新米公爵令嬢の日常

国湖奈津

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調査報告

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翌週、リンダが調査報告をもってやって来た。

「バーバラ・ストナン伯爵令嬢についての調査報告です。現在18歳。ストナン伯爵家の長女です。2歳年下の妹が1人。社交界では美しい姉妹と評判ですが姉妹仲はあまりよくないようです。というのも、これはあまり知られていない話のようですが、バーバラ嬢はストナン伯爵が使用人との間に作った娘で、伯爵夫人と血がつながっていないのだとか」

「複雑なご家庭なのね」

「はい。それでですね、バーバラ嬢はリリー先生の娘ではないかと母が言うのです」

「リリー先生の?」
リリー先生というのは、私もリンダもお世話になっている教師で、今は校長職にある。

「はい。何でもリリー先生はもともと貧しい男爵家の娘だったのですが、リリー先生が社交界にデビューする頃男爵が爵位を売り一家は離散しました。リリー先生は培った教養を武器に、一時ストナン伯爵家で家庭教師として働いていたそうです。母がリリー先生に会ったのは、リリー先生が街に来てからですが、当初リリー先生は希望を失い自暴自棄だったとか。酒に酔ったリリー先生は、生んだばかりの子供を奪われたと話していたそうなんです。もしかしたら、バーバラ嬢はリリー先生の娘ではないかと母が話していました」

「自暴自棄?リリー先生が?」
理知的で温和な教育者としてのリリー先生しか知らない。
自暴自棄になった姿など全く想像できなかった。

「はい。それからバーバラ嬢の婚約者はハンス・ジョリバック。ジョリバック伯爵家の嫡男です」

「そう。ジョリバック伯爵家ならば、素行調査など自前でできるはず。それなのに街でうちの事務所に依頼したということは、この依頼は伯爵家の関知しない、ハンス個人からのものということになるわね」

伯爵家ほどの貴族ならば、調査は自前で行われることが多い。
もちろん、より専門的な知識や技術を求めて外部に依頼することもあるだろうけれど、今回のように私的な部分に関わることは別だろう。

婚姻に関わることは内々で解決したいと考えることがほとんどだ。

「そうですね。依頼に来たのはハンス本人だそうです」

「そうだとすると、やっぱりハンスが知りたかったのは、バーバラの可愛い素顔だったんじゃないかしら?冷静沈着な令嬢のちょっと嫉妬した可愛い姿を見たかったんだわ。それなのにあんな鬼の表情と怨嗟のセリフ引き出しちゃって。依頼人は怒っているんじゃない?大丈夫なの?」

怒り狂ったハンスが怒鳴り込んでくる光景が目に浮かび、私は恐る恐るリンダに尋ねた。

私はたまにしか手伝わないけれど、事務所に常駐している者たちは怖い思いをしたに違いない。

「お嬢様が気にしてらしたので、確かめて来ました。そうしたら、依頼人はご満悦で、翌日には成功報酬の支払いに来たそうなんです」

「そうなの?」
ハンスの反応は予想外なものだった。

そうだとするとハンスはバーバラの怒り狂った本性を見るために依頼したということなのだろうか。
意外に思い少し考え込んでしまったけれど、すぐに頭を切り替えることにした。

「リリー先生の所に話を聞きに行きましょう。支度をしたら、すぐに出かけるわ」
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