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 担任代行初日は、朝のホームルームで私が3組の臨時担任として紹介された。
 
 無我夢中で慣れない1日を過ごし、帰りのホームルームと二者面談を、なんとか無事終わらせることができた。

 引継ぎの資料を作り、翌日の二者面談予定者のファイルに目を通し、担当教科の資料作りなど行っているとあっという間に22時。
 まだ残って作業している教員もいる。

 私は、翌朝少し作業すれば大丈夫そうだったので、そこで切り上げ帰宅した。

 急な臨時担任業務が加わり大変ではあったけれど、うれしい再会もあった。

 窓際の一番後ろの席に座る梅渓亮うめたにりょうくんだ。

 放課後のホームルーム。
 職業柄、生徒の視線を浴びることには慣れている。

 しかし今日はやけに視線が熱い、と思って教壇に用意されている座席表を確認すると、『梅渓』の文字。

 弓道部部長が『うめたに』君であることは知っていた。
 でも、まさか『梅渓と書いてうめたに』だとは思わなかった。

 この辺りでは珍しい苗字にまじまじと顔を見てしまった。
 眼鏡と長めの前髪ではっきりとは分からない。

 出席簿でフルネームを確認してみると、『梅渓亮』の文字。
 間違いないだろう。
 梅渓家の一人息子、亮君だ。

 私が大学生になって以来、実家にはたまにしか帰らないので亮君とも疎遠になってしまっていたけれど、私とエリがすごく可愛がっていたお隣の息子さんだ。

 亮君がまだ小さいころは、3人で三つ子コーデをしてお出かけしたこともあった。
 亮君が私たちとお揃いのワンピースを着たがったのだ。

 お母さんがフィンランド人なこともあってか、小さいころは天使のようにかわいかった。

 長いまつ毛に縁どられた、色素の薄いくっきり二重の瞳。
 肩まで伸ばした、絹のようにツヤツヤの髪は薄茶色。
 ワンピースを着た姿はまさに美少女(♂)だった。

 3家族で旅行に行ったこともあったし、家族ぐるみで仲良くしていた。

 でも最後にちゃんと会ったのは、もう7、8年前になるかもしれない。
 亮君は小学校中学年だった。
 さすがに男の子らしい顔つきになっていたけれど、身長は学年の中でも低めでかわいい感じの男の子だった。

 それが、まぁ大きくなっちゃって。まぁまぁ。

 完全に近所のおばちゃんのようなことを思っているうちに、放課後ホームルームは終わってしまった。

 その後、私は二者面談の準備、亮君は部活。
 話すこともできないままになってしまった。

 しかし、今日の二者面談の最後は亮君なのだ。

 久しぶりに可愛い弟に会える嬉しさと、その可愛い弟の父親とマズイ関係になってしまっているかもしれない後ろめたさが同居している。
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