢様とアレックス様をくっつけようと奔走されてましたから」

 なんでも、4人はルイーザに指揮されて動いていたらしい。

 温泉で私たちを混浴させたり、私の着替えを隠したり、アレックス様の部屋に私を寝かせたりしたのも全部ルイーザとこの4人が画策したことらしかった。

 「王太子殿下にギャフンと言わせると言って準備していたものが流用できたので、ルイーザ様のお考えにぴったりのものを提供できてよかったです」

 なるほど。
 時間かけて準備したけど結局没になったものが、使ってもらえたってことか。

 「エミリア様のパンツを履かせるか、履かせないかも5人で考えて、討論を重ねて。最終的には脱がせる楽しみを奪ったらいけないっていうことで、パンツを履かせることで決着しました」

 せっかくみんなで考えてくれたらしいけれど、私パンツ自分でササっと脱いでたわ。
 ごめん。 

 なるほど。
 偶然だと思っていたのは、すべて仕組まれたことだったんだ。

 ちょっと恥ずかしかったけど、今となってはすべて良い思い出だ。
 ルイーザに会ったら、絶対にお礼をしようと私は決めた。

 部屋がノックされて、執事に案内されたアレックス様がいらっしゃった。

 やっとまとまって休みを合わせることができた私たちは、今日からしばらくあの別荘に出かける約束をしていた。

 今回はアレックス様用の浴衣も用意したから、二人で浴衣でまったりしたいと考えている。

 予定より少し早く着いたアレックス様が部屋まで迎えに来てくれた。

 私がアレックス様を出迎えると、ごく自然にキスが落とされた。
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