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75.彼の訪問
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「いや、すまないな。急に訪ねることになってしまって……」
「い、いえ……イルドラ殿下も忙しいですから。もちろん、私の両親も暇ではありません。日程が丁度合うのが今日辺りしかなかったのですから、仕方ありません」
私は、イルドラ殿下に対する自分の思いについて悩んでいた。
ラフェシア様との会話で、私は少し混乱しており、それについて考える時間が必要だったのだ。
しかし、運が良いのか悪いのか、そんな折にイルドラ殿下がエリトン侯爵家を訪ねて来た。彼は諸々の報告も兼ねて、挨拶をしに来たのである。
「むしろ、イルドラ殿下の方が訪ねて来る立場であるのですから大変でしょう。大丈夫だったのですか、本当に?」
「ああ、そのことなら問題はないとも。色々とあった事件が片付いたこともあって、父上が少しの間休憩することを許してくれたんだ。まあ、その後は次期国王として扱かれる予定だが」
「それは大変そうですね……」
イルドラ殿下は、アヴェルド殿下の一件からずっと動いてくれていた。
そんな彼は、きっと大いに疲れていることだろう。その中でエリトン侯爵家を訪ねて来るなんて、大変だったに違いない。
そんな彼を、少しくらいは癒してあげたい。私の中には、そんな考えが過っていた。
「イルドラ殿下、少し歩きませんか?」
「歩く?」
「ええ、実の所、一緒に行ってみたい所があるんです。近くて危険はない場所ですから、ご心配なく」
「まあ、護衛はいるから大丈夫ではあるだろうが」
私の言葉に、イルドラ殿下は少し難色を示しているようだった。
次期国王として、気軽に出歩くのは危険だと認識しているのだろうか。それはもちろん必要なことだが、少々気にし過ぎのような気もする。
やはり彼も、急に王位を継ぐ立場になって気負っているのかもしれない。これから向かう場所は、そんな彼に対しては丁度良い場所だといえる。
「まあ、とりあえず行きませんか? 後悔はさせませんから」
「……リルティア嬢がそんな風に強引に誘うなんて、少々珍しいな」
「え? そうでしょうか?」
「あなたは、理性的な女性だからな」
イルドラ殿下は、苦笑いを浮かべていた。
私はそんなに強引だっただろうか。理性的でもない気もする。
ただ、今のイルドラ殿下の反応は悪くない。私の提案を受け入れてくれそうだ。
「しかしだからこそ、興味がある。リルティア嬢、俺をその場所まで連れて行ってくれ」
「ええ、もちろんです」
私はイルドラ殿下の言葉に、ゆっくりと頷いた。
こうして私達は、少し出掛けることにするのだった。
「い、いえ……イルドラ殿下も忙しいですから。もちろん、私の両親も暇ではありません。日程が丁度合うのが今日辺りしかなかったのですから、仕方ありません」
私は、イルドラ殿下に対する自分の思いについて悩んでいた。
ラフェシア様との会話で、私は少し混乱しており、それについて考える時間が必要だったのだ。
しかし、運が良いのか悪いのか、そんな折にイルドラ殿下がエリトン侯爵家を訪ねて来た。彼は諸々の報告も兼ねて、挨拶をしに来たのである。
「むしろ、イルドラ殿下の方が訪ねて来る立場であるのですから大変でしょう。大丈夫だったのですか、本当に?」
「ああ、そのことなら問題はないとも。色々とあった事件が片付いたこともあって、父上が少しの間休憩することを許してくれたんだ。まあ、その後は次期国王として扱かれる予定だが」
「それは大変そうですね……」
イルドラ殿下は、アヴェルド殿下の一件からずっと動いてくれていた。
そんな彼は、きっと大いに疲れていることだろう。その中でエリトン侯爵家を訪ねて来るなんて、大変だったに違いない。
そんな彼を、少しくらいは癒してあげたい。私の中には、そんな考えが過っていた。
「イルドラ殿下、少し歩きませんか?」
「歩く?」
「ええ、実の所、一緒に行ってみたい所があるんです。近くて危険はない場所ですから、ご心配なく」
「まあ、護衛はいるから大丈夫ではあるだろうが」
私の言葉に、イルドラ殿下は少し難色を示しているようだった。
次期国王として、気軽に出歩くのは危険だと認識しているのだろうか。それはもちろん必要なことだが、少々気にし過ぎのような気もする。
やはり彼も、急に王位を継ぐ立場になって気負っているのかもしれない。これから向かう場所は、そんな彼に対しては丁度良い場所だといえる。
「まあ、とりあえず行きませんか? 後悔はさせませんから」
「……リルティア嬢がそんな風に強引に誘うなんて、少々珍しいな」
「え? そうでしょうか?」
「あなたは、理性的な女性だからな」
イルドラ殿下は、苦笑いを浮かべていた。
私はそんなに強引だっただろうか。理性的でもない気もする。
ただ、今のイルドラ殿下の反応は悪くない。私の提案を受け入れてくれそうだ。
「しかしだからこそ、興味がある。リルティア嬢、俺をその場所まで連れて行ってくれ」
「ええ、もちろんです」
私はイルドラ殿下の言葉に、ゆっくりと頷いた。
こうして私達は、少し出掛けることにするのだった。
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