上 下
1 / 49

旅立ち

しおりを挟む
――――ピチャ――――
―――ジュル――――
「…ン……ぁ……ん…」
―――クチュ――――
「ハァ…ハァ…」

水音と喘ぎ声が響く寝室。

ルーシーは自分の腰を抱え上げ膣口をすする男を見ている。

男の名はフランツ。

近衛騎士団1番隊隊長を拝命する騎士だ。

銀髪と薄灰色の瞳を持つ。

冷静沈着に隊を率いる姿からか、誰に対しても冷淡に接する姿からか一部の人間は氷の騎士と呼ぶ。

ルーシーは何も身につけていない生まれたままの姿だが、フランツは近衛騎士団の隊服を身につけたまま。

今、フランツはルーシーの陰核にしゃぶりついている。

(フランツのこんな姿を見られるのは私だけ、よね?今日こそは絶対にちゃんと話すの)

ルーシーは喘ぎながら心に誓った。

「何を考えているんです?余裕のようですね」
「違っ」

フランツは花芽の中から薄紅色の真珠を露出させた。

舌を押し付け、膣穴にずぶりと指を押し入れてくる。

強烈な快感に、ルーシーは頭をのけぞらせた。

フランツの太い指が膣穴を出入りし、そのたびにルーシーの豊かな胸がふるふると揺れる。

快感に思考が奪われて行く。

「…ダメッ…イッチャ…アッ―――」

ルーシーの体はぐったりとベッドに沈んでいき、そのまま甘やかな眠りについた。


◇◇◇◇◇◇



「またやっちゃったわ」

目覚めたルーシーはガバリと半身を起こし、眠ってしまった自分を責めた。

フランツの姿はない。


どうしてこんなことになってしまったのか。

『もし時間を戻せるなら、あの時に戻りたい』

誰もが一度は考えたことがあるだろう。

ルーシーの場合、戻りたいのは“あの日”と決まっている。

1年半前の1月24日。

あの日、ルーシーは初めて一人で旅に出た。

もちろん、王女であるルーシーが本当に1人で旅に出るはずもなく、父王はルーシーの旅に近衛騎士団から1番隊を同行させた。

侍女のホリーも一緒だ。

1月30日はルーシーの祖母である太后の誕生日。

夫である先王を亡くした太后は息子に国を任せ、自身は生まれ故郷に建てた別荘に住んでいる。

いつもなら母と共に祖母の別荘を訪れ誕生日を祝うのだが、今回母は体調を崩し、ルーシーだけで向かうことになった。

末娘のルーシーも16歳になり、1人で行かせても大丈夫だろうと両親が判断したようだ。

ルーシーは初めての一人旅を少し不安に思いつつ楽しみにしていたのだが、どうしても心配なことがあった。

それは祖母の別荘が北方の寒い地域にあるということ。

ルーシーは寒いのが苦手だった。

特に体を冷やし眠れない時を過ごさなければならないのが苦手だ。

祖母の別荘のある地域は、ルーシーの暮らす王都の一番寒い日よりももっと寒いのが当たり前の地域だ。

ルーシーは体を冷やしてしまうと眠れないということを学んでいた。

だからベッドに入る前、湯船につかり温まったらすぐにベッドに入るようにしているのだが、寝つきが悪いと対策をしても体を冷やしてしまい眠れなくなることがある。

一度体を冷やしてしまうと、後から温石で温めようとしても難しい。

「旅に持っていける、寒さ対策アイテムって何かないかしら?」

ルーシーは侍女のホリーに知恵を求めた。

「そうですねぇ。私の祖母は毛糸で編んだ靴下を履いて寝ています。編みましょうか?」

「暖かそうね。だけど、寝る時に靴下を履くと、なんとなくいつもと同じようにすっきり眠れないような気がするのよね」

靴下を履いて寝るというのは、何度か試してきたが、毎回すっきりしない。

そんな経験から眠るときに毛糸の靴下を履いて寝るのは抵抗がある。

寝る時はなるべく裸足でいたい。

…そんな考えだから冷えるのだろうか。

「足首から膝までのものにすれば問題ありません」

「それはいいわね。では、お願い。他にはない?」

「さぁ。もしよろしければ侍女仲間にもいろいろ尋ねてみましょうか?」

「それはいいわね。ぜひお願い」


翌日、ホリーは侍女仲間から集めてきた知恵を教えてくれた。

「温石を使う。ひざ掛けを使う。首を温める。腹巻をする。毛糸のパンツをはく。薬湯やくとうを飲む。以上です」

「温石とひざ掛け・腹巻・毛糸のパンツはすでに旅の荷物に入っているし、当日も身につけて行くつもりよ。首を温めるってどういうことかしら?」

「はい、温石をタオルに巻き、温石が首の後ろに来るようにしてタオルを首に巻き付けるそうです。そうすると温かいとか。これを教えてくれた侍女は、ストールの裏側に温石を入れるポケットを作り、そこに温石を入れているそうです」

「温石の使い方についての知恵ということね。それはいいことを聞いたわ。腹巻にも温石を入れるポケットを作れば、より一層温まれそうね。では、薬湯を飲むというのはどういうことかしら?」

「当代流行りの極東趣味の侍女から聞いたのですが、極東の薬湯の中に冷えに効くものがあるそうです」

今、この国では“極東趣味”が流行りになっている。

交通網の発達により、今までよりもより東方の国々と交易ができるようになり、はるか遠くの国の書物・美術品・食品が入ってくるようになった。

もともと東方地域の国々に詳しかったとある公爵夫人が火付け役となり、王宮でも極東趣味が流行っている。

交通網が発達したとはいえ極東の品々はまだまだ高価で、貴族たちにとっては極東の品を持っているということが、一種のステータスになっているようだ。

「極東の薬湯の中にそういったものがあるのね。それは知らなかった。ぜひ飲んでみたいわ。どんなお味なのかしら」

「実は流行りに乗じて、以前飲んだことがあるのです。大変高価なものなので1杯だけなのですが。苦さの中に酸味のある独特のお味でした。好んで飲みたいかと言われれば、私はそうは思わないのですが、言われてみれば確かに体が少し温まったような気がします」

ホリーは体験談を語ってくれた。

とても参考になる。

「それは興味深いわ。私もぜひ試してみたい」

「ではその者に聞いて、手に入れてまいりましょう」

「ええ、ありがとう」


こうしてルーシーの旅支度の中に、薬湯が加わった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

処理中です...