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15.彼が受けた報い
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「これは……」
「ま、まさか……」
私とエルクドさんは、顔を見合わせていた。
目の前の光景は、それ程までに驚くべきものだったのだ。
「もうわかっているとは思うが、あそこにいるのがジグルドだ」
「な、なんて……」
「ひどい有様ですね……」
ジグルド様は、部屋の中央にあるベッドで包帯を全身に巻き、虚ろな目をしている。
それはどう考えても、まともな状態ではない。心身ともに、ボロボロといった感じだ。
ただ、どうして彼がそんなことになっているのかがわからない。一体何があったというのだろうか。
「マルディード伯爵、一体何があったのですか? ここまでひどい状況になるなんて、中々ないことだと思いますが……」
「暴行を受けたのだ。雇っていたチンピラ連中にね」
「暴行……お金を渋ったりしたのですか?」
マルディード伯爵の言葉に、私は納得していた。
あの柄の悪い連中は、どう考えたってまともではない。例え相手が伯爵令息であっても、気に入らないことがあったら報復するだろう。
その被害を受けたというなら、この状態もおかしくはない。それ所か、しっくりくるくらいだ。
「金銭については、これもきちんとしていた。これも報復の可能性はわかっていただろうからな。しかしジグルドが手を出していた女性が問題だった。妊娠した女性は、ダルソン一味の頭領の娘だったそうだ」
「そうなのですか?」
「ああ、彼女自身はその事実を知らないようだが、間違いない。チンピラ達もどちらに付くのか迷った結果、こうしたようだ」
ダルソン一味とは、国でも有名な反社会的な勢力である。
ジグルド様が手を出したのは、その一味の頭領の愛人か何かの子ということだろう。
そういうことなら、チンピラ達の行動もかなりしっくりくる。彼らの立場からしたら、どちらに味方するかは明らかだ。
「……ジグルドは一体、どのような状態なのですか?」
「命に別状はないが、心の方が問題だな。痛みと恐怖で、壊れてしまったようだ。治るかどうかはわからない」
「なるほど、それで俺しか頼れないという訳ですか……」
エルクドさんは、ジグルド様を見ながら頭を抱えていた。
彼も私も、彼には色々と言いたいことがあった訳ではあるが、こんな状態では無駄である。ジグルド様は、既にある種の報いを受けているといえるだろう。
となると、考えるべきは今後のことだ。エルクドさんが、マルディード伯爵のお願いを受け入れるかどうかは、それなりに重要なことである。
「言っておきますが、俺はあなた達を許した訳ではありません。未だに恨みはあります」
「ああ、それはそうだろう。私も無理な頼みであるということはわかっている」
「ただ、俺はその上であなたの提案に乗るとしましょう。これ以上、あなた達の好き勝手にさせないためにも、ね」
エルクドさんは、どこか遠くを見つめていた。
彼の表情からは、決意のようなものが伝わってくる。ジグルド様のような蛮行をこれ以上生み出さない。きっと彼は、そのようなことを思っているのだろう。
それは悲しい決断である。ただ、彼としてはある種の信念に基づく行動だ。
私はそれを素敵な行動だと思った。できることなら、彼を支えてあげたい。そんな風に思ったのである。
「ま、まさか……」
私とエルクドさんは、顔を見合わせていた。
目の前の光景は、それ程までに驚くべきものだったのだ。
「もうわかっているとは思うが、あそこにいるのがジグルドだ」
「な、なんて……」
「ひどい有様ですね……」
ジグルド様は、部屋の中央にあるベッドで包帯を全身に巻き、虚ろな目をしている。
それはどう考えても、まともな状態ではない。心身ともに、ボロボロといった感じだ。
ただ、どうして彼がそんなことになっているのかがわからない。一体何があったというのだろうか。
「マルディード伯爵、一体何があったのですか? ここまでひどい状況になるなんて、中々ないことだと思いますが……」
「暴行を受けたのだ。雇っていたチンピラ連中にね」
「暴行……お金を渋ったりしたのですか?」
マルディード伯爵の言葉に、私は納得していた。
あの柄の悪い連中は、どう考えたってまともではない。例え相手が伯爵令息であっても、気に入らないことがあったら報復するだろう。
その被害を受けたというなら、この状態もおかしくはない。それ所か、しっくりくるくらいだ。
「金銭については、これもきちんとしていた。これも報復の可能性はわかっていただろうからな。しかしジグルドが手を出していた女性が問題だった。妊娠した女性は、ダルソン一味の頭領の娘だったそうだ」
「そうなのですか?」
「ああ、彼女自身はその事実を知らないようだが、間違いない。チンピラ達もどちらに付くのか迷った結果、こうしたようだ」
ダルソン一味とは、国でも有名な反社会的な勢力である。
ジグルド様が手を出したのは、その一味の頭領の愛人か何かの子ということだろう。
そういうことなら、チンピラ達の行動もかなりしっくりくる。彼らの立場からしたら、どちらに味方するかは明らかだ。
「……ジグルドは一体、どのような状態なのですか?」
「命に別状はないが、心の方が問題だな。痛みと恐怖で、壊れてしまったようだ。治るかどうかはわからない」
「なるほど、それで俺しか頼れないという訳ですか……」
エルクドさんは、ジグルド様を見ながら頭を抱えていた。
彼も私も、彼には色々と言いたいことがあった訳ではあるが、こんな状態では無駄である。ジグルド様は、既にある種の報いを受けているといえるだろう。
となると、考えるべきは今後のことだ。エルクドさんが、マルディード伯爵のお願いを受け入れるかどうかは、それなりに重要なことである。
「言っておきますが、俺はあなた達を許した訳ではありません。未だに恨みはあります」
「ああ、それはそうだろう。私も無理な頼みであるということはわかっている」
「ただ、俺はその上であなたの提案に乗るとしましょう。これ以上、あなた達の好き勝手にさせないためにも、ね」
エルクドさんは、どこか遠くを見つめていた。
彼の表情からは、決意のようなものが伝わってくる。ジグルド様のような蛮行をこれ以上生み出さない。きっと彼は、そのようなことを思っているのだろう。
それは悲しい決断である。ただ、彼としてはある種の信念に基づく行動だ。
私はそれを素敵な行動だと思った。できることなら、彼を支えてあげたい。そんな風に思ったのである。
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