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8.彼の出自
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「マルディード伯爵の隠し子、ですか。それは確かに、驚くべき事実ではありますね……しかしながら、それとあなたの現状が、いまいち結びつきません。あなたを追っていたのは、一体何者なんですか?」
「それについては、順を追って説明しましょう」
エルクドさんの出自に、私は驚いていた。
ただ貴族の隠し子というのは、そこまで稀有な存在という訳ではない。嘆かわしいことではあるが、そういった例は何件か聞いたことがある。
しかしエルクドさんの現状は、かなり変だ。隠し子であることと追われていることに、何の因果関係があるというのだろうか。
「マルディード伯爵家とラマンダ伯爵家は、以前から交流をされていたそうですね?」
「ええ、私が生まれる前から付き合いがあったとは聞いたことがあります」
「マルディード伯爵、当時はまだ伯爵令息でしたが、彼はラマンダ伯爵家を訪ねるにあたって、とある町に来ていました。そこで俺の母親と会って、関係を持ったのです」
「なるほど……」
エルクドさんは、自分の出自を語り始めた。
彼が生まれたのは、マルディード伯爵家とラマンダ伯爵家の関係性があってのことらしい。そう考えると、私達の因縁はかなり深いような気がしてくる。
「俺の妊娠が発覚してから、母は故郷の村に帰りました。そこで俺と二人で、ずっと暮らしてきたんです。俺は自分が伯爵家の隠し子だなんて、ずっと知りませんでした」
「いつその事実を知ったんですか?」
「母が亡くなる時です。伝えようか悩んでいたようですが、最終的には話してくれました。俺も父親のことは気になっていましたからね」
「そう、だったのですね。すみません」
「いえ、お気になさらず」
悲しいことではあるが、エルクドさんの母親は既に他界してしまっているようだ。
本人から話は聞けない訳だが、その話には恐らく偽りはないだろう。
エルクドさんの顔を見ればわかる。彼は間違いなくマルディード伯爵の息子だ。彼の顔に見覚えがあったのは、そういうことなのだろう。
「俺は出自がわかったものの、何か行動をしようとは思いませんでした。貴族の世界に飛び込んでもいいことなんてないということは、わかっていましたからね。ただ最近になって、マルディード伯爵家から手紙が来たんです。俺に是非会いたいという内容でした」
「それで、会いに来たんですか?」
「ええ、その結果が今の俺です」
「それって……」
私は、改めてエルクドさんの身なりを見ていた。
マルディード伯爵家に行ったことで、彼には何かしらの不幸があったのだ。しかもそれは、現在進行形で続いているのだろう。
「それについては、順を追って説明しましょう」
エルクドさんの出自に、私は驚いていた。
ただ貴族の隠し子というのは、そこまで稀有な存在という訳ではない。嘆かわしいことではあるが、そういった例は何件か聞いたことがある。
しかしエルクドさんの現状は、かなり変だ。隠し子であることと追われていることに、何の因果関係があるというのだろうか。
「マルディード伯爵家とラマンダ伯爵家は、以前から交流をされていたそうですね?」
「ええ、私が生まれる前から付き合いがあったとは聞いたことがあります」
「マルディード伯爵、当時はまだ伯爵令息でしたが、彼はラマンダ伯爵家を訪ねるにあたって、とある町に来ていました。そこで俺の母親と会って、関係を持ったのです」
「なるほど……」
エルクドさんは、自分の出自を語り始めた。
彼が生まれたのは、マルディード伯爵家とラマンダ伯爵家の関係性があってのことらしい。そう考えると、私達の因縁はかなり深いような気がしてくる。
「俺の妊娠が発覚してから、母は故郷の村に帰りました。そこで俺と二人で、ずっと暮らしてきたんです。俺は自分が伯爵家の隠し子だなんて、ずっと知りませんでした」
「いつその事実を知ったんですか?」
「母が亡くなる時です。伝えようか悩んでいたようですが、最終的には話してくれました。俺も父親のことは気になっていましたからね」
「そう、だったのですね。すみません」
「いえ、お気になさらず」
悲しいことではあるが、エルクドさんの母親は既に他界してしまっているようだ。
本人から話は聞けない訳だが、その話には恐らく偽りはないだろう。
エルクドさんの顔を見ればわかる。彼は間違いなくマルディード伯爵の息子だ。彼の顔に見覚えがあったのは、そういうことなのだろう。
「俺は出自がわかったものの、何か行動をしようとは思いませんでした。貴族の世界に飛び込んでもいいことなんてないということは、わかっていましたからね。ただ最近になって、マルディード伯爵家から手紙が来たんです。俺に是非会いたいという内容でした」
「それで、会いに来たんですか?」
「ええ、その結果が今の俺です」
「それって……」
私は、改めてエルクドさんの身なりを見ていた。
マルディード伯爵家に行ったことで、彼には何かしらの不幸があったのだ。しかもそれは、現在進行形で続いているのだろう。
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