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 そうこうしているうちに、手打ちのパスタは茹で上がり、お肉もおいしそうに焼けた。

 私がお皿に盛り付けると亮君が運んでくれる。
 私達はダイニングテーブルに座り、乾杯をして食べ始めた。

 亮君は来週インターハイ予選らしく、今日も1日練習だったらしい。
 私の両親がいなくて驚いたかと聞くと、もともといないと思っていたのだという。

 うちの両親は、週末はいつも出かけているらしく日曜日にお土産をお隣に届けているそうだ。
 犬の世話を頼まれることもあって、そんな時は亮君がレアとテティにご飯をあげて散歩もしてくれているそうだ。

 道理で2頭が亮君によくなついている。
 普段家にいない私より、亮君のことを好きそうな気が……。
 いや、悲しくなるから考えるのはやめておこう。

 しかし犬の散歩を受験生に頼むのはダメだろう。
 帰ってきたら両親に忠告しようと思った。

 話しながらも亮君は、用意した料理を美味しいと言ってぺろりと平らげた。
 男子高校生の食欲おそるべし。


 ダイニングからリビングのソファーに移動して、買っておいたレモンパイを切り分け、紅茶を注ぐ。

 レアとテティが亮君の隣に座る。
 私はソファーテーブルを挟んで亮君の向かい側に座った。

 いつまでも先延ばしにするわけにはいかない。
 覚悟を決めて私は話し始めた。

 「それで、この間の話の続きなんだけど。隣に寝てたのは亮君だったんでしょ。あの日何があったか教えてほしいんだけど」

 「今も何も思い出せない?」

 私は神妙にうなずいた。

 「思い出せなくても自分なりに推理してみたりした?例えば、女子たちが昨日学校で『支倉先生絶対彼氏できたよね』って噂してたけど」

 え。
 女子たちが昨日?
 なぜに?
 普通に彼氏いない歴を更新中で、何も心当たりがない。

 「千織ちゃん今週ずっと首隠した服装してるでしょ。髪も下してるし」

 名探偵!名探偵がいるよ!うちの学校の女子の中に名探偵がいる!

 2、3日で消えると思っていた跡が消えなくて、最初の3日は色ち買いしたタートルのサマーニットを着ていた。

 4日目、5日目も消えてなくて仕方なくスカーフを巻いて登校したのだ。

 コンシーラーで1日しのぐのも不安だったし。
 自転車通勤だから日焼け対策ということで誤魔化せると思ったけれど、雨の日もあったし苦しかったか。

 「そ、そのことね。それはもしかしたら虫刺され(だったらいいな)と思ってたんだけど。そう、私蚊に刺されやすい体質だから」

 「そんなわけないでしょ。俺がつけたんだから」

 ですよねー。

 「そ、そうなんだ。それで、そのーあれかね?亮君と私は、あれですかね?」

 「あれ?」

 「そう、つまり、その、雄しべと雌しべの交わりというか、不純異性交遊みたいな?男女の関係的な、その、教師と生徒の不適切な関係っていうのかな、そういうの、しちゃった?」

 たぶん、今の私は人生史上一番挙動不審だ。

 「セックスしたかってこと?」

 亮君は、私が頑張って一生懸命オブラートに包んでいた言葉を、あっさりと言った。

 私は直接的な言葉に、いたたまれない気持ちになってしまったけれど、ポーカーフェイスを保ってうなずいた。

 「それか、その、わいせつな、行為、とか」

 私は小さな声で付け足した。

 両手を合わせて祈るようにする。
 してないって言って。
 跡を付けたのも私が何か意地悪したから、つねったって言って。

 「わいせつな行為ってのがどういうのか具体的に言ってくれないと分からないけど、セックスは、した」

 亮君は照れているのか頭を掻きながら言った。


 終わった。

 私の人生、終わった。
 

 つまり5つの仮説を立てていたけれど、正解は4番の
 『X=第三者&やった説 この場合Xは小さくて早いという称号を手に入れる。どうでもいいけどこの称号、電化製品とかだったら誉められそう』
  だということになる。

 私は無意識のうちに、向かいのソファーに座っている亮君の大事な部分をじっと見つめていた。
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