博愛主義と言えば聞こえはいいですが、あなたのはただの浮気性です。

木山楽斗

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10.心強い味方

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「なるほど、事情は大体理解した。どうやら色々と厄介なことになってしまったようだな」
「ええ、そうなんです」
「もちろん、私はお前の味方だ。今回の件も全力で支援するとしよう」

 ラマンダ伯爵家に戻った私は、お父様に諸々の事情を伝えていた。
 お父様は驚いているものの冷静だった。その辺りは、人生経験が豊富である故だろうか。
 ともあれ、無事にお父様の協力を得られたのは幸いである。これで私は、心強い味方を得られたといえるだろう。

「とりあえずジグルドとお前の離婚は確実だ。私から、マルディード伯爵家に通達するとしよう。ジグルドの行いは、明らかな裏切り行為だ。当然、それなりの対価は払ってもらう」
「その辺りの交渉は、お父様にお任せします。証拠の方は、こちらに」
「ああ、これらは大いに役立たせてもらうとしよう」

 私は、懐から取り出した写真の数々をお父様に預けた。
 お父様は、こういう時にはとても怖い人である。きっとこの確固たる証拠を使って、マルディード伯爵家を追い詰めるつもりだろう。
 もっとも、これに関してはマルディード伯爵家の自業自得だ。いや、伯爵夫人にとってはジグルド様のとばっちりともいえなくはないのだが。

「それで問題は、エルクドという男のことになるか……それに関しては、ジグルドの独断である可能性が高いのだったか?」
「ええ、そうですね」
「それなら、マルディード伯爵に問いかけてみるか。隠し子とはいえ、実の息子だ。流石に無下にするとは考えにくい。ジグルドに対して、何かしらの手を打つだろう」
「まあ、それがいいのかもしれませんね……」

 私は、お父様の言葉に頷いた。
 ジグルド様を止められる人と言えば、父親であるマルディード伯爵であるだろう。隠し子に対する愛がマルディード伯爵の中に少しでもあれば、ジグルド様の蛮行を許すはずはない。

「エルクドさんに関しては、しばらくの間家で保護するということで構いませんか?」
「ああ、それでいいだろう。念のため、彼の故郷の様子も調べておく必要はあるな。恐らく追手が来ているだろう」
「相手はゴロツキですから、荒っぽい真似などしているかもしれません。かなり心配です」
「確かにそうだな……まったく、ジグルドという奴は、人の領地に面倒事を運んでくれたものだ」

 ジグルド様の短絡的な行動の数々によって、私達は色々な被害を受けることになった。
 そんな彼のことを許すことができないというのは、私とお父様の共通の認識である。故にその蛮行は、絶対に阻止しなければならないことなのだ。
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