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「なるほど、それは中々に難しい選択ではありますね」

 手紙のことを話した結果、オーガルン辺境伯はそのように言ってきた。
 難しい選択、それはつまり苦しんでいるという旨を送るか送らないかということだろう。
 ということは、どちらの選択にもメリットとデメリットがあるということだろうか。その辺りが明確であるなら、是非とも教えてもらいたい。

「苦しんでいる旨の手紙を送ることに、何かデメリットなどはあるのでしょうか?」
「これからのことを考えると、それでいいのかには疑問が残ります。例えば、あなたと私が並んでレフーナ嬢と会う機会があった時に困るかもしれません」
「あ、そうですね……すみません、私の考えが足りませんでした」
「いえ、お気になさらず」

 オーガルン辺境伯の言葉に、私は大きなデメリットを理解した。
 確かに、一度嘘をついたら、それからずっと嘘をついていかなければならない。それは、大変なことだ。オーガルン辺境伯にも迷惑をかけてしまう。

「それに、レフーナ嬢は性格に難があっても、馬鹿ではないはずです。それなら、あなたのその手紙の違和感に気付くのではないでしょうか?」
「……いつも通りの私なら、こんな手紙を送らないとレフーナが思うということですね。確かに、それはあり得そうです。あの子は、変に聡い部分がありますから」

 オーガルン辺境伯は、さらに私の作戦の欠点を述べてきた。
 それも考えればわかったはずの簡単なことである。どうやら私の視野は、非常に狭くなってしまっていたようだ。

「すみません。少しふわふわしてしまっていたようです」
「何も問題はありません。あなたは、きちんと判断することができています」
「え?」
「こうして私に相談することによって、あなたは自分の案が正着であるかどうかの結論を出そうとしている。その判断ができた時点で問題は解決しているのです。行動を起こす前に誰かに相談するというのは大切なことだと私は思っています。私も自分で考えたことが全て正しいとは思いませんしね」
「それは……」

 私は改めてオーガルン辺境伯が冷静な人物であるということを理解した。
 確かに彼の言う通り、誰かに相談することによって欠点を補えるならそれでいいのかもしれない。
 味方がいるというのがここまで頼もしいということを、私は改めて実感していた。頼れる人がいるといのは、本当にいいものだ。

「それに、レフーナ嬢が額面通りに受け取るという可能性もあります。ずっと誤魔化さなければならないということに関しても、彼女と接する機会が少ないと考えると、そこまで苦にはならないでしょう」
「えっと……」
「故に、難しい選択なのです。当然、苦しんでいると伝えることで、フレーナ嬢が満足して、鬱陶しい……失礼、あなたに対する嫌がらせなどが一切なくなる可能性もあります」
「なるほど……」

 私は、オーガルン辺境伯の言葉に考える。
 リスクはあるが、利益も得られるかもしれないこの案をどうするべきなのかを。
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