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そうやってエリと遊んでいると、タキシードを着た亮君が近づいてくるのが見えた。
眼鏡を外し、長めの髪も後ろに流してきっちり整えてある。
日本人離れした長い手足と小さい顔、部活で鍛えた身体。
完璧に整えられた亮君は、雑誌から抜け出してきたモデルさんみたいだった。
ハイブランドのランウェイを歩いていても、おかしくない。
「部活が長引いておそくなっちゃった。こんな格好させられるし。変じゃない?」
「遅くまでお疲れ様。変じゃない。すごくかっこいいよ」
私が素直な感想を口にして、あまりのスタイルのよさに見とれていると、亮君は私の腰に腕を回して抱き寄せ、こめかみにキスをしながら、
「千織ちゃんもすごくきれい。本当は唇にキスしたいけど、口紅とれちゃうからここで我慢する」
と言って私を見つめた。
流れるような自然な動作に、抵抗する暇もなかった。
亮君はそのまま私の腰に両腕を回し、私の頭にキスしたり、私の耳元で可愛いと言ったりと甘い空気を漂わせ続けている。
私はそもそも異性に対する耐性がないので、こんな時どんな反応をしたらいいのか分からない。
キスされるのも、甘い言葉をささやかれるのも亮君が初めて。
慌てて頭の中で対処法を検索するけれど、経験値がゼロなので当然出てこない。
結局何もできずに、棒立ちでされるがままになっていた。
最初はあまりに近い距離に亮君を感じて固まってしまっていたけれど、次第に亮君が私にささやく言葉に嬉しくなってしまって、亮君の綺麗な瞳で熱く見つめられるとドキドキしてしまって、この状況のおかしさは認識しているものの抵抗ができない。
亮君は、昨晩の恋人モードみたいな状態のまま私に接していた。
犬の散歩をしながら、時効まで5年耐え忍ぶ決意をした私と違って、亮君は今も結婚してくれるつもりでいるようだ。
何も話していないのだから当然かもしれない。
そんな必要はない、亮君が犠牲にならなくても大丈夫だということを伝える必要があるだろう。
公衆の面前で、この親密そうな状態もまずいと思う。
亮君の将来に関わる大切な問題だ。
私が、ちゃんとしないと。
私はちょっと恥ずかしいから、と言って亮君の腕の中から抜け出した。
「パーティーのあと、2人だけで少し話せる?」
周りに聞こえないように、亮君に伝えた。
こういうことは、早いほうがいい。
「うん、もちろん」
亮君は快く了解してくれた。
「えー、ゴホンゴホンゲフン」
気合の入った咳払いが聞こえてきた。
エリをすっかり放置していたようだ。
もしかしなくても、今の流れを見ていたらしい。
変だと思われているかもしれない。
「あー、エリ。誰だかわかる?」
「それ考えながら見てたんだけど、もしかして亮君?」
「当たり!エリすごいね。私フルネーム見るまで分からなかったから」
「あらあら。まぁまぁまぁまぁ大きくなっちゃって。道端であっても気づかなかったと思うわ。まぁまぁ。イケメンになっちゃって。あらー」
エリは亮君の腕をバシバシ叩きながら、亮君をなめまわすように見ている。
完全に親戚のおばちゃんだ。
「俺は、エリちゃんだってすぐ気づいたけどね」
亮君は叩かれながら苦笑している。
私達変わってないしね。
「それで、今2人の様子見てたら、恋人同士みたいに見えたけど。すごくいい雰囲気で、私お邪魔かしらって」
エリが悪い顔で切り込んでくる。
私はエリの鋭い指摘にあわあわしてしまい、あばばとか意味不明な言葉を発しながら首を横に振ることしかできなかった。
「来年結婚するんで」
慌てふためいて言葉が出なくなっている私に反して、亮君はとサラッと当然のことのように言った。
エリは亮君の発言に、目を丸くしている。
そうだったのだ。
昨日の段階で、結婚のことは秘密にしようねって約束しとかなくちゃいけなかったのだ。
