上 下
19 / 26

19.

しおりを挟む
 悩んだ結果、私は差し支えない手紙をレフーナに出すことにした。
 やはり私が苦しんでいるという手紙は、彼女が違和感を覚えると思ったのだ。そういう部分に関しては、レフーナを侮るべきではない。そう判断したのである。
 その手紙を送った後程なくして、レフーナから返信があった。そこには、やはり差し支えない内容が書いており、それらのやり取りは終わったのである。

「まあ、これで良かったのよね。ややこしいことになっていたかもしれないし……」

 もしもレフーナが手紙に違和感を覚えていた場合、とてもややこしいことになっていたかもしれない。それが避けられて、本当に良かったと思う。

「とはいえ、いつまで隠しておけるかは疑問よね」

 私がオーガルン辺境伯の元で幸せな生活を送っているということは、一体いつまで秘密にしておけるのだろうか。
 辺境伯が恐ろしい人物であると勘違いしている以上、レフーナは彼に会おうとは思わないはずである。
 だが、ふとした拍子に気が変わってそれが実現するかもしれない。
 そうなった時に、どうするべきなのだろうか。オーガルン辺境伯に演技をしてもらう。それはやはり少々無理があるような気がする。

「視点を変えるべきなのかしら。レフーナをどうにかするというよりも、その後ろにいる存在を攻める方が効果的かもしれないわね……いや、それはないか」

 私は自分が考えた案をすぐに捨てた。父と継母を変えることは、まず不可能だからだ。
 あの二人は、生まれた時からレフーナを玉のように可愛がっているような人達である。そんな人達の考えを今更変えるのは、不可能に近いだろう。
 となると、やはり働きかけるべきはレフーナになる。ただ、彼女も長年の甘やかしでわがままで頑固な性格となっているため、それもまた難しいことだ。

「自分の家族ながら厄介な人達ばかりね……」
「失礼します」
「あ、はい。なんですか?」

 そんなことを考えていると、部屋の戸を叩く音とクローリアさんの声が聞こえてきた。
 知り合いということもあって、彼女は私の身の周りのお世話を主に担当してくれるようになった。その関係で、何か用があるのかもしれない。

「オーガルン辺境伯がお呼びです」
「オーガルン辺境伯が?」
「ええ、お話ししたいことがあるそうです」
「そうですか……わかりました。すぐに行きます」

 私の予想は、大きく外れていた。
 どうやら、オーガルン辺境伯が呼んでいるようだ。もしかしたら、レフーナとの関係について、彼が何か思いつてくれたのかもしれない。
 こうして私は、オーガルン辺境伯の元に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仕事ができないと王宮を追放されましたが、実は豊穣の加護で王国の財政を回していた私。王国の破滅が残念でなりません

新野乃花(大舟)
恋愛
ミリアは王国の財政を一任されていたものの、国王の無茶な要求を叶えられないことを理由に無能の烙印を押され、挙句王宮を追放されてしまう。…しかし、彼女は豊穣の加護を有しており、その力でかろうじて王国は財政的破綻を免れていた。…しかし彼女が王宮を去った今、ついに王国崩壊の時が着々と訪れつつあった…。 ※カクヨムにも投稿しています! ※アルファポリスには以前、短いSSとして投稿していたものです!

お姉様に押し付けられて代わりに聖女の仕事をする事になりました

花見 有
恋愛
聖女である姉へレーナは毎日祈りを捧げる聖女の仕事に飽きて失踪してしまった。置き手紙には妹のアメリアが代わりに祈るように書いてある。アメリアは仕方なく聖女の仕事をする事になった。

「これは私ですが、そちらは私ではありません」

イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。 その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。 「婚約破棄だ!」 と。 その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。 マリアの返事は…。 前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。

第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、婚約破棄でも構いませんよ?

新野乃花(大舟)
恋愛
ルメル第一王子は貴族令嬢のサテラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるシンシアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、シンシアがサテラからいじめられたという話をでっちあげてはルメルに泣きつき、ルメルはサテラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルメルはサテラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。

婚約破棄されたはずなのに、元婚約者が溺愛してくるのですが

ルイス
恋愛
「シルヴィア、私が好きなのは幼馴染のライナだ! お前とは婚約破棄をする!」 「そんな! アルヴィド様、酷過ぎます……!」 伯爵令嬢のシルヴィアは、侯爵のアルヴィドに一方的に婚約破棄をされてしまった。 一生を仕える心構えを一蹴されたシルヴィアは、精神的に大きなダメージを負ってしまった。 しかし、時が流れたある日、アルヴィドは180度態度を変え、シルヴィアを溺愛し再び婚約をして欲しいと言ってくるのだった。 シルヴィアはその時、侯爵以上の権力を持つ辺境伯のバルクと良い関係になっていた。今更もう遅いと、彼女の示した行動は……。

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

魔力ゼロ聖女

桜井正宗
恋愛
婚約破棄され捨てられたエレナは魔力ゼロの聖女。 運命の相手がいないと魔力を維持できない聖女。 帝領伯エリックに捨てられたエレナは絶望する。 妹のドロテアに全てを奪われたからだ。 暴漢に襲われそうになると騎士クラウス(辺境伯)が助けてくれた。 魔力の為ではなく、幸せの為にクラウスと一つになりたいと思うようになった。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

処理中です...