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この1週間、とても忙しかった。
普段の受験生用の特別メニューの準備に加え二者面談のこともあり、毎晩家に帰ると11時近かった。
でもそのおかげで、余計なことは考えずに1週間を過ごせた。
どうしても朝や帰りのホームルームで亮君を意識してしまったけれど、持ち前のポーカーフェイスで乗り切った。
疲れのおかげで、夜眠れないということもなかった。
調べ物もしたかったし、夜ご飯の買い物にも行かなければならない。
いつもより少しだけ寝坊して朝10時、久しぶりに実家に帰った。
自転車で20分。
ちょっとした高台にあるので坂がきついがとても近い。
「ただいま」
玄関を開けると、少し大きな荷物を持った父がいた。
「なんだ千織、帰ってきたのか。これから箱根だけど一緒に行くか」
どうやら旅行に出かけるらしい。
母も奥から荷物を持って出てきた。
「千織、久しぶりに帰ってきたと思ったらタイミング悪いわね。強羅の温泉が糖尿病にいいって言うからこれから行くところ。千織も行く?」
両親は健康オタクの傾向がある。
そして情報にすぐ飛びつく。
父の健康診断の結果、少し血糖値が高めらしい。
何でも水曜日にテレビで仕入れた情報らしく、すぐに行くことに決めたそうだ。
テレビの影響がなかったとしても、箱根には別荘があるので、両親は暖かい季節の週末は箱根にいることが多い。
私が実家に帰ったタイミングで、たまたま隣人が遊びに来たという体で亮君と話そうと思っていたので、両親はいてくれた方が望ましい。
私のマンションに亮君を呼ぶことはできないし、人目のあるところも無理だ。
誰に見られているか分からない。
その場でいろいろ考えた結果、両親がいなくても実家で話すのが一番いいと判断した。
「私は行かなくていいや。レアとテティに会いに来ただけだし」
レアとテティはグレートピレニーズの兄弟だ。白くて大きくモフモフでかわいい。
「泊まってくの?じゃあレアとテティの面倒見てくれるかしら?連れてこうと思ったけど、千織いるなら置いてっちゃおう」
「置いて行っていいよ。明日には帰ってくるでしょ。私が面倒みておく」
母は「いつでも彼氏連れてきていいんだからね。今晩連れ込んでもいいのよ」と余計な一言を残して旅立って行った。
小さいころからずっと一緒だったエリが18で結婚してしまったため、母は私にも結婚がーとか彼氏がーとかうるさい。
今まで全く男の影のなかった清らかな娘を放っておくと、一生孫の顔が見られないということに気づいているらしく、プレッシャーをかけてくるのだ。
たぶんありがたいことなのだろうけれど、そう言われると居心地の悪い気分になる私は、自然と実家から足が遠のいた。
たまにしか帰ってこない私のことも、2頭はちゃんと覚えていてう嬉しそうに出迎えてくれた。
梅雨入りしたにも関わらず、今日は晴れていた。
さっそく2頭を庭に放してあげた。
平日はなかなか朝晩散歩に連れていけない我が家では、庭を改造してもらい犬用のドッグランにしている。
2頭が庭で遊んでいるのを見ながら調べ物をし、お昼ご飯を適当に済ませた。
午後3時になったので、2頭を拭いて家に入れ、夕食の買い出しに出かけた。
普段の受験生用の特別メニューの準備に加え二者面談のこともあり、毎晩家に帰ると11時近かった。
でもそのおかげで、余計なことは考えずに1週間を過ごせた。
どうしても朝や帰りのホームルームで亮君を意識してしまったけれど、持ち前のポーカーフェイスで乗り切った。
疲れのおかげで、夜眠れないということもなかった。
調べ物もしたかったし、夜ご飯の買い物にも行かなければならない。
いつもより少しだけ寝坊して朝10時、久しぶりに実家に帰った。
自転車で20分。
ちょっとした高台にあるので坂がきついがとても近い。
「ただいま」
玄関を開けると、少し大きな荷物を持った父がいた。
「なんだ千織、帰ってきたのか。これから箱根だけど一緒に行くか」
どうやら旅行に出かけるらしい。
母も奥から荷物を持って出てきた。
「千織、久しぶりに帰ってきたと思ったらタイミング悪いわね。強羅の温泉が糖尿病にいいって言うからこれから行くところ。千織も行く?」
両親は健康オタクの傾向がある。
そして情報にすぐ飛びつく。
父の健康診断の結果、少し血糖値が高めらしい。
何でも水曜日にテレビで仕入れた情報らしく、すぐに行くことに決めたそうだ。
テレビの影響がなかったとしても、箱根には別荘があるので、両親は暖かい季節の週末は箱根にいることが多い。
私が実家に帰ったタイミングで、たまたま隣人が遊びに来たという体で亮君と話そうと思っていたので、両親はいてくれた方が望ましい。
私のマンションに亮君を呼ぶことはできないし、人目のあるところも無理だ。
誰に見られているか分からない。
その場でいろいろ考えた結果、両親がいなくても実家で話すのが一番いいと判断した。
「私は行かなくていいや。レアとテティに会いに来ただけだし」
レアとテティはグレートピレニーズの兄弟だ。白くて大きくモフモフでかわいい。
「泊まってくの?じゃあレアとテティの面倒見てくれるかしら?連れてこうと思ったけど、千織いるなら置いてっちゃおう」
「置いて行っていいよ。明日には帰ってくるでしょ。私が面倒みておく」
母は「いつでも彼氏連れてきていいんだからね。今晩連れ込んでもいいのよ」と余計な一言を残して旅立って行った。
小さいころからずっと一緒だったエリが18で結婚してしまったため、母は私にも結婚がーとか彼氏がーとかうるさい。
今まで全く男の影のなかった清らかな娘を放っておくと、一生孫の顔が見られないということに気づいているらしく、プレッシャーをかけてくるのだ。
たぶんありがたいことなのだろうけれど、そう言われると居心地の悪い気分になる私は、自然と実家から足が遠のいた。
たまにしか帰ってこない私のことも、2頭はちゃんと覚えていてう嬉しそうに出迎えてくれた。
梅雨入りしたにも関わらず、今日は晴れていた。
さっそく2頭を庭に放してあげた。
平日はなかなか朝晩散歩に連れていけない我が家では、庭を改造してもらい犬用のドッグランにしている。
2頭が庭で遊んでいるのを見ながら調べ物をし、お昼ご飯を適当に済ませた。
午後3時になったので、2頭を拭いて家に入れ、夕食の買い出しに出かけた。
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