私は、今になって後悔した。
眼鏡を外し、長めの髪も後ろに流してきっちり整えてある。
日本人離れした長い手足と小さい顔、部活で鍛えた身体。
完璧に整えられた亮君は、雑誌から抜け出してきたモデルさんみたいだった。
ハイブランドのランウェイを歩いていても、おかしくない。
「部活が長引いておそくなっちゃった。こんな格好させられるし。変じゃない?」
「遅くまでお疲れ様。変じゃない。すごくかっこいいよ」
私が素直な感想を口にして、あまりのスタイルのよさに見とれていると、亮君は私の腰に腕を回して抱き寄せ、こめかみにキスをしながら、
「千織ちゃんもすごくきれい。本当は唇にキスしたいけど、口紅とれちゃうからここで我慢する」
と言って私を見つめた。
流れるような自然な動作に、抵抗する暇もなかった。
亮君はそのまま私の腰に両腕を回し、私の頭にキスしたり、私の耳元で可愛いと言ったりと甘い空気を漂わせ続けている。
私はそもそも異性に対する耐性がないので、こんな時どんな反応をしたらいいのか分からない。
キスされるのも、甘い言葉をささやかれるのも亮君が初めて。
慌てて頭の中で対処法を検索するけれど、経験値がゼロなので当然出てこない。
結局何もできずに、棒立ちでされるがままになっていた。
最初はあまりに近い距離に亮君を感じて固まってしまっていたけれど、次第に亮君が私にささやく言葉に嬉しくなってしまって、亮君の綺麗な瞳で熱く見つめられるとドキドキしてしまって、この状況のおかしさは認識しているものの抵抗ができない。
亮君は、昨晩の恋人モードみたいな状態のまま私に接していた。
犬の散歩をしながら、時効まで5年耐え忍ぶ決意をした私と違って、亮君は今も結婚してくれるつもりでいるようだ。
何も話していないのだから当然かもしれない。
そんな必要はない、亮君が犠牲にならなくても大丈夫だということを伝える必要があるだろう。
公衆の面前で、この親密そうな状態もまずいと思う。
亮君の将来に関わる大切な問題だ。
私が、ちゃんとしないと。
私はちょっと恥ずかしいから、と言って亮君の腕の中から抜け出した。
「パーティーのあと、2人だけで少し話せる?」
周りに聞こえないように、亮君に伝えた。
こういうことは、早いほうがいい。
「うん、もちろん」
亮君は快く了解してくれた。
「えー、ゴホンゴホンゲフン」
気合の入った咳払いが聞こえてきた。
エリをすっかり放置していたようだ。
もしかしなくても、今の流れを見ていたらしい。
変だと思われているかもしれない。
「あー、エリ。誰だかわかる?」
「それ考えながら見てたんだけど、もしかして亮君?」
「当たり!エリすごいね。私フルネーム見るまで分からなかったから」
「あらあら。まぁまぁまぁまぁ大きくなっちゃって。道端であっても気づかなかったと思うわ。まぁまぁ。イケメンになっちゃって。あらー」
エリは亮君の腕をバシバシ叩きながら、亮君をなめまわすように見ている。
完全に親戚のおばちゃんだ。
「俺は、エリちゃんだってすぐ気づいたけどね」
亮君は叩かれながら苦笑している。
私達変わってないしね。
「それで、今2人の様子見てたら、恋人同士みたいに見えたけど。すごくいい雰囲気で、私お邪魔かしらって」
エリが悪い顔で切り込んでくる。
私はエリの鋭い指摘にあわあわしてしまい、あばばとか意味不明な言葉を発しながら首を横に振ることしかできなかった。
「来年結婚するんで」
慌てふためいて言葉が出なくなっている私に反して、亮君はとサラッと当然のことのように言った。
エリは亮君の発言に、目を丸くしている。
そうだったのだ。
昨日の段階で、結婚のことは秘密にしようねって約束しとかなくちゃいけなかったのだ。
私は、今になって後悔した。
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