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15.約束のために

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「カルード兄様、イルネシア嬢の婚約者として、僕は不満ですか?」
「……王子達の中で、俺はお前を最も買っている。それに関しては、クレリナと同じ考えだ」

 カルードお義兄様は、セルーグ殿下の目をしっかりと見つめている。
 ただ、その目にはムドルグ様の時のような鋭さはない。当然といえば当然ではあるが、セルーグ殿下のことはある程度認めているようだ。

「しかし俺にとってイルネシアは、大切な義妹だ。故に問いかけておきたい。本当に幸せにできるのかということを」
「それは……」
「俺はアルリシアにイルネシアのことを任されている。その誓いというものは、果たさなければならない」

 カルードお義兄様は、お姉様のことを口にした。
 それはお義兄様にとって、とても大切なことなのだろう。それがその言葉の節々から、伝わってきた。
 私にとって、カルードお義兄様の思いというものは嬉しいものではある。ただお姉様に囚われているような気がして、少し心配でもあった。そこまで拘ることは、きっとお姉様も望んでいないだろうから。

「……カルード兄様、僕はイルネシア嬢を必ず幸せにします。ウェーデル伯爵家を再建して、その基盤というものを安定させて、明るい未来を築いてみせます」

 そんなカルードお義兄様に対して、セルーグ殿下は真っ直ぐにぶつかっていった。
 彼が言っていることは、簡単なことではないだろう。しかし、その目にはしっかりと決意が宿っている。セルーグ殿下なら、やり遂げてくれるとそう思えた。
 それはカルードお義兄様にも、伝わっているはずだ。お義兄様は、話がわからない人という訳ではないのだから。

「……お兄様、セルーグ兄様なら大丈夫ですよ」
「大体、お前なんぞがセルーグに対してとやかく言うのが間違っている。こいつは、俺の自慢の弟だ」
「ああ、俺もセルーグなら問題はないと思うぞ、カルード」

 セルーグ殿下以外のその場にいる人達も、口々に言葉を発していた。
 当然のことかもしれないが、彼は親族からの信頼も厚いらしい。やはり彼ならば、カルードお義兄様の眼鏡にもかなうのではないだろうか。

 というよりも、彼よりも良い人などいないような気がする。いや、それは流石に私の偏った意見であるだろうか。
 そう思える程に、私はセルーグ殿下を好ましく思っているということだ。仮にカルードお義兄様が反対しても、私はこの婚約を押し切るだろう。
 しかしそれでも、できれば賛同して欲しかった。お世話になったカルードお義兄様に祝福してもらいたい。それが今の私の気持ちであった。
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