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16.手を取り合って
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最終的に、私はジグルド様と離婚したもののマルディード伯爵家に残ることになった。それは私とエルクドさんが結婚することになったからだ。
「本当に良かったのですか? 俺なんかと結婚するなんて……」
「ええ、エルクドさんは好感が持てる方ですからね。あなたと結婚することに対して、嫌だという気持ちはありませんよ」
私としては、エルクドさんとの婚約はちっとも嫌ではなかった。
彼は尊敬できる志を持っている人である。そんな彼を支えられるというのは、個人的には嬉しいことだ。
「それに、これはラマンダ伯爵家にとっても有益な結婚ですから」
「有益、そういうものなのですか?」
「ええ、マルディード伯爵家の実権を実質的に手に入れていますからね。お父様にとっては、万々歳でしょう。まあ、それなりに苦労もあるとは思いますが」
貴族として右も左もわからないエルクドさんは、私のお父様の指導によって動いている。彼にとって、マルディード伯爵は信用に値しない人であるらしく、そうなったのだ。
それによって、お父様は実質的にマルディード伯爵家を手に入れた。お父様にとって、それは嬉しい誤算だったといえるかもしれない。
「というかそれを言うなら、エルクドさんの方は良かったのですか? 私が結婚相手で」
「それに関しては、まったく問題ありません。俺はアルリナさんのことを心から尊敬していますからね。あなた程に素敵な女性はいないとさえ思っています」
「そ、そうですか……」
軽い気持ちでした質問に対して、エルクドさんはとても真摯な言葉を返してくれた。
彼からそう言ってもらえるのは、ありがたい限りではある。ただ、褒め過ぎのような気もするのだが。
「正直な所、兄ジグルドの行いは信じられませんね。あなたのような女性が妻であるというのに、浮気するなんて……」
「まあ、その辺りは本人の性質なのでしょうね。そのせいでひどい報いを受けた訳ですが……」
「結局彼は元に戻るのでしょうかね?」
「どうでしょうか? マルディード伯爵夫妻が頑張っていますが、こればかりはわかりませんからね……」
色々とあったジグルド様は、現在別荘で両親とともに療養中である。
彼の壊れてしまった心が戻るのかどうかはわからない。ある日突然戻るかもしれないし、一生戻らないかもしれない。ただどちらにせよ、マルディード夫妻は彼の傍にいるだろう。
「まあ、ジグルド様がどうなるかに関わらず、私達は私達の役目を果たしていかなければなりません。色々とありましたからね。領地の民も不安でしょうし、しっかりしていかないと」
「それについては、肝に銘じておきます。俺はただでさえ、頼りないと思われる立場である訳ですからね」
「エルクドさんなら、きっと悪評も覆せると思いますよ……いいえ、二人で覆していきましょう」
「……本当に、アルリナさんの存在は心強い限りです」
私とエルクドさんは、これからも色々と大変だ。マルディード伯爵家の領地の人々が、安心して暮らせるように頑張っていかなければならない。
それに、ジグルド様の子供のこともある。様々な面において、懸念はあるのだ。
しかしそれでも、頑張っていくしかない。よりよい未来のために、私達は手を取り合って生きていくのだ。
「本当に良かったのですか? 俺なんかと結婚するなんて……」
「ええ、エルクドさんは好感が持てる方ですからね。あなたと結婚することに対して、嫌だという気持ちはありませんよ」
私としては、エルクドさんとの婚約はちっとも嫌ではなかった。
彼は尊敬できる志を持っている人である。そんな彼を支えられるというのは、個人的には嬉しいことだ。
「それに、これはラマンダ伯爵家にとっても有益な結婚ですから」
「有益、そういうものなのですか?」
「ええ、マルディード伯爵家の実権を実質的に手に入れていますからね。お父様にとっては、万々歳でしょう。まあ、それなりに苦労もあるとは思いますが」
貴族として右も左もわからないエルクドさんは、私のお父様の指導によって動いている。彼にとって、マルディード伯爵は信用に値しない人であるらしく、そうなったのだ。
それによって、お父様は実質的にマルディード伯爵家を手に入れた。お父様にとって、それは嬉しい誤算だったといえるかもしれない。
「というかそれを言うなら、エルクドさんの方は良かったのですか? 私が結婚相手で」
「それに関しては、まったく問題ありません。俺はアルリナさんのことを心から尊敬していますからね。あなた程に素敵な女性はいないとさえ思っています」
「そ、そうですか……」
軽い気持ちでした質問に対して、エルクドさんはとても真摯な言葉を返してくれた。
彼からそう言ってもらえるのは、ありがたい限りではある。ただ、褒め過ぎのような気もするのだが。
「正直な所、兄ジグルドの行いは信じられませんね。あなたのような女性が妻であるというのに、浮気するなんて……」
「まあ、その辺りは本人の性質なのでしょうね。そのせいでひどい報いを受けた訳ですが……」
「結局彼は元に戻るのでしょうかね?」
「どうでしょうか? マルディード伯爵夫妻が頑張っていますが、こればかりはわかりませんからね……」
色々とあったジグルド様は、現在別荘で両親とともに療養中である。
彼の壊れてしまった心が戻るのかどうかはわからない。ある日突然戻るかもしれないし、一生戻らないかもしれない。ただどちらにせよ、マルディード夫妻は彼の傍にいるだろう。
「まあ、ジグルド様がどうなるかに関わらず、私達は私達の役目を果たしていかなければなりません。色々とありましたからね。領地の民も不安でしょうし、しっかりしていかないと」
「それについては、肝に銘じておきます。俺はただでさえ、頼りないと思われる立場である訳ですからね」
「エルクドさんなら、きっと悪評も覆せると思いますよ……いいえ、二人で覆していきましょう」
「……本当に、アルリナさんの存在は心強い限りです」
私とエルクドさんは、これからも色々と大変だ。マルディード伯爵家の領地の人々が、安心して暮らせるように頑張っていかなければならない。
それに、ジグルド様の子供のこともある。様々な面において、懸念はあるのだ。
しかしそれでも、頑張っていくしかない。よりよい未来のために、私達は手を取り合って生きていくのだ。
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