婚約破棄されてから義兄が以前にも増して過保護になりました。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
8 / 16

8.婚約者の条件

しおりを挟む
「イルネシア、わかっているとは思うがウェーデル伯爵家を再建するためには、お前の結婚というものは必要不可欠だ。今回は婚約破棄をされてしまったが、それでも新たな婚約が必要だということは変わらない」
「はい。それはもちろん、心得ています」
「マジェンド伯爵家のムドルグに関しては、俺が充分に罰を与えるとしよう。そして今回の件の過失は全て奴に押し付ける」

 カルードお義兄様の言葉に、私は静かに頷く。
 ムドルグ様に対してはほんの少しだけ申し訳ないが、ウェーデル伯爵家のためには、彼が全てにおいて悪かったということにするしかない。
 あれだけのことを言われた相手ではあるが、それでもそうするのは心が少し痛かった。とはいえ私も貴族の端くれだ。その辺りは割り切ることにする。

「そしてお前の新しい婚約であるが、俺がその相手を選ぶとしよう」
「え?」

 カルードお義兄様がとても優しい顔で発した言葉に、課題に取り組み始めていたクレリナ嬢が変な声を出して反応した。
 私とお義兄様は、そちらの方に視線を向ける。すると、目を丸めた彼女の姿が見えた。

「クレリナ、聞いても良いとは言ったが、口を挟んで良いとは言っていないぞ?」
「いやいや、お兄様がとんでもないことを言っているからですよ」
「とんでもないこと? 何の話だ?」
「イルネシアお姉様の婚約者を、お兄様が選ぶなんて……そんなの無理な話ですよ。その厳し過ぎるお眼鏡にかなう人なんて、いる訳ないんですから!」

 クレリナ嬢は、カルードお義兄様のことを力説していた。
 それに私は、少し驚く。カルードお義兄様が、そのことにそんなに悩むような人だとは思っていなかったからだ。

 優秀なお義兄様のことだから、卒なく良い人を紹介してくれるものではないだろうか。
 いや、婚約者を探すということに関しては、そういう訳にもいかないのかもしれない。色々な条件に見合った人がそもそもいるのかもわからないのだし、その可能性はある。

「何を言うかと思えば、下らない心配をするな。俺はすぐにでも、イルネシアに相応しい相手を見つけてやる」
「それじゃあ、抽象的でも良いですから、イルネシアお姉様の相手として適切な人というのを教えてくださいよ」
「少なくとも侯爵家の令息以上の地位は必要であるだろうな。性格は穏やかな方が良い。しかしいざという時に頼りにならない者は駄目だ。まあそれ以外にも必要なことはあるが、とりあえずはそんな所か」
「ほら、すごいこだわりがあるじゃないですか」

 クレリナ嬢の言葉に、カルードお義兄様はつらつらと条件を述べ始めた。
 それに対して、クレリナ嬢は冷たい目を向けている。どうやらカルードお義兄様の主張に、色々と言いたいことがあるらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子の呪術を解除したら婚約破棄されましたが、また呪われた話。聞く?

十条沙良
恋愛
呪いを解いた途端に用済みだと婚約破棄されたんだって。ヒドクない?

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。 守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。 だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。 それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

【完結】ニセ聖女と追放されたので、神官長と駆け落ちします〜守護がなくなり魔物が襲来するので戻ってこい? では、ビジネスしましょう〜

恋愛
 婚約者の王太子からニセ聖女の烙印を押された私は喜んで神殿から出ていった。なぜか、神官長でエルフのシンも一緒に来ちゃったけど。  私がいなくなった国は守護していた結界がなくなり、城は魔物に襲来されていた。  是非とも話し合いを、という国王からの手紙に私は再び城へ。  そこで私はある条件と交換に、王を相手にビジネスをする。 ※小説家になろうにも掲載

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました

楠結衣
恋愛
公爵令嬢のアイリーンは、婚約者である第一王子から婚約破棄を言い渡される。 王子の腕にすがる男爵令嬢への嫌がらせを謝罪するように求められるも、身に覚えのない謝罪はできないと断る。その態度に腹を立てた王子から国外追放を命じられてしまった。 アイリーンは、王子と婚約がなくなったことで諦めていた魔法薬師になる夢を叶えることを決意。 薬草の聖地と呼ばれる薬草大国へ、魔法薬の勉強をするために向う。 魔法薬の勉強をする日々は、とても充実していた。そこで出会ったレオナード王太子の優しくて甘い態度に心惹かれていくアイリーン。 ところが、アイリーンの前に再び第一王子が現れ、アイリーンの心は激しく動揺するのだった。 婚約破棄され、諦めていた魔法薬師の夢に向かって頑張るアイリーンが、彼女を心から愛する優しいドラゴン獣人である王太子と愛を育むハッピーエンドストーリーです。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

処理中です...