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69.頼ったのは

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 私とイルドラ殿下、それからウォーラン殿下は、メルーナ嬢とともにディートル侯爵家の屋敷に来ていた。
 憔悴していたメルーナ嬢を病院で診てもらってから、どこに行くかという話になって、とりあえずラフェシア様を頼らせてもらうことにしたのだ。
 メルーナ嬢の実家であるラウヴァット子爵家の屋敷に連れて帰ることも考えたのだが、それについてはメルーナ嬢の反応が悪かった。そのこととなると、彼女の歯切れが悪くなるのだ。

「メルーナ、無事だったのね」
「ラフェシア様……ええ、お陰様で」

 ディートル侯爵家の屋敷の方が近かったこと、ラフェシア様もメルーナ嬢のことを心配していたこと、それらも考慮してとりあえずこちらに来てみた。
 結果として、それは悪くない判断だったといえる。メルーナ嬢もラフェシア様も、会えたことにとても喜んでいるようだった。
 二人のことを知っている私からしてみれば、その光景は嬉しいものだった。思わず涙を浮かべてしまうくらいに。

「本当に安心したわ。一時はどうなるかと思っていたけれど……」
「ご心配をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「いいえ、謝るようなことではないわよ。あなたは被害者なのだもの」

 ラフェシア様には、既にある程度の事情は伝えてある。
 当然のことながら、彼女はメルーナ嬢のことに心を痛めているようだった。
 実際にメルーナ嬢の顔を見て安心していることが、その表情からは伝わってくる。ラフェシア様はとても優しい人であるし、恐らくかなり心配していたのだろう。

「リルティアもお疲れ様。あなたも大変だったでしょうね?」
「あ、いいえ、私はそれ程何もしていませんから。ただその場に立ち会っていただけですから」

 気遣ってくれるラフェシア様に対して、私はゆっくりと首を振った。
 もちろん疲れてはいるのだが、今回私がしたことはそこまでない。イルドラ殿下やウォーラン殿下に連れ添っていたというだけだ。
 主なことは、二人がやってくれた。私がやったことなんて、微々たるものだといえるだろう。

「いいえ、そんなことはありませんよ。リルティア嬢がいなければ、この事件は解決していませんでした」
「ああ、リルティア嬢の迅速な行動が事件を解決したのさ」
「お二人とも……」

 そんな私に対して、二人の王子は賞賛の言葉を口にしてくれた。
 それ自体は、とてもありがたい。私も少しは、誇ってもいいのだろうか。
 ただ、重要なのは別に誰の成果であるかということでもない。メルーナ嬢が無事だったこと、それが何よりも大切なことなのだ。
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