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 今朝起きた時には隣に男がいた。
 エリはどうしたのだろうか?

 やはりエリに聞いてみるのが一番の近道だと思い、スマホを手に取る。
 何件か電話が入っていた。
 エリからだった。

 昨日の今日で心配して連絡してくれたのだろう。
 ラインも入っていた。
 『生きてますか?』という一言だけの生存確認。

 ありがたく思い電話をかけると、すぐにエリが出た。

 「私生きてます。昨日は付き合ってくれてありがとう」

 「よかった。失恋も初めてだからどういう行動取るか予測できなくて、ひやひやしてた。昨日は、先に帰ってごめん。啓一けいいちさんに呼び出されて」

 啓一さんというのはエリの旦那様だ。
 学生時代に結婚したから今年結婚8年目だけれど、エリは未だに旦那様ラブなのだ。

 エリが医者になったのも、太田先生(啓一さん)が医者で一緒に働きたかったからだ。
 10年以上の片思いを経てようやく手に入れた旦那様だから優先順位はいつも1番で、私が置いてかれても文句は言えない。

 娘のナナちゃんも待っているので、呼び出されなくてもエリは夜になると家に帰る。

 「太田先生に呼び出されたのならしょうがないよ。それで、私昨日のことほとんど覚えてないんだけど。朝起きたらホテルにいて。部屋取ってくれたのエリ?」

 これはエリだという確信があるから、思い切って聞いてみた。

 「うん、土曜の夜であんまりいい部屋空いてなかったんだけど。千織昨日ウォッカ3杯でべろんべろんになってたから絶対家に帰れないと思って部屋用意したの。どこから覚えてない?梅渓うめたにさんにあったの覚えてる?」

 梅渓さんというのは実家のお隣さんだ。
 私の実家、梅渓家が隣同士で道を挟んだ向かい側に広々としたエリの実家がある。

 実家にいた頃は仲良し3家族で集まり、エリの家でよくバーベキューをしたものだ。

 梅渓さんは若いころモデルをしていただけあって昔はもちろん、40代後半の今もカッコいい。
 モデルは学生時代だけですぐやめてしまい、その後はアパレル関係の会社を立ち上げ成功させた。

 そんな憧れの隣人に人生一番の醜態を見せたかもしれないと思うと、穴があったら入りたい気分になった。

 「いや、全く覚えてない。それで酔っぱらった私をエリが部屋に運んでくれたの?」

 それ以外考えつかないが、そうだとすると隣で寝ていた人はだれなのか?

 もしかして、あの人も酔っ払っていて、部屋を間違えて入ってきちゃって、そのまま私の隣で寝ました。
 というコントみたいなやつだろうか?

 「本当に何も覚えてないんだね。6時頃啓一さんから電話があって帰らなきゃならなくてどうしようかと思ってたら、ラウンジで梅渓さん見つけてね。待ち合わせの時間まで暇だって言ってたから、千織を部屋まで運んでもらったの」

 私は驚愕した。

 するってぇと何かい?
 隣で寝ていたのは梅渓さんということかい?

 私パンツはいてなかったけど、それって、あれ?私の貞操は梅渓さんに?

 そして初めてなのに、何も覚えてないみたいな?
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